近年、日本の政治と経済の距離は、これまで以上に近づいています。特に注目されているのが、自民党と日本維新の会の政策協調です。両党は立場の違いこそあれど、経済合理性や成長戦略を重視する点で共通項が多く、具体的な政策が企業業績に直結しやすい局面に入っています。
投資家、特に株式投資で資産形成を目指す方や、FIRE(早期リタイア)を意識している方にとって、政治の動きは単なるニュースではありません。政策の方向性を読み解くことは、中長期で有望な投資テーマを見つける重要なヒントになります。
本記事では、「自民党×日本維新の会」の政策の中でも、
①ガソリン暫定税率の廃止
②原発再稼働の推進
③副首都構想
という3つの軸に注目し、それぞれに関連する銘柄として、SGホールディングス、関西電力、大林組の投資価値を掘り下げていきます。

自民党と日本維新の会が共有する政策の方向性
ガソリン暫定税率の廃止が意味するもの
ガソリン暫定税率は、1リットルあたり約25円が上乗せされている税制で、物流・運輸業界にとって長年の重荷でした。日本維新の会は以前から廃止を強く主張しており、自民党側も物価高対策の一環として歩み寄りを見せています。
この政策が実現すれば、単なる家計支援にとどまらず、企業のコスト構造そのものが改善します。特に燃料費の占める割合が高い物流企業では、利益率の改善がダイレクトに業績へ反映される可能性があります。
原発再稼働の推進とエネルギー政策
原発再稼働は、自民党のエネルギー安定政策と、日本維新の会の現実的な電力供給論が一致する分野です。再稼働が進めば、燃料輸入コストの抑制や電力料金の安定化が期待され、電力会社の収益体質は大きく改善します。
エネルギー価格の安定は、産業全体の競争力にも影響します。結果として、日本経済全体の底上げにつながる点は、長期投資家にとって見逃せないポイントです。
副首都構想がもたらすインフラ投資
副首都構想は、日本維新の会が一貫して掲げてきた政策で、大阪を中心に行政・経済機能を分散させる構想です。自民党のインフラ投資政策と結びつくことで、大規模な都市再開発や交通網整備が進む可能性があります。
これは一時的な公共事業ではなく、数十年単位での都市構造変化を伴うテーマです。建設・ゼネコン業界にとっては、安定的な受注環境が期待できます。
「自民党×日本維新の会」関連銘柄3選の投資価値
SGホールディングス|物流コスト改革の恩恵を受ける企業
SGホールディングスは、佐川急便を中核とする国内有数の物流企業であり、日本の物流インフラを支える存在です。とりわけ注目すべきは、ガソリン暫定税率の廃止が実現した場合のインパクトです。宅配・幹線輸送ともに燃料コストの占める割合が高い物流業界において、燃料費の恒常的な引き下げは、短期的な利益押し上げにとどまらず、中長期の収益体質改善につながる可能性があります。
財務指標(2025年12月20日時点)を見ると、株価1,471円、配当利回り3.6%、PER15.08倍、PBR1.69倍、ROE10.04%、自己資本比率55.8%と、物流大手としては非常にバランスの取れた水準です。特に自己資本比率の高さは、景気後退局面や燃料価格の変動といった外部環境の変化に対する耐性を示しており、長期保有を前提とする投資家にとって安心材料と言えるでしょう。
事業面では、eコマース市場の拡大が引き続き追い風となっています。個人向け宅配需要は成熟しつつあるものの、企業間物流(BtoB)や越境EC、温度管理を含む付加価値物流への展開により、運ぶ会社から物流ソリューション企業への進化が進んでいます。ここに政策による燃料コスト低減が重なれば、価格競争力の向上と同時に、利益率の底上げが期待できます。
また、配当利回り3.6%という水準は、FIREを意識したインカム投資の観点からも魅力的です。急成長株のような派手さはないものの、景気に左右されにくい需要、政策による追い風、安定した財務基盤という三点がそろっており、ポートフォリオの土台として組み入れやすい銘柄だと考えられます。短期的な値上がり益よりも、長期的な配当と企業価値の積み上げを重視する投資家にとって、SGホールディングスは堅実な選択肢の一つと言えるでしょう。
関西電力|原発再稼働の中核を担う存在
関西電力は、自民党が掲げる原発再稼働政策と、日本維新の会の現実的なエネルギー安定論が交差する中で、政策効果を最も直接的に享受しやすい電力会社の一つです。原発再稼働が進展すれば、燃料費の高い火力発電への依存度が下がり、発電コストは大きく改善します。これは単なる一時的な利益増ではなく、電力会社としての収益構造そのものを安定させる要因となります。
