金利上昇局面は、一般に株式市場にとって逆風とされます。実際、中央銀行が政策金利を引き上げると、市場金利も上昇し、企業の資金調達コストは増大します。その結果、将来の成長期待で評価されている成長株は、割引率の上昇によって株価が下押しされやすくなります。
しかし、過去の相場を振り返ると、金利上昇局面で相対的に強さを示すのが高配当株であるケースが少なくありません。
本記事では、その構造的な理由を掘り下げて解説します。

金利上昇が株式市場に与える全体像
金利上昇のメカニズム
中央銀行が利上げを行うと、次の変化が起こります。
- 市場金利が上昇し、債券利回りが高くなる
- 企業の借入コストが上昇する
- 将来利益を重視した株式の理論価値が下がる
2022~2023年のFRBによる急速な利上げ局面では、米国株全体が調整局面に入りました。
日本でも2025年以降、短期金利は0.75%程度に据え置かれながらも、長期金利は上昇基調にあり、市場には一定の緊張感が広がっています。
こうした環境では、株式市場全体から資金が流出するように見えますが、すべての株が一様に弱くなるわけではありません。
なぜ高配当株は相対的に強くなりやすいのか
① 利益が「現在進行形」で存在している
成長株は将来どれだけ稼ぐかで評価されます。一方、高配当株はすでに稼いでいる利益を原資に配当を支払っています。
金利上昇局面では、将来の利益 > 現在の利益という評価構造が逆転しやすくなります。
その結果、今すでにキャッシュフローを生んでいる企業の価値が再評価されやすくなるのです。
② 借入依存度が低く、金利負担に強い
高配当株に多い企業は、成熟産業に属し、過剰な成長投資を行わないビジネスモデルを持っています。
- 設備投資が一巡している
- 営業キャッシュフローが安定している
- 借入比率が相対的に低い
この構造により、金利が上がっても、利益への悪影響が限定的になりやすいのです。
③ 株価下落が利回り上昇という防波堤になる
金利上昇局面では株価が調整しやすくなりますが、高配当株の場合、株価下落はそのまま配当利回りの上昇を意味します。
- 株価下落 → 配当利回り上昇
- 利回り上昇 → 買い需要が発生
- 下落が抑制される
このメカニズムにより、高配当株は下落局面で自己修復機能を持つ資産になりやすいのです。
成長株と高配当株の違い(金利上昇局面)
| 項目 | 成長株 | 高配当株 |
|---|---|---|
| 収益の評価軸 | 将来利益 | 現在の利益 |
| 金利上昇の影響 | 割引率上昇で不利 | 影響が小さい |
| 投資家心理 | リスク選好が必要 | 安定志向と相性が良い |
| リターンの形 | 株価上昇 | 配当+緩やかな値上がり |
配当成長とインフレ耐性という視点
金利上昇は、多くの場合インフレと同時に起こります。
この点で重要なのが配当成長です。
米国のDividend Aristocrats(25年以上連続増配銘柄群)は、金利上昇局面でも比較的高いパフォーマンスを維持してきました。
配当が増え続けることで、インフレによる購買力低下を相殺できるからです。
日本でも、高配当かつ安定増配を続ける企業は、株価下落局面でも売られにくい傾向があります。
セクター別に見る金利上昇の恩恵
金融株:金利上昇の最大受益者
金利上昇局面で最も直接的な恩恵を受けるセクターが金融株です。銀行や保険会社は、貸出金利の上昇によって収益機会が拡大する一方、預金金利の上昇は比較的緩やかに進む傾向があります。この結果、利ざやが拡大し、収益構造が改善しやすくなります。
収益の安定性が高まれば、配当原資も確保しやすくなります。そのため金融株は、金利上昇局面において配当余力が増し、高配当株としての魅力を高めやすいセクターといえます。
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資源・エネルギー株
金利上昇は、多くの場合インフレと同時に進行します。インフレ局面では、原油や金属などの商品価格が上昇しやすく、資源・エネルギー関連企業の収益環境は改善しやすくなります。
こうした企業は、商品価格の上昇を通じてキャッシュフローを確保できるため、金利上昇局面でも配当の安定性を維持しやすい特徴があります。その結果、金融株と同様に、高配当株として相対的な強さを発揮するケースが多く見られます。
歴史的事例が示す高配当株の耐久力
過去の金利上昇局面を見ると、共通点があります。
- 2013~2018年の米利上げ期
- 2022年の急速な金融引き締め
- 2025~2026年の日本の長期金利上昇局面
いずれの局面でも、安定配当銘柄は市場平均よりも下落が小さく、回復が早い傾向が見られました。
これは、高配当株が単なる値上がり資産ではなく、キャッシュフローを伴う実物的な金融資産であることを意味します。
高配当株は「金利上昇に耐える資産」になり得る
金利上昇局面で評価されるのは、配当利回りが高い銘柄ではありません。重要なのは、配当を支える企業の体力です。
安定したフリーキャッシュフローを生み出し、過度な借入に依存せず、減配リスクを抑えられる財務体質を持つ企業こそが、金利上昇という環境変化に耐える力を備えています。こうした企業は、金利が上がっても事業活動が大きく揺らぎにくく、結果として配当の持続性も高まります。
まとめ:高配当株が強くなる本質的な理由
金利上昇局面で高配当株が強くなりやすい理由は、次の点に集約されます。
- すでに利益を生んでいる企業であること
- 借金に依存しない経営構造を持つこと
- 株価下落時も配当が投資家心理を支えること
金利上昇はリスクではありますが、それは同時に、企業の質を見分ける局面でもあります。
高配当株は、単なる利回り投資ではなく、不安定な時代に耐える資産として、FIREや長期資産形成において重要な選択肢となり得るでしょう。
株価が下落しても配当収入があることで、投資家は冷静さを保ちやすくなります。価格変動だけでなく、現金収入があるという事実が心理的な支えになるためです。
利上昇局面では、株価の変動が大きくなり、不安を感じる投資家も少なくありません。実際、相場が不安定になるといったん投資をやめるべきかと悩む人も増えますが、こうした心理は過去の相場でも繰り返されてきました。
金利が上昇すると、将来利益を現在価値に割り引く際の割引率も上昇するため、成長株は理論的に評価が下がりやすくなります。
ただし、企業の価値は単純な成長率だけで測れるものではありません。 企業の収益力をどう見るべきかについては、ROEの考え方を解説したこちらの記事も参考になります。
高配当株の強さは、単なる利回りの高さではなく、安定したキャッシュフローを生み出せる点にあります。
もっとも、高配当株には注意点も存在します。
高配当株は不安定な時代に耐える資産として、FIREや長期投資において重要な選択肢になり得ます。
ただし、配当額だけで安心できるわけではありません。






