みなさんにとって米国ETFの御三家といえばなんでしょうか?
10数年前から米国ETFを物色していた私にとってはやっぱり、VYM、HDV、SPYDです。
もちろん全部保有しているのですが、SPYDはスタイリッシュなその響きと、コロナ禍での苦楽を共にした相棒のような存在で、非常に思い入れのある銘柄です。
現在、SPYDは678株保有しています。
まだまだ投資初心者だった頃から10年以上、配当金を口座に運んでくれて、そのたびに「FIREの実感」をじわじわ感じさせてくれる相棒です。
先に記事タイトルの私なりの結論を述べさせていただくと、SPYDでFIREは現実的ではないものの、配当生活の感覚を掴むには十分な銘柄と言えます。
高配当株に特化したこのETFは、長く持つほど複利の力を、(じわじわですが)実感することができ、配当生活を目指す第一歩としてはぴったりだったと私は思うからです。(ここ数年は、買い増しは行っておりません。)
今回は、SPYDに100万円投資した場合の配当金シミュレーションを使って、実際にどれくらいの配当が得られるのか、そしてFIREを目指す上でどう活用できるのかを解説します。

SPYDとは?
SPYD(SPDR®ポートフォリオ S&P500®高配当株式ETF)は、米国の高配当株に分散投資できるETFです。
2015年に運用開始され、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)が手がける「SPDR®シリーズ」の一つ。
特徴はシンプルで、S&P500の中から配当利回りが高い上位80銘柄を均等に組み入れるという仕組みです。
- ティッカー:SPYD
- 運用会社:SSGA
- 経費率:0.07%
- 分配頻度:年4回(四半期ごと)
- 配当利回り:4.5%(2025年9月時点)
上位組み入れ銘柄
| 銘柄名(日本語) | セクター | 組入比率 |
|---|---|---|
| CVSヘルス | ヘルスケア | 1.61% |
| APAコーポレーション | エネルギー | 1.54% |
| アッヴィ | ヘルスケア | 1.47% |
| HP | 情報技術 | 1.39% |
| サイモン・プロパティ | 不動産 | 1.39% |
| アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド | 生活必需品 | 1.36% |
| ベスト・バイ | 一般消費財 | 1.36% |
| USバンコープ | 金融 | 1.36% |
| アルトリア・グループ | 生活必需品 | 1.35% |
| ブルックフィールド・プロパティーズ | 不動産 | 1.35% |
組入銘柄は不動産、公共事業、生活必需品、金融、エネルギーなど景気敏感なセクターが多めで、大型ハイテク株の比率は低いのも特徴です。
SPYDのメリット
高い配当利回り
SPYDの最大の魅力は、高配当株に特化している点です。
2025年9月時点での利回りは約4.5%と、米国ETFの中でも比較的高水準にあります。
株価の値上がりだけでなく、定期的な配当収入を重視したい投資家にとっては、安定したキャッシュフローを得やすい商品です。
特にFIREや配当生活を目指す場合、配当利回りの高さは大きなメリットになります。
少額から分散投資できる
SPYDは1株50ドル以下で購入可能であるため、まとまった資金がなくても投資を始められるのが強み。
通常、高配当株80銘柄に個別で投資しようとすると多額の資金が必要ですが、SPYD1本で少額から手軽に分散投資が可能です。
初心者や資金の少ない方でも、投資経験を積む第一歩として始めやすい設計になっています。
約80銘柄に均等分散
SPYDは、S&P500の中から配当利回りの高い上位80社を均等に組み入れています。
これにより、1つの銘柄に依存せずリスク分散が効くのがメリットです。
個別株投資では1社の業績悪化で大きな損失が出る可能性がありますが、SPYDでは1銘柄の影響は小さく、セクターや企業ごとのリスクを抑えつつ高配当投資ができる点が魅力です。
低コスト運用
SPYDの経費率は0.07%と、長期保有に適した低コスト水準。
例えば、1,000ドルを投資しても年間コストはわずか70セント程度で、運用コストによるリターンの圧迫をほとんど気にせず保有できます。
長期投資ではコストの差が資産形成に大きく影響するため、低コストで高配当を狙える点は大きなメリットと言えます。
SPYDのデメリット
増配より減配が多い
SPYDは過去の配当履歴(後載)を見ると、増配と減配を繰り返しており安定感に欠けます。
高配当株ETFであるため、景気や個別企業の業績の影響を受けやすく、長期での配当成長は必ずしも期待できません。
そのため、定期的に安定した配当を重視する投資家は、配当履歴や経済状況を確認したうえで投資することが重要です。
トータルリターンが弱い
SPYDは株価の成長よりも、配当収入に重きを置いた「配当特化型ETF」です。
そのため、VYMやHDVなど他の高配当ETFと比べると、株価の上昇幅が小さく、トータルリターンはやや劣る傾向があります。
資産形成を目的とする場合は、SPYDだけでなく、成長株や他のETFと組み合わせる戦略が有効です。
セクター偏り
SPYDは不動産やエネルギー株の比率が高く、景気や市場動向に左右されやすいという特徴があります。
特定セクターに偏ったポートフォリオは、景気後退局面で大きな影響を受ける可能性があるため、投資前にセクターリスクを理解しておくことが重要です。
為替リスク
SPYDは米ドル建てETFであるため、円建てで投資する場合はドル円の為替変動の影響を受けます。
たとえETF自体が安定していても、円高になると円換算の資産価値や配当額が下がることがあります。
為替リスクを考慮して、投資額や投資タイミングを検討する必要があります。
配当金の実績推移
| 年度 | 配当金(ドル) | 前年度比増配率 |
|---|---|---|
| 2018 | 1.61 | - |
| 2019 | 1.74 | +8.1% |
| 2020 | 1.63 | -6.3% |
| 2021 | 1.54 | -5.5% |
| 2022 | 1.98 | +28.6% |
| 2023 | 1.82 | -8.1% |
| 2024 | 1.87 | +2.7% |
見ての遠いSPYDの配当は増減が大きく、安定した右肩上がりではありません。
- 2022年:+28.0%(大幅増配)
- 2023年:-8.1%(減配)
- 2020年:-6.3%(コロナ禍で減配)
長期CAGR(年平均成長率)はプラスですが、VYMやHDVと比べると不安定さが目立ちます。
株価チャート

デコボコはしていますが長期で見れば株価はじわじわと上がってきていますね。
シミュレーション:SPYDに100万円投資したら?