財務指標(2025年12月20日時点)を見ると、株価2,506円、配当利回り2.99%、PER7.76倍、PBR0.85倍、ROE15.75%、自己資本比率31.8%と、明確な割安水準にあります。特にPBR1倍を下回りながらROEが15%を超えている点は、資本効率の高さに対して市場評価が追いついていない状態と読み取れます。電力株は規制産業という理由で過小評価されやすい傾向がありますが、その分、政策転換が起きた際の評価修正余地は大きいと考えられます。
事業環境の面では、原発再稼働によるコスト低減に加え、電力料金の安定化が産業需要を下支えする効果も期待できます。電力価格が落ち着けば、製造業やサービス業の企業活動が活発化し、結果的に電力需要の底上げにつながります。これは、関西電力にとって原価低減と需要拡大が同時に進む好循環を意味します。
投資家視点で見ると、関西電力は高成長株ではないものの、政策と連動したリターンが期待できる典型的な中長期向け銘柄です。安定した配当を受け取りながら、原発再稼働の進展やエネルギー政策の明確化に伴う株価の評価修正を狙う戦略が考えられます。FIREを意識したポートフォリオにおいては、値動きの派手さよりも、キャッシュフローの安定性を重視する層に適した一銘柄と言えるでしょう。
大林組|副首都構想の現実化で存在感を高めるゼネコン
大林組は、日本を代表するスーパーゼネコンの一角として、国内外で数多くの大型プロジェクトを手がけてきた実績を持つ企業です。自民党と日本維新の会が推進する副首都構想は、東京一極集中の是正と都市機能の分散を目的としており、関西圏を中心とした大規模な都市再開発やインフラ投資を伴います。この流れの中で、大林組は政策テーマの中核を担う存在になり得ます。
とりわけ注目されるのが、大阪・夢洲(ゆめしま)の再開発です。夢洲は、IR(統合型リゾート)や万博関連施設、その後の都市機能整備まで見据えた長期プロジェクトであり、一過性の建設需要では終わりません。インフラ整備、公共施設、周辺再開発へと段階的に投資が続く構想であるため、技術力と実績を兼ね備えたスーパーゼネコンが果たす役割は大きく、大林組が重要なポジションを担う可能性は高いと言えるでしょう。
財務面を見ると、株価3,310円、配当利回り2.48%、PER15.63倍、PBR1.96倍、ROE12.65%、自己資本比率38.1%と、ゼネコンとしては比較的高い収益性と安定した財務体質を両立しています。建設業界は景気変動の影響を受けやすい一方で、大林組は大型案件を安定的に受注できる体制を整えており、業績の振れ幅を抑えやすい点が特徴です。
また、大林組の強みは国内インフラにとどまりません。北米・アジアを中心とした海外事業では、環境配慮型建築や高度な施工技術を武器に、収益源の分散を進めています。副首都構想や夢洲再開発による国内需要の積み上げと、海外事業による成長余地を併せ持つ点は、同社ならではの魅力です。
投資家視点では、大林組は短期的なテーマ株というよりも、政策と都市構造の変化を背景に、じっくりと企業価値が積み上がっていくタイプの銘柄と位置づけられます。配当によるインカムゲインを受け取りつつ、副首都構想や夢洲再開発の進展に伴う中長期的な評価向上を狙う戦略は、FIREを見据えた資産形成においても相性の良い選択肢と言えるでしょう。
3銘柄の財務指標比較
| 銘柄 | 株価 | 配当利回り | PER | PBR | ROE | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SGホールディングス | 1,471円 | 3.6% | 15.08倍 | 1.69倍 | 10.04% | 55.8% |
| 関西電力 | 2,506円 | 2.99% | 7.76倍 | 0.85倍 | 15.75% | 31.8% |
| 大林組 | 3,310円 | 2.48% | 15.63倍 | 1.96倍 | 12.65% | 38.1% |
安定配当重視ならSGホールディングス、割安性と政策レバレッジなら関西電力、成長テーマ重視なら大林組という棲み分けも可能です。
投資家として意識したい視点と注意点
政策連動型投資は、大きなリターンを狙える一方で、政治的な不確実性も伴います。政策実行のスピードや政局の変化によって、短期的な株価変動は避けられません。
そのため、単一銘柄に集中するのではなく、テーマを共有する複数銘柄への分散投資が現実的です。FIREを目指す方であれば、配当再投資を活用し、時間を味方につけた運用が有効でしょう。
まとめ|政治と投資を結びつける視点が資産形成を加速させる
自民党と日本維新の会の政策協調は、SGホールディングス、関西電力、大林組といった企業に、明確な投資テーマを与えています。
政治の動きを冷静に読み解き、企業価値と結びつけて考えることで、投資はより立体的になります。政策を見る目を一段深めるきっかけとなり、資産形成への意欲につながれば幸いです。