30代は、キャリアが安定し始める一方で、結婚・子育て・住宅購入など大きなライフイベントが重なる時期です。将来に向けた資産形成やFIRE(経済的自立・早期リタイア)を意識し始める人も多く、「同世代はどれくらい投資しているのか」という疑問を持つ方は少なくないでしょう。
本記事では、2024〜2025年の最新公的統計や民間アンケートをもとに、30代の平均投資額を多角的に分析します。
全世帯ベースの現実的な数字と、投資経験者に絞ったデータを比較しながら、なぜその水準になるのか、そこから何が見えるのかを考察します。

30代の金融資産全体像|平均と中央値のギャップに注目
まず、投資額を考える前提として、30代の金融資産全体の状況を確認しておきましょう。
金融広報中央委員会が2024年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査」は、全国規模で行われる信頼性の高い調査です。このデータによると、30代の金融資産(預貯金+株式+投資信託など)の保有状況は以下のようになっています。
| 世帯タイプ | 平均金融資産保有額 | 中央値(保有なし含む) |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 約459〜606万円 | 約90万円 |
| 二人以上世帯 | 約677〜752万円 | 約238万円 |
平均額だけを見ると30代でも意外と持っていると感じるかもしれません。しかし、中央値が大幅に低い点に注目する必要があります。
これは、金融資産をほとんど持たない世帯が一定数存在し、少数の高資産層が平均値を押し上げていることを意味します。実際、30代の約3割は金融資産ほぼゼロと回答しており、投資以前に貯蓄段階にある人も多いのが実情です。
30代は、住宅ローンの頭金や教育費準備など、現金需要が高い時期です。この構造が、平均と中央値の大きなギャップを生んでいます。
30代の平均投資額|全世帯ベースではいくら?
次に本題である投資額を見ていきます。ここでは、株式・投資信託・ETFなどのリスク性金融商品を投資額として扱い、預貯金は含めません。
2024年時点で、30代のリスク性金融商品保有率はおよそ19〜30%程度とされています。つまり、投資をしていない人が多数派です。
この前提で全世帯を含めた平均を算出すると、30代の平均投資額は約110〜200万円程度に収まります。
金融庁関連資料や民間調査でも、30代全体の株式・投資信託保有額は100万円台前半とするデータが多く見られます。
この数字は、投資に積極的でない人を含んだ平均値であり、多くの30代が少額投資、もしくは未投資の段階にあることを示しています。
投資経験者に絞ると平均投資額は大きく変わる
一方で、実際に投資をしている人だけに限定すると、状況はまったく異なります。
日本証券業協会の2025年「個人投資家の証券投資に関する意識調査」では、30代以下の投資家の約8割が「保有額1,000万円未満」と回答しています。しかし、分布を見ると数百万円〜1,000万円近い層が一定数存在します。
さらに、楽天証券や野村アセットマネジメントが2025年に実施した調査では、30代NISA利用者の月間積立額は平均4.2〜5.8万円。年間では50〜70万円の新規投資を行っている計算になります。
既存資産を含めると、投資経験者の平均投資額は500万〜1,000万円超に達しているケースも珍しくありません。
日経系アンケートでは、30〜40代の積極層の約3割が「3年前より投資額を2倍以上に増やした」と回答しています。
この結果から見えるのは、30代の投資行動が明確に二極化しているという現実です。
新NISAが30代の投資行動を変えた
2024年に始まった新NISAは、30代の投資スタンスを大きく変えました。
金融庁のデータによると、NISA口座の開設率は30代が最も高く、25%以上が利用中とされています。
2024年実績では、つみたて投資枠の平均利用額は約70万円、成長投資枠は約158万円と、非課税枠を積極的に活用する人が増えています。
30代の積立額が増えた背景には、長期・分散・低コストという投資スタイルが浸透してきた点があります。インデックスファンドを中心に、無理のないペースで継続する人が増えたことは、世代全体として非常に健全な変化と言えるでしょう。
なぜ30代の平均投資額は低く見えるのか
それでも、全世帯ベースの平均投資額が低く見える理由は明確です。
最大の要因は、ライフイベントによる支出の集中です。住宅、子育て、転職など、資金の流動性が求められる場面が多く、投資に回す余裕が生まれにくい時期でもあります。
加えて、日本ではまずは貯蓄という価値観が根強く、投資に対する心理的ハードルが高いことも影響しています。
しかし視点を変えれば、30代はまだ十分に挽回できる世代です。40代以降は教育費のピークを迎える家庭も多く、投資余力がむしろ減るケースもあります。30代で始めること自体が、すでにアドバンテージなのです。
30代が投資額を伸ばすための現実的な考え方
同世代のデータを知ることで、自分はどの位置にいるのかを冷静に確認することができます。もし平均以下であっても、悲観する必要はありません。
重要なのは、投資額の大小よりも継続性です。月1〜3万円の積立でも、30年続ければ大きな差になります。新NISAのつみたて投資枠を軸に、全世界株式や米国株インデックスなど、シンプルな商品を選ぶだけでも十分です。
30代最大の武器は時間です。短期的な値動きに振り回されず、淡々と積み上げる姿勢こそが、将来の資産を形作ります。
まとめ|平均を知り、自分なりの投資軸を持つ
30代の平均投資額は、全世帯ベースで約110〜200万円、投資経験者に限定すると500万円以上と、大きな開きがあります。
ただこの数字は、他人と競うためのものではありません。自分の現在地を知り、次の行動を考えるための鏡とも言えます。
FIREや将来の安心を目指すなら、平均に安心せず、淡々と積み上げる習慣を持つことが何より重要です。投資は一夜にして結果が出るものではありませんが、30代からの一歩は、確実に未来を変えていきます。
投資はセンスではなく習慣です。
関連記事



