株式投資や資産形成に取り組む多くの人が憧れるのが「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)」というライフスタイル。
経済的な自立を達成し、早期に仕事を離れて自由な時間を手に入れる。それは、毎日の通勤や残業から解放され、自分の人生を主体的にデザインする理想像でもあります。
しかし、FIRE達成者の平均資産が6500万円という数字を耳にすると、本当にその金額で実現できるのかと疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2025年時点の最新データを基に、6500万円という数字の妥当性を多角的に検証。
日本人の生活実態・インフレ・投資環境を踏まえ、より現実的なFIRE像を描いていきたいと思います。

FIREとは何か?その基本と資産の目安
FIREとは、資産運用による不労所得で生活費を賄える状態を指し、早期退職を目指す考え方です。
アメリカ発祥の概念ですが、日本でもNISAの普及や低金利環境の追い風を受け、30代・40代を中心に注目を集めています。
4%ルールの基本
FIREにおける目安となるのが4%ルール。これは「年間生活費 × 25倍=必要資産額」というシンプルな考え方です。たとえば、年間生活費が300万円なら、必要資産は7500万円となります。
しかし日本では、税金(配当・譲渡益への20%課税)やインフレ(2025年現在2〜3%上昇)を考慮すると、単純な計算では不足が生じがちです。
総務省の家計調査(2025年)によると、40代夫婦世帯の平均年間支出は約350万円。4%ルールで換算すれば約8750万円が必要になります。
データから見るFIRE達成者の実態:6500万円の根拠
6500万円という数字は、2022年のLENDEX調査(早期リタイア者1019名対象)に基づいています。この調査によると、リタイア時の平均総資産が約6500万円。
その後の2025年データでは、インフレや円安の影響を反映し7000〜8000万円へ上方修正する報告も見られます(M&Aロイヤルアドバイザリー調査)。
海外ではさらに高額で、2021年のTrinity Study更新版(2025年引用)によると、米国のFIRE達成者の平均資産は約1.7億円(150万ドル)。
一方、日本のFIRE達成者を分析した『ダイヤモンド・ザイ』(2025年4月号)では、約60%が1億円超の資産を保有していました。
FIREタイプ別に見る必要資産の目安(2025年版)
| FIREタイプ | 平均必要資産(推定) | 主な対象者像 | 代表的な事例 |
|---|---|---|---|
| リーンFIRE(ミニマム生活) | 4000〜6000万円 | 独身・地方在住、月15万円支出 | 地方移住+時短勤務で生活を維持 |
| スタンダードFIRE(標準生活) | 6500〜8000万円 | 夫婦世帯、月25万円支出 | NISA・ETF活用で平均達成年齢43歳 |
| ファットFIRE(ゆとり生活) | 1億円以上 | 都市部・家族持ち、月35万円支出 | 副業継続でリスク分散 |
| サイドFIRE(部分リタイア) | 3000〜5000万円 | 副業併用、月10万円不労所得 | フリーランス転向で生活を安定化 |
この表は、2025年のマネイロメディアおよびM&Aレポートを基に作成しました。
6500万円はあくまでスタンダードFIRE層の平均値であり、生活地域・家族構成・副収入の有無によって現実性は大きく変わります。
6500万円でFIREは可能?その現実性とリスク
現実的な側面
2025年の低金利環境下でも、インデックス投資や高配当株を組み合わせれば年利3〜4%(税後2.5〜3%)の運用は十分に可能です。
この場合、6500万円で年間約200万円前後の不労所得を確保できます。
総務省データによれば、単身高齢者の平均支出が月18万円ほどであり、地方在住者であれば十分カバーできる水準です。
また、サイドFIREとして副業収入(月5万円程度)を組み合わせれば、必要資産を4500万円前後に圧縮することも現実的です。
リスクの側面
ただし、6500万円FIREにも明確なリスクがあります。
- 市場変動リスク:2025年は日経平均のボラティリティが上昇傾向にあり、20%下落で資産が5200万円へ減少する可能性。
- インフレリスク:2〜3%の物価上昇が続けば、10年で実質資産価値は8割程度に。
- 医療費リスク:高額療養費制度があっても、年間自己負担が100万円を超えるケースも。
ダイヤモンド・オンライン(2025年6月)では、「節約偏重による幸福度低下」や「再就職に戻るFIRE達成者の増加」を報じており、金額だけでは持続できない現実を指摘しています。
FIREを持続させる3つのポイント
- ポートフォリオの分散
株式70%・債券20%・金やREITなど10%を目安に。篠田丈氏(2025年連載)も「20%の安全資産が心理的安定をもたらす」と提唱しています。 - 支出最適化
食費・通信費・保険料の見直しだけで年間50万円以上の削減が可能。ミニマリストFIRE実践者・ゆみにゃん氏は、月20万円生活+旅行基金で豊かさを維持。 - 目的意識の再定義
水瀬ケンイチ氏のように「FIREは手段であり、目的ではない」と語る達成者も多い。自由時間を何に使うかを明確にすることで、リタイア後の幸福度が格段に上がります。
6500万円達成への現実的ステップ
- 20代後半〜30代前半:月3万円のNISA積立(年利5%)で20年後に約1500万円。
- 40代から本格化:月10万円の積立+配当再投資で10年以内に6500万円到達も可能。
これらを組み合わせることで、FIRE=特別な人のものではなく、計画すれば誰でも届く現実的な選択肢になります。
結論:6500万円は「現実的な平均値」、だが目的の再定義が鍵
最新データを総合すると、FIRE達成者の平均資産6500万円は日本において十分現実的です。
ただしそれは、あくまで平均的な生活を維持するための水準であり、個々のライフスタイルに応じた設計が不可欠です。
2025年の潮流は「サイドFIRE」そして、「ハイブリッドFIRE」へと移行しつつあります。
完全リタイアを急ぐよりも、働く自由を残しながら徐々に資産に生活を委ねていく形が主流となりつつあります。
6500万円という数字に縛られず、あなた自身の価値観と生き方に合ったFIRE像を描きましょう。
投資の旅は、資産額よりも自分の時間をどう使うかを問い直す過程そのものです。
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