最近はニュースを見ていると、企業のリストラの動きが目立ってきました。
とくに早期退職制度の募集が相次いでおり、地方サラリーマンの私にとっても他人事ではありません。
もしある日、自分の会社が「希望退職」を呼びかけると知ったら、誰でも不安になるはずです。
私も投資を続ける中で、こうした制度の背景や意図をよく考えるようになりました。
今回は、最近の事例を交えながら、企業が早期退職を導入する理由と、個人がどう活用できるかを解説します。
資産形成を進めるあなたに、新しい視点を届けられれば嬉しいです。

早期退職制度とは何か? 基本を振り返る
まず、早期退職制度の輪郭を簡単に押さえておきましょう。
この制度は、定年を待たずに社員が自ら退職を申し出られる仕組みで、企業が退職金の上乗せや再就職支援といった優遇を設けるのが一般的です。
希望退職制度と混同されがちですが、こちらは企業側の事情で期間限定で募集する一方、早期退職はより恒常的な福利厚生として位置づけられることが多いです。
たとえば、50歳前後で応募できるケースが多く、退職金に月給の数ヶ月分を加算する形でインセンティブがつきます。
なぜ今、これが注目されるのか
東京商工リサーチの調査によると、2024年には上場企業57社が早期・希望退職を募集し、総人数は1万に達しました。
前年の3倍近い規模で、2021年以来の1万人超えです。
2025年に入っても、パナソニックHDの1万人規模削減や日産自動車のグローバル2万人計画が報じられ、勢いは止まりません。
教育大手のベネッセコーポレーションも、7月25日に「ネクストキャリア支援制度」を発表。
35歳以上の社員を対象に450名程度の退職を募りました。
これは、主力の「進研ゼミ」会員数の減少(ピーク時から130万人減)に対応した構造改革の一環です。
こうした動きは、単なるコストカットではなく、企業が未来を見据えた変革を迫られている証左と言えるでしょう。
企業が早期退職制度を取り入れる理由:コストを超えた戦略的選択
では、企業はなぜこの制度を導入するのでしょうか。
表面的には「人件費削減」が挙げられますが、深掘りすると、もっと本質的な理由が見えてきます。
まず、経済環境の変化です。
円安や金利上昇、グローバル競争の激化で、従来のビジネスモデルが揺らぎ始めています。
2024年の募集企業の6割以上が黒字企業だった点が象徴的で、業績が好調だからこそ、将来のリスクに備えた「選択と集中」を進めるのです。
たとえば、不採算事業の撤退やデジタルシフトのための人員再配置。
ベテラン社員の給与が高い日本企業では、早期退職で高コスト層を減らし、若手への投資を増やす効果が大きいんですよね。
もう一つの理由は、組織の新陳代謝です。
少子高齢化で中高年層が増える中、ベテランの経験を活かしつつ、若手の成長を阻害しないバランスが求められます。
早期退職は、強制的な解雇を避けつつ、社員の自主性を尊重する日本型アプローチ。
結果として、モチベーションの高い組織が生まれ、生産性が向上します。
富士通の「セルフ・プロデュース支援制度」のように、退職を「セカンドキャリアの機会」と位置づける企業も増え、単なるリストラのイメージを払拭しようとしています。
もちろん、デメリットも無視できません。
優秀な人材の流出リスクや、残る社員の不安定化です。
でも、黒字企業が主導する今、企業は「持続可能な成長」を優先しているのです。
私から見ると、これは投資家にとってのシグナルだと思います。
こうした改革が進む企業株は、短期的に下落しても、中長期で回復する可能性が高いのではないでしょうか。
最近の事例を振り返る:早期退職を取り入れた企業とその内容
では、具体的に、どんな企業が動いているのか。
2024年から2025年にかけての主な事例を、表にまとめました。
募集人数や対象年齢、優遇内容を基に、傾向が見えてくるはずです。
データは東京商工リサーチや各社発表に基づいています。
| 企業名 | 募集時期 | 対象者数 | 対象条件 | 主な優遇内容 | 背景・目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 資生堂 | 2024年春 | 1,500人 | 45歳以上、勤続20年以上 | 退職金1.2倍、再就職支援 | 「ミライシフトNIPPON2025」による構造改革 |
| オムロン | 2024年春 | 1,000人 | 50歳以上 | 退職金上乗せ(月給12ヶ月分相当) | 不採算事業の見直し、収益強化 |
| 富士通 | 2024年秋 | 非公表 | 幹部社員中心 | 200億円費用計上、再就職支援 | 間接部門の最適化、生産性向上 |
| パナソニックHD | 2025年春 | 5,000人(国内) | 全年齢層 | 退職金割増、再教育プログラム | 収益強化のためのグローバル人員削減 |
| 日産自動車 | 2025年春 | 非公表(国内) | 全年齢層 | グローバル2万人規模、退職金優遇 | 経営再建、事業撤退 |
| ベネッセコーポレーション | 2025年7月 | 450人 | 35歳以上 | 退職金上乗せ、再就職支援 | 教育事業の構造改革、会員数減少対応 |
