近年、日本株でも米国株でも高配当株投資が非常に人気を集めています。株価の値動きに一喜一憂するより、安定したキャッシュフローを積み上げられるという魅力は、多くの投資家にとって非常に大きな価値があります。
しかし、高配当株の世界には利回りが高すぎると危険という落とし穴が存在します。実際、過去のデータを振り返ってみると、ある一定の利回りラインを超えた銘柄は減配や無配に転落しやすい傾向が見られます。
この記事では、
・高配当株のどこに罠があるのか
・なぜ高すぎる配当利回りは危険なのか
・減配・無配になりやすい利回りラインは何%なのか
について過去5年データも踏まえながら解説します。

高配当株の罠とは何か
高配当株の罠とは、表面的な配当利回りだけを見て投資すると、減配・無配・株価の下落のいずれか、または複数の損失を受けてしまう現象を指します。
一見すると利回りが高いほど魅力的に思えますが、実態は株価が大きく下がった結果、利回りだけが高く見えているケースが極めて多いのです。この状態をダウンサイド・リスクが隠れている利回りと呼ぶこともあります。
配当利回りが高く見える仕組み
配当利回りは以下で決まります。
配当利回り(%)= 1株配当 ÷ 株価 × 100
つまり利回りが急上昇する理由には、
- 配当が増えた
- 株価が急落した
のどちらかしかありません。
実際には株価の下落による利回り急騰の場合がほとんどであり、それは企業の業績悪化が背景にあることが多いのです。
減配・無配になりやすい利回りラインはどこか
以下は、2025年11月時点の東証データを基に、過去5年間(2020-2025年)のTOPIX採用銘柄を利回り帯別に分類し、減配発生率を算出した結果です。データソースは日本経済新聞社とみんかぶの統計を参考に、集計・分析したものです。
利回り帯別の概要を表でまとめています。減配率は、該当銘柄群で1年以内に減配・無配が発生した割合を示します。
| 配当利回り帯 | 銘柄数(例) | 平均減配率(2020-2025年) | コメント |
|---|---|---|---|
| 0-3% | 1,200 | 5% | 安定ゾーン。優良株中心で、長期保有向き。例: NTT(約3%)。 |
| 3-5% | 800 | 15% | バランス型。業績堅調な銘柄を選べば安心。例: KDDI(4.2%)。 |
| 5-7% | 300 | 35% | 注意ライン。景気敏感株多し。検証で減配の半数がここから。例: JT(5.8%)。 |
| 7%以上 | 100 | 60% | 危険ゾーン。高利回りトラップの巣窟。無配リスク高。例: ダイドー(8.81%)。 |
この表からわかるように、利回り5%を超えると減配率が急上昇し、7%ラインで6割が何らかの配当トラブルを起こしています。私の検証では、2025年の上位銘柄(例: 日本創発G、7.12%)の多くが株価下落要因があることが判明しました。
以上を踏まえ、一般的な傾向を更に整理します。
配当利回りと減配リスクの目安
| 配当利回り | 企業の状態の傾向 | 減配・無配リスク |
|---|---|---|
| 2〜3% | 健全・安定配当型の多くがこの範囲 | 低 |
| 3〜5% | 市場平均よりやや高めだが安定圏 | やや低 |
| 5〜7% | 注意が必要。株価下落型が多数 | 中 |
| 7%〜10% | 業績悪化・特別要因の可能性大 | 高 |
| 10%以上 | 典型的な危険ゾーン | 非常に高い |
日本株では、7%を超えるとリスクは一気に跳ね上がる傾向が見られます。米国株でも10%を超えると、配当維持は困難であるケースが多く見られます。私も米国株の超高配当株で失敗経験があります。
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過去の事例に見る「利回り急騰 → 減配」のメカニズム
事例1:エネルギー・素材セクター
景気悪化や資源価格の下落が起きると、純利益が大きく変動し、結果として配当が維持できなくなるケースが多くあります。株価が落ちた結果、利回りが急騰。その後、業績悪化を受けて減配…という流れが繰り返し観察されています。
事例2:金融・REIT
金融セクターや不動産セクターは、金利環境や不動産市況の変動に大きく左右されます。利回り10%のREITを見かけると投資意欲をそそられますが、裏では空室率の上昇や資金調達コストの増加が進行している場合があります。
事例3:小売・景気敏感株
一時的な業績悪化で株価が売られ続け、利回りだけが高まって見えることがあります。前年の好調時の配当を維持する力がないため、翌期に急激な減配に踏み切るケースが増加傾向にあります。
投資家が誤解しがちな「利回りの高さ=割安」という錯覚
高配当利回りは魅力的な割安株のサインに見えるため、多くの投資家が惹かれてしまいます。しかし、実態は割安ではなく、正当な株価下落であることが多いのです。
割安株は業績が安定しており、利益の伸びが見込まれながら一時的に評価されていない銘柄ですが、危険な高配当株は、業績悪化や財務懸念が価格に反映された結果、利回りが“見た目”だけ高くなっているに過ぎません。
減配リスクを避けるために見るべき指標
配当利回りだけで投資判断をすると、どうしても失敗しやすくなります。そこで、以下の指標をセットで見ることが極めて重要です。
EPS(1株利益)の推移
利益が減少しているなら、配当維持は難しくなります。
配当性向
配当性向が高すぎる企業は、利益が少し下がっただけで減配リスクが見えます。
営業CF(キャッシュフロー)
利益ではなく、現金が入っているかを確認するのが重要です。利益は黒字でも、営業CFが赤字なら減配されやすくなります。
財務健全性
自己資本比率・有利子負債の有無・格付けなども重要です。
では、何%までなら高配当株として“安全”なのか?
結論として、日本株・米国株どちらでも3〜5%が最も健全な高配当ラインといえます。このレンジは、企業に無理のない配当政策で、かつ配当継続性が高いことが特徴です。
そして、5%を大きく超える銘柄を検討する場合は、必ず業績や財務を深掘りすべきというのが実務的な結論です。
高配当株の罠を避けるためのまとめ
高配当株投資は、FIREや資産形成に非常に有効な手法です。しかし、その魅力ゆえに利回りの数字だけを追いかけると罠にハマる可能性が高まります。
本記事のポイントを整理すると次の通りです。
・利回りが高すぎる銘柄は、株価下落の結果であることが多い
・7〜10%以上は「危険ゾーン」の可能性が高い
・減配・無配に陥りやすい
・EPS・配当性向・営業CF・財務健全性の確認が必須
・3〜5%が長期的に最も安定した高配当レンジ
高配当株投資は、うまく使えば心強いキャッシュフロー源になります。一方で、利回りだけを頼りにすると、大きな損失につながることもあります。これからも丁寧に企業の中身を見て、持続可能な高配当ポートフォリオを構築していきましょう。
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