三菱UFJフィナンシャル・グループの一角を担い、総合リース会社として国内外に事業を展開する三菱HCキャピタル(8593)。
航空機や海上コンテナ、不動産、環境エネルギーなど、多様なアセットを軸としたビジネスモデルは景気変動に強い企業としても知られています。
本記事では、三菱HCキャピタルの事業内容、業績動向、財務の特徴、配当の魅力、投資価値(メリット・注意点) を整理し、長期投資家・FIRE志向の人が押さえるべきポイントをまとめます。

三菱HCキャピタルとは|多角化で成長する総合アセット企業
多様なアセットを活用するビジネスモデル
三菱HCキャピタルは、単なるリース会社ではありません。
航空機、海上コンテナ、不動産、再エネ発電設備などの大型アセットを活用し、ファイナンスとサービスを融合した総合ソリューションを提供する企業です。
事業セグメントは以下の8つ。
- カスタマーソリューション(国内)
- 海外カスタマー
- 環境エネルギー
- 航空
- ロジスティクス(海上コンテナ)
- 不動産
- モビリティ
- アセットマネジメント
国内の中小企業向けリースから、欧米・アジアに広がるファイナンス事業まで、多角化が進み、景気循環の影響を受けにくいポートフォリオを形成しています。
最新業績(2026年3月期中間)|増収増益で改善傾向が明確に
中間決算では大幅増益を記録
2026年3月期中間(4〜9月)は、以下の通り力強い数字が並びました。
- 売上高:1.13兆円(+5.4%)
- 営業利益:1,299億円(+27.1%)
- 純利益:887億円(+43.9%)
特に不動産セグメントでの大口アセット売却益が寄与。
環境エネルギーでは、前年の特殊費用が剥落したことで利益率が改善しました。
通期純利益1,600億円予想に対する進捗は55.5%。順調なペースと言えます。
過去12四半期でも改善が継続
過去3年間の推移を見ると、
- 売上高…概ね前年同期比で増加
- EPS…安定的に増加する四半期が増えている
- 営業利益率・純利益率…上向き
- ROE…横ばいながら緩やかな改善
特にEPS成長の安定感は、長期投資家にとって評価しやすいポイントです。
財務の特徴|着実に改善しつつも課題は残る
安定性の面では自己資本比率に注意
最新の財務指標は以下の通りです。
- 自己資本比率:15.3%
- 有利子負債:9兆300億円(増加傾向)
- ROE:7.8%
- ROA:1.2%
リース事業はもともとレバレッジが高くなる構造ですが、一般的な「安全水準」とされる30%に比べると低く映るのは事実です。
金利環境の影響を受けやすいため、長期視点では金融市場の変動リスクも意識したいところです。
財務指標まとめ
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期(予想) | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(億円) | 19,506 | 20,908 | 約21,500 | +2.8% |
| 純利益(億円) | 1,240 | 1,351 | 1,600 | +18.4% |
| ROE(%) | 7.7 | 8.0 | 8.8 | +1.0pt |
| ROA(%) | 1.1 | 1.2 | 1.4 | +0.2pt |
| 自己資本比率(%) | 15.1 | 15.2 | 15.3 | +0.1pt |
数字を並べるとじわじわと確実に改善している姿が見て取れます。
配当の魅力|27年連続増配の安心感
三菱HCキャピタルの最大の魅力が “27期連続の増配” です。
2020年:25円
2025年:40円
2026年:45円(予想)
5年間で+80%の増配を達成しています。
現在の株価1,250円から算出すると、
- 配当利回り:3.6%
- 配当性向:40.4%(健全)
増配率も安定しており、FIRE・長期資産形成には非常に相性の良い銘柄と言えます。
株価チャート(10年)

2022年までは500~750円のレンジを行き来していましたが、2つ上のレンジで底を固め、更に上へ上がろうとしています。
投資価値の総合評価|強みと注意点
三菱HCキャピタルの強み
- 多角化された事業による安定収益
- 航空・ロジスティクスの回復が追い風
- 再エネ・インフラ関連で長期テーマにフィット
- 27期連続増配という圧倒的実績
- PER11.2倍、PBR0.98倍の割安感
株価が過熱していないため、配当を受け取りながら落ち着いて保有しやすい銘柄です。
注意点(リスク)
- 自己資本比率が低く、レバレッジは高め
- 金利上昇局面では負債コストが増える
- 海外事業の比率が高く、為替の影響を受けやすい
とはいえ、MUFGグループの信用力がリスクを一定程度緩和している点は安心材料です。
結論:三菱HCキャピタルは「守りの高配当株」として優秀
派手さはないものの、確かな成長力と安定感が同居する企業、それが三菱HCキャピタルです。
- 安定した多角化モデル
- 業績改善の継続
- 割安なバリュエーション
- 27期連続増配という信頼
これらを総合すると、ポートフォリオの中で資産の土台になりやすい存在です。
FIRE・長期投資を志す人にとって、5〜10%を任せやすい“守りの高配当銘柄”と言えるでしょう。
今後、純利益1,600億円を達成すれば、株価1,400円台も十分視野に入ります。長期で静かに積み上げたい人にとって、心強いパートナーとなるはずです。
関連記事
