資産形成

SPKはなぜ増配を続けられるのか|27期連続増配の裏側と長期投資の魅力

自動車関連株というと、完成車メーカーやEV、半導体といった華やかなテーマに目が向きがちです。一方で、安定的なキャッシュフローと堅実な株主還元を積み上げてきた裏方企業は、相場の喧騒の中で見過ごされやすい存在でもあります。

SPK株式会社は、まさにそうした一社です。本記事では、SPKの事業内容、業績動向、財務体質、配当の魅力を整理しながら、長期投資の視点での投資価値を掘り下げます。


SPKとは何をしている会社か

モビリティ社会を支える専門商社

SPKは1957年創業の老舗専門商社で、自動車アフターマーケット補修部品を中核事業としています。ブレーキパッド、フィルター、ボルトなど、整備や修理に欠かせない部品を国内外から調達し、整備工場や販売店へ供給しています。

完成車の販売台数は景気や技術革新の影響を受けやすい一方、補修部品の需要は車が走り続ける限り発生します。EVシフトが進んでも、既存の内燃機関車が急に消えるわけではありません。この構造が、SPKの事業に独特の安定感をもたらしています。

事業セグメントの広がり

SPKの主な事業は以下の4つに分かれています。

セグメント内容
国内営業本部自動車補修部品の国内販売(売上の中核)
海外営業本部アジア・欧米向け補修部品販売
工機営業本部建機・農機・産業車両向け組付部品
CUSPA営業本部自社EC「CUSPA」を通じたオンライン販売

特に近年注目されているのが、CUSPA事業です。既存市場をデジタルで効率化するこの取り組みは、派手さはないものの、利益体質の改善と成長の両立を狙った戦略と言えます。


最新決算から見る業績の実像

2026年3月期中間決算は増収増益

2026年3月期中間期の連結業績は以下の通りです。

項目数値前年同期比
売上高364億5,000万円+9.0%
営業利益18億800万円+15.6%
経常利益19億5,200万円+14.1%
中間純利益13億2,200万円+11.2%

主力の自動車アフターマーケット補修部品が国内外で堅調に推移し、CUSPA事業も大幅な増収を達成しました。一方で、人的資本投資やコスト上昇により販管費が増加しており、利益率の伸びは限定的です。


収益性・安定性・成長性をどう見るか

収益性:やや不安定だが許容範囲

過去12四半期を見ると、純利益率・営業利益率は前年同期比で低下傾向にあり、ROEやROAもじり安です。
とはいえ、ROEは約9.7%、ROAも5%前後と、一般的に望ましい水準は維持しています。商社としては過度な高収益を狙わず、安定を優先している印象です。

安定性:自己資本比率61%の安心感

自己資本比率は約61%と非常に高水準です。有利子負債は増加傾向にありますが、財務基盤を揺るがすレベルではありません。EPSは増減を繰り返しつつも直近は落ち着いており、ディフェンシブ性の高い企業体質がうかがえます。

成長性:売上は着実、利益は慎重

売上高は前年同期比で拡大を続けています。一方、EPSの伸びは鈍く、フリーキャッシュフローも緩やかな回復という表現がしっくりきます。急成長株ではありませんが、堅実な成長軌道にあると評価できます。


株主還元と配当の魅力

配当金は着実に増加

SPKの配当推移は、長期投資家にとって非常に魅力的です。

年度年間配当
2020年36円
2021年37円
2022年40円
2023年44円
2024年50円
2025年60円
2026年68円(予想)

最大の特徴は、継続年数にあります。

同社は2025年時点で27期連続増配を達成済みで、2026年3月期の増配計画が実現すれば28期連続増配となる見込みです。これは日本株全体で見ても極めて希少な記録であり、36期連続増配の花王(4452)に次ぐ水準に位置します。

連続増配の長さは、企業が景気循環や業界構造の変化を乗り越えながら、安定してキャッシュフローを生み出してきた証拠でもあります。SPKの場合、完成車販売に依存しないアフターマーケット中心の事業構造が、この増配の土台となってきました。
派手な高配当ではないものの、減らさず、着実に増やすという姿勢は、FIREや長期資産形成を目指す投資家にとって大きな安心材料と言えるでしょう。


バリュエーションと投資妙味

現在の指標は以下の通りです。

指標数値
株価2,315円
PER9.27倍
PBR0.84倍
ROE9.71%
自己資本比率61.0%

PBR1倍割れで、ROEは約10%。過度に割安とは言えませんが、財務良好・増配基調・安定収益を考慮すれば、長期保有前提では妥当〜やや割安な水準と感じます。


SPKはどんな投資家に向いているか

SPKは、短期的な株価上昇を狙う銘柄ではありません。むしろ、FIREや早期リタイアを意識し、安定した配当と財務の安心感を重視する投資家に向いています。
中期経営計画「VISION2030」ではROE8%以上を掲げており、派手さはないものの、着実な経営姿勢が読み取れます。


まとめ:地味だからこそ、長く持てる

SPKの魅力は、目立たない事業領域でコツコツと価値を積み上げてきた点にあります。
業績は横ばい気味な局面もありますが、自己資本比率の高さ、増配姿勢、安定した需要構造は、長期投資の土台として十分です。

ポートフォリオに一社、安心を加えたいにとって、SPKは検討に値する一銘柄となるでしょう。

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