FIREとは何か?なぜ多くの投資家が目指すのか
FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、十分な資産を築くことで、労働収入に依存せず生活できる状態を指します。日本でも近年、株式投資や資産形成への関心が高まる中で、早期リタイアや働き方の自由を求める人たちから注目を集めています。
FIREの本質は、一発逆転ではなく再現性にあります。日々の支出を最適化し、余剰資金を長期投資に回し、複利の力を時間とともに味方につける。この地道な積み重ねこそが、FIRE達成者に共通する王道ルートです。
よく知られる指標に「4%ルール」があります。これは、年間生活費の25倍の資産を保有していれば、資産を取り崩しながらも長期的に生活できるという考え方です。たとえば、年間300万円で生活する場合、必要資産は7,500万円となります。決して簡単ではありませんが、投資によって現実的に目指せる水準でもあります。
このような背景がある中で、もし宝くじで7億円当たったら、一瞬でFIREできるのでは?と考える人がいても不思議ではありません。そこで次に、年末ジャンボ宝くじの実態を冷静に見ていきます。

年末ジャンボ宝くじの魅力と現実
2025年・年末ジャンボ宝くじの概要
2025年の年末ジャンボ宝くじは、11月21日から12月23日まで発売され、1枚300円で購入できます。抽選日は12月31日です。
1等は7億円、前後賞が各1億5,000万円で、合計10億円という非常に夢のある設定になっています。
さらに、2等は1億円、3等は1,000万円と高額当選枠も用意されており、もし当たれば人生が変わるという期待感は非常に強いものがあります。FIREを目指す人にとっては、資産形成のショートカットに見えるかもしれません。
しかし、投資家であればこそ、その裏側にある数字にも目を向ける必要があります。
当選確率と期待値という冷静な現実
年末ジャンボの1等当選確率は約2,000万分の1です。これは、長期投資における市場リスクとは性質がまったく異なり、現実的にはほぼ起きない前提で考えるべき確率といえます。
さらに重要なのが期待値です。宝くじは公共事業の財源となる仕組み上、還元率はおおよそ50%前後に設定されています。つまり、300円の宝くじを購入した場合、平均的に戻ってくる金額は約150円。数学的には、購入を続けるほど資産が減っていく構造になっています。
FIREを目指す過程では、夢よりも確率と期待値を重視する判断力が求められます。その視点で見ると、宝くじは資産形成の手段として極めて非合理的だと言わざるを得ません。
宝くじと投資をFIRE視点で比較する
ここで、年末ジャンボ宝くじと株式投資を、FIREの観点から整理してみましょう。
宝くじと投資の比較
| 項目 | 年末ジャンボ宝くじ | 株式投資(インデックス投資) |
|---|---|---|
| 期待値 | マイナス(約−50%) | プラス(年率5〜7%程度 |
| 再現性 | ほぼなし | 高い(誰でも市場平均を享受) |
| リスクの性質 | 外れればゼロ | 分散・時間でコントロール可能 |
| FIRE達成への貢献 | 当選時のみ一気に達成 | 計画的に段階的に近づく |
| コントロール性 | 不可 | 可(積立額・配分調整可能) |
FIRE達成者の多くが投資を選ぶ理由は明確。宝くじは夢を買う行為ですが、投資は確率を味方につける行為だからです。
たとえば、宝くじを毎年1万円分買い続けた場合、30年で30万円になります。これを年利6%で投資していれば、将来的には約60万円前後になります。この差は一見小さく見えても、長期では確実に効いてきます。
FIREを目指す人が宝くじを買うなら、どう考えるべきか
結論として、FIREを目指す上で宝くじを資産形成の手段として考えるのは合理的ではありません。再現性がなく、期待値がマイナスである以上、投資戦略として採用すべき理由は見当たりません。
ただし、宝くじを完全に否定する必要もないでしょう。年末ジャンボを数枚買い、「当たったらどう使おうかな~。」と考える時間は、人生のスパイスとしては悪くありません。私は毎年3枚(900円)だけネット購入しています。ワンチャンスに期待しエンターテインメントとして楽しむ時間はワクワクします。重要なのは、それが家計や投資計画に影響を与えない範囲であることです。
FIREとは、お金の不安から解放される生き方です。そのためには、感情ではなく仕組みで資産を増やす視点が欠かせません。宝くじを楽しみつつも、軸足はあくまで投資に置く。この距離感こそが、FIREを目指す人にとっての最適解だといえるでしょう。