ここから本題です。
SPYDに100万円投資した場合、配当金はどれくらいになるのでしょうか。
前提条件
投資額:100万円
1株価格:43ドル(約6,450円)
利回り:4%
増配率:年2%(長期実績から勘案して設定)
為替:1ドル=150円
配当再投資なし(そのまま受け取る場合)
| 経過年数 | 年間配当金 | 累計配当金 |
|---|---|---|
| 1年目 | 4.0万円 | 4.0万円 |
| 5年目 | 4.4万円 | 21.5万円 |
| 10年目 | 5.0万円 | 49.6万円 |
| 20年目 | 6.1万円 | 115万円 |
| 30年目 | 7.5万円 | 204万円 |
配当再投資をせずそのまま受け取る場合、毎年の配当は少しずつ増えていきますが、累計額は複利効果がないため控えめです。
年間配当だけを見ればFIREの補助にはなりますが、長期的な資産形成効果は限定的です。
配当再投資あり(複利運用)
| 経過年数 | 年間配当金 | 累計配当金 |
|---|---|---|
| 1年目 | 4.0万円 | 4.0万円 |
| 5年目 | 4.8万円 | 23.8万円 |
| 10年目 | 6.1万円 | 57.2万円 |
| 20年目 | 9.8万円 | 153万円 |
| 30年目 | 16.2万円 | 319万円 |
配当を再投資することで複利効果が効き、累計配当金は大きく増加します。
30年後には再投資なしの約1.5倍以上となり、FIREや長期資産形成を目指す場合には非常に効果的です。
少額でも再投資を続けることで、将来的な収入の増加に大きな差が出ます。
再投資なし vs あり 比較
| 項目 | 再投資なし | 再投資あり |
|---|---|---|
| 10年後の年間配当 | 約5.0万円 | 約6.1万円 |
| 20年後の年間配当 | 約6.1万円 | 約9.8万円 |
| 30年後の年間配当 | 約7.5万円 | 約16.2万円 |
| 30年後の累計配当 | 約204万円 | 約319万円 |
再投資ありとなしでは、長期で見ると累計配当も年間配当も大きく差がつくことがわかります。
配当を生活費として受け取るのか、それとも再投資して資産形成を加速させるのかで、FIRE達成までの時間や収入額に大きな違いが生まれます。
初期投資が少額でも、再投資を継続することで複利の力を最大限に活用できます。
最後に私の大好きな御三家、それぞれのメリットを比較しておきます。
SPYD・HDV・VYMのメリット
| ETF | メリット(FIRE視点) |
|---|---|
| SPYD | ・ 高配当株中心で利回りが高め(約4.5%)。 ・少額から分散投資可能で初心者でも始めやすい ・約80銘柄に均等分散で個別株リスクを抑えられる ・定期的な四半期配当でキャッシュフローが安定しやすい |
| HDV | ・財務健全な高配当大型株に投資しており、配当の安定性が高い ・景気変動の影響を受けにくく、減配リスクが比較的低い ・長期保有で安定した配当収入を期待でき、FIRE向き ・経費率0.08%で低コスト運用 |
| VYM | ・S&P500全体の高配当株に幅広く分散、リスク分散効果が高い ・配当利回りはSPYDほど高くないが、株価成長も取り込みやすくトータルリターンが安定 ・配当の増加傾向が比較的安定しており、FIREの資産形成に向く ・経費率0.06%と低コストで長期運用向き |
まとめ
SPYDは、少額からでも高配当を得られる米国ETFで、投資初心者でも手軽に始めやすい点が魅力です。
配当再投資を行わなくても、年間4〜5万円程度の配当を受け取ることができ、配当生活の感覚をつかむことができます。
さらに配当を再投資すれば、複利効果により30年後には累計配当が約319万円まで増加し、長期的な資産形成にも貢献します。
一方で、SPYDは増配と減配を繰り返すことがあり、株価の成長力も他の高配当ETFに比べて安定していません。
そのため、FIREを目指す場合のメイン資産としてのみ頼るのは注意が必要です。
結論として、SPYDは「配当生活の第一歩」として非常に有効ですが、長期的な資産形成を目指すなら、VYMやHDVなどの他の高配当ETFと組み合わせて運用するのが現実的な選択肢となります。
御三家シリーズです。是非ご覧になってくださいね。
長期投資で配当金を築き上げていきましょう。



