最近、株主総会の招集通知に同封されたチラシで株主パスポートという言葉を目にした方も多いのではないでしょうか。
株主パスポートとは、三井住友信託銀行が2025年4月に提供を開始した、個人株主向けの無料スマートフォンアプリです。私も今月登録したばかりですが、使用感は悪くなく、今後銘柄登録をちょこちょこ行っていきたいと思っています。
これまで株主と企業のやり取りは、紙の通知や郵送物が中心でした。しかし、株主数の増加やペーパーレス化の流れを背景に、情報提供や議決権行使をデジタルで完結させる仕組みとして、この株主パスポートが登場しました。
単なる便利アプリにとどまらず、株主と企業の関係性そのものを変えつつあるサービスとして注目されています。

三井住友信託銀行の「株主パスポート」アプリ概要
株主パスポートの基本情報
株主パスポートは、iOS・Androidに対応した無料アプリで、複数銘柄の株主情報を一括管理できます。
対象となるのは、三井住友信託銀行が株主名簿管理人を務め、かつ本サービスに参加している上場企業です。2025年時点で参加企業は約800社以上とされています。
すべての上場企業が対象ではない点は重要なポイントですが、国内の有力企業が多数含まれています。
主な機能一覧
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 情報管理 | 株主総会招集通知、配当金情報、株主優待、適時開示をタイムラインで表示 |
| 議決権行使 | アプリ内で電子行使(スマート行使)が可能 |
| ポイント制度 | 議決権行使やアンケート回答で株主ポイントが貯まる |
| セキュリティ | 生体認証対応、三井住友信託銀行が運営 |
| 利用料金 | 完全無料 |
紙で届いていたものを、ただスマホに置き換えただけではなく、行動(議決権行使)にインセンティブが付く設計になっている点が特徴です。
株主パスポートのメリット
情報管理が圧倒的に楽になる
複数の銘柄を保有していると、株主総会の案内や配当のお知らせがバラバラに届き、管理が煩雑になりがちです。
株主パスポートを使えば、保有銘柄ごとの情報が1つのアプリに集約され、必要な情報をすぐ確認できます。
紙の書類を探す手間がなくなり、自然とペーパーレスにもつながります。
議決権行使のハードルが一気に下がる
これまで議決権行使は、郵送で返送、ログイン方法が分かりにくいなど、意外と手間がかかるものでした。
株主パスポートでは、通知を見てそのままワンタップで議決権行使が可能です。
結果として、これまで参加できていなかった個人投資家も、スキマ時間で企業意思決定に関与できるようになります。
株主ポイントが“ちょっと嬉しい”
株主活動(アンケート、イベント参加、企画)でポイント獲得が可能で株主ポイントが付与されます。
ポイントはスイーツやQUOカードペイなどと交換でき、キャンペーン時には抽選で高額ポイントが当たることもあります。
金銭的リターンは小さいものの、株主として行動する理由になる仕組みがある点は評価できます。
無料かつ大手運営の安心感
利用料は完全無料で、生体認証にも対応しています。
三井住友信託銀行という大手金融機関が運営している点も、安心材料の一つです。
株主としての「関係性」が深まる
企業からのアンケートやイベント案内が届くことで、単なる数字上の投資対象ではなく、企業との距離が少し近づく感覚があります。
長期投資やFIREを目指す投資家にとって、この視点は意外と重要です。
株主パスポートのデメリット・注意点
対応銘柄が限定されている
最大のデメリットは、すべての銘柄が登録できるわけではない点です。
他の信託銀行が名簿管理人の企業は対象外となるため、保有銘柄が多くても一部しか使えないケースがあります。
ポイントは大きく貯まりにくい
ポイント制度は魅力的ですが、アンケートやイベントの頻度は企業によって差があります。
これだけで得をするというレベルではなく、あくまで副次的なメリットと考えた方が無難です。
初期登録がやや手間
銘柄登録時には株主番号の入力が必要で、エラーが出たという声もあります。
マイナンバーカード連携で住所や氏名は自動入力できますが、最初の設定は少し時間がかかります。とはいっても、銘柄登録をしなければ2分程度で終わります。
個人情報の紐づけに不安を感じる人も
住所・氏名と株主情報を紐づける仕組みのため、プライバシーを気にする方もいます。
ただし、運営主体やセキュリティ体制を考えると、過度に心配する必要はないでしょう。
株主パスポートの登録方法
登録は以下の流れで進みます。
- 株主パスポートアプリをダウンロード
- マイナンバーカードで本人情報を登録(任意)
- 株主番号を使って保有銘柄を登録
- 通知受信・議決権行使が可能に
一度設定してしまえば、以降は特別な操作はほとんど不要です。
マイナンバーカードと株主番号が手元にあれば1~4まで5分もかかりません。
株主パスポートはどんな人に向いているか
株主パスポートは、複数銘柄を長期保有している個人投資家や、忙しくて総会通知を見逃しがちな人に特に向いています。
一方で、保有銘柄が少ない人や、紙の通知を重視する人にとっては、メリットを感じにくいかもしれません。
まとめ|株主パスポートは「投資の関わり方」を変えるツール
株主パスポートは、単なる便利アプリではありません。
株主が企業とどう関わるか、その姿勢を問い直すツールとも言えます。
FIREや資産形成を目指す中で、投資はお金を増やす手段になりがちです。しかし、株主パスポートを使うことで、企業の意思決定に参加する主体としての自覚が生まれます。
すべての人に必須ではありませんが、せっかく株を持っているなら、もう一歩踏み込んで関わりたいと考える投資家にとって、試す価値のあるサービスと言えるでしょう。