2025年秋、アドバンテスト(6857)の株価が一時ストップ高(前日比+22%)の23,135円を記録し、上場来高値を更新しました。
AI(人工知能)関連需要の急拡大を背景に、半導体関連株の中でもとくに注目を集めています。
本記事では、急騰の背景・業績・今後の見通しをわかりやすく解説します。

アドバンテストとは? 〜AI時代を支える「半導体検査装置の王者」〜
アドバンテストは、半導体テスト装置(テスタ)で世界トップシェアを誇る日本企業です。
AIチップやGPUなど、高性能半導体の品質を検査する装置を手掛けており、AI時代の基盤インフラ的な存在です。
とくに近年は、生成AIやデータセンター向けGPUの需要拡大を追い風に、AI半導体関連銘柄の中心株として存在感を高めています。
株価が急騰した理由
アドバンテスト株が急騰したのは、上方修正と自社株買いの発表が主な要因です。
営業利益計画を3000億円 → 3740億円へ上方修正(2026年3月期)
24〜26年度の平均営業利益率を33〜36%に上方修正
発行済み株式総数の2.5%(1500億円上限)の自社株買いを発表
この発表を受けて、株価は一時制限値幅いっぱいのストップ高となり、投資家の買いが一気に膨らみました。
アナリストも高評価
証券各社も相次いでポジティブな見解を発表しています。
SMBC日興証券…
「想定以上に強い上方修正」と評価
ジェフリーズ証券…
「生成AI普及によるGPU・AI ASIC向け投資が追い風」と分析し、目標株価を21,000円に引き上げ、「買い」継続
オルタス・アドバイザーズ点
「業績と自社株買いは反論の余地がないほど堅調」とコメント
また、米同業のテラダインも販売好調を発表しており、「検査装置市場全体が好調」という見方が広がっています。
最新の業績と財務データ
| 項目 | 実績(2025年3月期) | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,797億円 | +60.3% |
| 営業利益 | 2,281億円 | +179.5% |
| 当期純利益 | 1,611億円 | +158.8% |
前年の低迷期から一転、AI関連需要の急回復で過去最高益を更新。
同時に、自社株買いや増配など株主還元にも積極的です。
配当実績(5年推移)
| 年度 | 年間配当(円) | 備考 |
|---|---|---|
| 2021年 | 29.5 | ー |
| 2022年 | 30.0 | 増配 |
| 2023年 | 33.8 | 増配 |
| 2024年 | 34.6 | 増配 |
| 2025年(予) | 39.0 | 増配見通し |
現在の主な指標(2025年11月時点)
- 株価:23,135円
- PER:61.53倍
- PBR:27.57倍
- 自己資本比率:59.3%
- ROE:34.38%
ROEが34%超という高水準を誇り、資本効率の高さが際立ちます。
一方で、PER・PBRはかなりの高水準であり、期待先行のプレミアム評価とも言えます。
世界シェア58%!アドバンテストの強み
アドバンテストは半導体試験装置分野で世界シェア約58%を占めています。
6年前は36%程度だったため、わずか数年で大幅な拡大を実現。
米テラダインとの競争を制し、AIチップやHPC(高性能計算)向けの需要増を取り込んでいます。
他社との比較:明暗分かれる半導体業界
AI向け半導体で追い風を受けるアドバンテストに対し、旧来型の半導体依存企業は厳しい状況です。
- インテル:生成AI対応の遅れで赤字転落、CEO退任
- ローム:EV需要鈍化で12年ぶりの赤字見通し
AI対応の差が、企業の明暗を分ける時代に突入しています。
今後の見通しと注意点
今後もAI向け半導体投資が拡大する見込みで、アドバンテストの需要は中長期的に堅調とみられます。
ただし、PER・PBRが高水準であること、シリコンサイクル(景気循環)による変動、米中摩擦など地政学リスクには注意が必要です。
短期的な過熱感が出た局面では、調整リスクも意識すべきでしょう。
FIRE視点から見たアドバンテスト
FIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指す上で鍵となるのは、「長期的にリターンを積み重ねられる安定銘柄」を組み込むこと。
その点で、アドバンテストは資産を育てるエンジンとなり得ます。
半導体は景気循環の波を受けやすい業界と思われがちですが、アドバンテストは不況期でも黒字を維持できる構造を持つ、数少ない企業です。
品質検査や評価という工程は、どんな市場環境でも必要不可欠。
“AI社会を支える検査のインフラ”として、安定した需要が継続します。
さらに注目すべきは、同社のROE(自己資本利益率)34%超という驚異的な資本効率。
これは、株主資本を極めて効率的に活用し、利益を積み上げている証拠です。
一見、配当利回り(0.4〜0.5%)は控えめですが、成長+安定+自社株買いという「複利の三拍子」が揃っています。
まとめ:アドバンテストは“AI時代の試金石”
アドバンテストは、AI時代の半導体検査を支える縁の下の力持ち。
✅ 世界シェア58%のリーディング企業
✅ 営業利益・ROEともに驚異的な伸び
✅ 自社株買い・増配で株主還元も強化
⚠️ ただし株価水準はすでに高く、調整局面には注意
日本株の中でも“AI革命の恩恵を最も受ける銘柄”の一つとして、今後も長期的な注目が続きそうです。