公務員は安定収入・退職金・福利厚生が手厚く、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指すには理想的な土台を持っています。
しかし、その安定が思考を鈍らせ、気づかないうちに深刻な遅れを生むケースは少なくありません。
2025年現在、年金改正・新NISA恒久化・iDeCo限度額拡大など、公務員に圧倒的に有利な制度変更が続いています。
それを活用できなければ、むしろ 民間サラリーマンに追い抜かれる 時代が来ています。
この記事では、公務員FIRE達成者や失敗者の事例、最新の官公庁データを踏まえ、本当に危ない“詰みポイント”5つ を解説します。

詰みポイント①|年金制度改正の“実質減額”を甘く見る
多くの公務員が「公務員年金は手厚い」という20年前のイメージを持っています。しかし、制度はすでに大きく変わっており、FIRE勢にとっては不利なポイントも増えています。
2015年の年金一元化で空白期間が発生しやすい
職域加算が廃止され、代わりに導入された年金払い退職給付は 原則65歳支給。45歳退職なら 20年の完全空白期間 が生じます。
2026年4月開始の新制度もFIRE勢には恩恵が少ない
在職老齢年金の支給停止ラインが 51万円→62万円へ引き上げられる改正は、働きながら年金をもらう人のための制度です。このラインが上がることで、これまで「働きすぎると年金がカットされるから、労働時間を抑えよう…」と考えていた人たちが、収入を気にせずに働けるようになります。
従来は、給与と年金の合計が 51万円を超えると年金が一部ストップ していたため、特に60代前半の人は手取りがむしろ減る現象(働き損)が起きやすい状況でした。しかし上限が 62万円 に上がることで、同じ働き方でも年金が止まりにくくなり、働く意欲のある人がしっかり稼げる仕組みになります。しかし、すでにFIREしている人には恩恵はなくほぼ無関係です。(労働時間が増えてはいるんですけどね…。)
繰り上げ減額率が重い
繰り上げ受給の減額率は月0.4%(年4.8%)で、60歳開始なら一生24%減額が続きます。これはFIREを目指す人にとっては致命的にもなり得ます。
回避策
回避策としては、「ねんきんネット」で毎年将来の受給額を試算し、繰り上げ受給は極力避けながら、空白期間は新NISAやiDeCoで計画的に埋め、年金だけに依存しない資金計画を立てることが重要になります。
ポイント
- 「ねんきんネット」で毎年試算し、繰り上げ受給は極力避ける
- 空白期間は新NISAとiDeCoで計画的に埋める
- 年金頼りの資金計画は捨てる
詰みポイント②|iDeCo限度額拡大を放置して節税を逃し続ける
2024〜2026年にかけて、公務員のiDeCo制度は劇的に変わります。
iDeCoの限度額の推移(2025年時点の決定内容)
| 時期 | 公務員iDeCo限度額 | 年間節税額の目安(年収700万円・税率20%) |
|---|---|---|
| 〜2024年11月 | 月1.2万円 | 約2.9万円 |
| 2024年12月〜2025年末 | 月2万円 | 約4.8万円 |
| 2026年〜 | 月6.2万円 | 約14.9万円 |
ところが、国民年金基金連合会の2025年データでは、加入者全体の平均拠出額は月1万円前後であり、公務員の中にもiDeCoの拠出を低く据え置いたままにしている人が一定数いることが推測されます。
出額を増やすことで得られる節税効果と複利効果は非常に大きいことは周知の事実です。制度改正による将来的な拡大は明らかであり、都度早めに拠出枠を引き上げるかどうかで、FIRE達成には数年〜数十年単位の差が生じることでしょう。
今すぐすべきこと
- 金融機関に「限度額変更届」を提出
- 手数料の安いSBI証券・楽天証券に変更
- 全世界株インデックスに統一してシンプル化
といったことが一案として挙げられます。
詰みポイント③|退職金の最大化タイミングを読み違え、100~300万円を無駄にする
公務員は退職金が手厚い一方、退職のタイミング選びが極めて重要 です。
よくある損失ポイント
- 3月末退職が最も有利。4月1日在籍で1年分加算される自治体が多数
- 賞与支給日後の退職は危険(満額にならない)
- 自己都合でも定年退職並みになる自治体があるのに相談しない
総務省調査によると、60歳定年の退職金平均は 約2100万円。しかし40代自己都合は 1200〜1500万円 が一般的。
わずか1ヶ月違いで 100万円以上の差 がつく事例も珍しくありません。
必須の対策
- 人事課に「退職手当支給シミュレーション」を依頼
- 退職は原則 3月末 を中心に設計
- 退職金を新NISA・iDeCoの枠に分散投資する
各自治体ごとに制度は異なるので、FIRE数年前から必ず確認を行い、最も有利になる準備と計画を立てていきましょう。
詰みポイント④|副業禁止を言い訳にして収入を一本化してしまう
公務員の副業禁止は厳しいように見えて、実際は許可される領域は多いです。
実際に許可の下りやすい収入源
- 太陽光発電(投資扱い)
- 不動産賃貸(自治体により5室10名以下なら届け出のみでOK)
- 執筆・講演(許可制だが通りやすい)
- 株・投信・NISAなどの資産運用(完全自由)
にもかかわらず、「公務員は副業できないし…」「給料だけで積み立てるしかない」と収入源がひとつしかない人が多いのが実態です。
2025年時点で日銀の物価見通しはCPI 3%前後。現金と日本債券だけでは実質マイナスです。
少しの多角化がFIREの速度を変える
- 小規模な太陽光
- 不動産(規模に規定があるので注意)
- 執筆・監修などの許可副業
- 高配当ETF
これだけで資産は耐久型になります。
詰みポイント⑤|新NISAの非課税枠1,800万円に到達した後の“出口戦略がない”
公務員の多くは、新NISAに積み立てること自体には前向きです。
しかし、1,800万円に到達した後を考えていないというケースが極めて多いです。
出口戦略なしで起きる問題
- 売却時に 20.315%課税
- FIRE後のキャッシュフローが途絶える
- 再投資のルールが曖昧になる
賢い人がすでにやっていること
- 配偶者の枠もフル活用して 夫婦で3,600万円非課税
- 1,800万円到達前からiDeCoへシフトして65歳以降を確保
非課税枠は使うだけでなく次を準備することで威力を発揮します。
まとめ|公務員だからこそ“意識の差”が10年の差になる
公務員はFIREに最適なスタートラインに立っています。しかし、油断すると以下のような遅れが確実に起きます。
- 年金の空白期間を甘く見る
- iDeCo限度額を放置
- 退職金のタイミングを誤る
- 副業禁止を誤解して収入源を固定
- 新NISAの出口戦略がない
2025年は制度が大きく有利に動いた年。これを活かせるかどうかで、50歳でFIREできるか、60歳まで働くかが分かれます。
今すぐやるべき3つのアクション
- iDeCo限度額を即時変更
- ねんきんネットで年金試算を更新
- 人事に退職金シミュレーションを依頼
今日の行動が、あなたの10年後の自由を決めます。
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