長らく続いた日本の超低金利時代が終わり、2024年3月に日銀がマイナス金利を解除。そして2025年1月、政策金利はついに0.5%へ引き上げられました。市場では年末に向けて、追加利上げの可能性も議論されています。
一方で、アメリカのFRBは緩やかな利下げ基調ですが、世界的には低金利から正常化へという潮流が続いています。
金利上昇は、単に数字が動くだけではありません。企業の資金調達コスト、消費者の行動、インフレ、為替など、投資家のポートフォリオに直接響く重要なシグナルです。
この記事では、
金利上昇で恩恵を受けるセクター
金利上昇で不利になるセクター
その理由・メカニズム
投資家が取るべき戦略
これらを、最新の2025年時点のデータと市場観測を踏まえて、解説します。

金利上昇はなぜセクターによって明暗が分かれるのか
金利が上昇すると、主に以下の2つの大きな変化が起きます。
① 資金調達コストが上がる
企業が銀行から借金するときの金利(=借入金利)が上がり、投資や事業拡大のコストが増えます。
特に借入依存度が高い業界では、収益を圧迫します。
② 金利収入が増えるセクターがある
一方で、銀行・保険など金利で稼ぐセクターは収益が増加します。
預金金利の上昇は遅れやすく、貸出金利だけが先に上がるため、利ざや改善につながります。
こうした構造的な違いによって、「恩恵セクター」と「逆風セクター」がはっきり分かれるわけです。
2025年現在、日本の長期金利は約1%前後で推移。さらに日米金利差縮小による円高圧力もあり、輸出企業は為替面でも影響を受けます。
金利上昇の恩恵を受けるセクター
金利上昇局面では、収益モデルが金利の影響をプラスに受けるセクターが存在します。2025年の市場データでも、これらセクターはTOPIXを上回るパフォーマンスを示しています。
① 金融セクター(銀行・保険)
金利上昇の最大の恩恵を受けるのが金融セクターです。
- 貸出金利が上昇
- 預金金利は上がりにくい
- 利ざや(スプレッド)が拡大
- 運用利回りも改善
三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクは、政策金利0.5%引き上げ直後に株価が5〜7%程度上昇。
東京海上HDなどの保険会社も債券利回りの改善で収益基盤が強化され、2025年のEPS成長率は10〜15%増が予想されています。
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② エネルギーセクター(石油・ガス)
金利上昇はインフレを伴うことが多く、原油価格は上昇しやすい傾向にあります。そのため上流エネルギー企業の利益は安定しやすく、ENEOSや出光興産の株価も底堅く推移しています。
2025年上半期、エネルギーセクターのリターンはTOPIX比で+3%。インフレヘッジとして、FIRE志向の投資家にとっても重要な存在です。
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③ ヘルスケアセクター
医薬品・医療機器などは、景気や金利に左右されにくいディフェンシブ銘柄です。
- 高齢化で需要が不変
- 年金運用利回りの改善で資金流入が増える
- 研究開発投資が活発化
武田薬品・アステラスなど大手製薬の収益安定性は、2025年も際立っています。
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金利上昇で不利になるセクター
金利上昇は、借入コストや消費者の行動に強く影響するため、特定のセクターには逆風となります。
① 不動産セクター(J-REIT含む)
もっとも金利上昇の影響を受けるのが不動産です。
- 開発資金の調達コストが増加
- 住宅ローン金利上昇で需要減
- 中小デベロッパーの倒産リスク上昇
2025年、政策金利引き上げ後の不動産株は約10%下落。J-REITの利回りも低下し、投資妙味が薄れています。
② 建設セクター
不動産と連動するため、金利上昇の影響をまともに受けます。
- 借入依存度が高い
- 賃料上昇が利益に直結しづらい
- 輸入資材コストの上昇
半導体工場の建設需要は堅調ですが、それを上回るコスト増が続いています。
③ 消費ディスクリート(自動車、家電など)
生活必需品ではない耐久消費財は、金利に敏感です。
- ローン金利上昇で需要が減る
- 円高で海外収益が目減り
- 消費者信頼感指数が低下
2025年の同セクターEPS成長率は+2%程度と、大きく伸び悩んでいます。
【比較表】金利上昇でのセクター別インパクト
2025年予測ベース
| セクター | 主な理由 | 2025年収益影響度 | 投資推奨(FIRE視点) |
|---|---|---|---|
| 金融 | 利ざや改善・運用利回り増 | +10〜15% | ◎ 強く推奨 |
| エネルギー | インフレ連動、価格上昇 | +5〜8% | ○ 中程度推奨 |
| ヘルスケア | 需要安定・ディフェンシブ | +6〜9% | ◎ 強く推奨 |
| 不動産 | 借入コスト増、需要減 | -8〜12% | × 避けたい |
| 建設 | 資材コスト増、投資抑制 | -4〜7% | △ 短期は避けたい |
| 消費ディスクリート | ローン需要減、円高 | -3〜6% | △ 選別が必要 |
恩恵側の伸び幅は大きく、逆風セクターの下落幅を上回る点が特徴です。
金利上昇を投資家はどう活かすべきか
私の経験も踏まえて整理します。
① 金融・ヘルスケアを「安定軸」にする
例えば、ポートフォリオの20%を、金融や保険、ヘルスケアに割り当てる。金利上昇期のポートフォリオ安定化に大きく役立ちます。
② 金利イベント前後のタイミングを活用する
日銀会合の前後は、短期的な価格歪みが生まれやすいタイミングです。
- 利上げ → 不動産・建設が過剰反応で下落
- 利上げ見送り → 金融が調整
こうした行き過ぎを拾うのは有効な戦略です。
③ FIRE視点では金利上昇はむしろ追い風
金利が上がれば、預金や債券の利回りも改善します。複利効果が1~2%積み上がるだけでも、FIRE達成までの期間は短縮されます。
金利上昇は恐れる対象ではなく、むしろ味方にできる変化です。
まとめ:金利の波を理解することが、資産形成の一歩になる
金利上昇がもたらす影響は次の通りです。
- 恩恵:金融・エネルギー・ヘルスケア
- 逆風:不動産・建設・消費ディスクリート
- 理由は金利感応度と収益構造
- 2025年の政策金利(0.5〜0.75%予想)がセクターの明暗を分ける
金利が動けば、セクターが動く。セクターが動けば、ポートフォリオのリスクとリターンが変わる。
その「なぜ」を理解することが、FIREを含めた長期の資産形成において、確かな武器になります。
皆さんの投資が、金利変動をチャンスに変えるきっかけになれば幸いです。
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