| ルネサスエレクトロニクス | 2025年春 | 非公表(グローバル5%未満) | 全年齢層 | 退職金上乗せ、再就職支援 | グローバル人員最適化、半導体競争力強化 |
| ジャパンディスプレイ | 2025年春 | 1,500人 | 国内従業員の56%相当 | 退職金1.5倍相当、キャリア支援 | 黒字転換に向けた構造改革 |
| 三菱電機 | 2025年9月 | 非公表 | 53歳以上、勤続3年以上 | 退職金加算(詳細非公表)、再就職支援 | 最高益更新中でも管理職層のスリム化 |
| 三菱ケミカルグループ | 2025年9月 | 非公表(数百人規模) | 50歳以上、勤続3年以上 | 退職金上乗せ(費用300億円計上) | 化学事業の再編、2020年以来の募集 |
| グンゼ | 2025年8月 | 非公表 | 全年齢層 | 退職金優遇、工場閉鎖関連支援 | アパレル不振、4工場・2物流拠点閉鎖 |
| 日本光電工業 | 2025年9月 | 200人 | 対象非公表 | 転職支援プログラム、退職金加算 | 医療機器事業の効率化 |
| IDEC | 2025年夏 | 300人 | 非公表 | 退職金上乗せ、再教育支援 | 電気機器の事業再編 |
この表からわかるように、大手メーカーが中心で、対象年齢の引き下げ(35歳以上)が目立ち、ベネッセのケースは特に興味深いですね。
教育業界のデジタルシフトが進む中、伝統的な通信教育の限界を認め、社員の「ネクストキャリア」を支援する姿勢は新鮮です。
2014年の希望退職以来の大型募集で、社員の反応も分かれているようですが、企業としては人材ポートフォリオの見直しを急いでいるのでしょう。
こうした事例を見ると、早期退職は「終わり」ではなく、「転機」のツールとして進化していると感じます。
早期退職制度に向いている人:自分ごととして考える
では、こうした制度は誰に向いているのでしょうか。
すべての人にオススメできるわけではありませんが、共通するのは「セカンドライフのビジョンを持っている」点です。
たとえば、FIRE志向の投資家。
退職金の上乗せ分をインデックスファンドに回せば、資産形成の加速器になります。
私が知る限りですが、50歳で退職し、配当株中心のポートフォリオで不労所得を実現した人は、制度を「自由への橋渡し」とポジティブに捉えていました。
向いている人の特徴
まず、経済的に余裕がある人。
退職金が月給15ヶ月分上乗せされるケースが多いので、それを元手にサイドFIREを狙うのに適します。
次に、スキルセットが市場価値の高い人。
ITやコンサル経験者なら、再就職がスムーズで、制度の再就職支援を活かせます。
一方、家族の生活費が重く、年金受給まで時間がかかる人は慎重に。
平均寿命が延びる今、退職後の10~20年をどう設計するかが鍵です。
意外と向いているのが、40代後半のミドル層。
ベネッセのように対象年齢が下がる傾向で、早めに動けばセカンドキャリアの選択肢が広がります。
ただ、制度を利用した人の末路として、後悔の声も聞きます。
よく見聞きするのは、「社内人脈がなく、孤独を感じた」、「想定外の医療費で資産が目減りした」といったもの。
こうした声を踏まえ、事前のシミュレーションが不可欠です。
早期退職を活用するコツ:投資家目線で資産形成を加速させる
最後に、活用法についてです。
早期退職は、単なる退職ではなく、人生のピボットポイントです。
まずは、退職金の税務をクリアにしましょう。
退職所得控除を活用すれば、税負担を最小限に抑えられます。
たとえば、勤続20年以上の場合、控除額は800万円+70万円×(勤続年数-20年)で計算可能。
残りをNISA口座に振り向け、株式やETFで運用するのが王道ルートです。
活用のステップを考えてみましょう。
最初に、自身の財務状況を棚卸し、退職後5年間の生活費を確保し、残りを分散投資。
次に、再就職支援をフル活用。
企業が提携するエージェントで、週3のコンサルや副業を探せば、収入源を多角化できます。
私が推したいのは、「セミFIRE」モデル。
退職金で基盤を固め、投資収益+パートタイムで暮らす形です。
ベネッセの事例のように、35歳から対象なら、早期に動いてスキルアップの時間を稼げます。
もちろんリスクもあり、市場変動で投資が裏目に出る可能性は常にあります。
だからこそ、事前のストレステストを行っておきましょう。
たとえば、退職シミュレーターアプリでインフレ率5%を想定したキャッシュフローを試算すします。
こうした準備が、制度を「チャンス」に変えていきます。
まとめ:変革の波に乗り、自身のFIREをデザインする
早期退職制度の広がりは、企業が変革を迫られている現実を映しています。
しかしそれは同時に、私たち個人投資家にとって「資産形成を加速させるチャンス」でもあります。
2024年に1万人を超える募集が行われ、さらにベネッセなどの新たな動きも続いています。
企業は確実に変化の道を進んでいるのです。
この制度と向き合うときは、「会社のため」ではなく「自分のため」という視点を忘れないようにしましょう。
もしそれが未来を広げる選択であるなら、迷わず一歩を踏み出してみましょう。
投資と同じく、人生もタイミングがすべてです。
FIREへの道が、よりスムーズで実りあるものになりますように。
