電力インフラを支える企業は、派手さはないものの、長期投資では安定感が際立ちます。トーエネックは中部電力グループの一員として、長年にわたり電気設備工事を中心に事業を展開してきました。
本記事では、トーエネックの事業内容、直近決算、財務体質、配当金推移を整理し、FIREやインカム投資の観点から投資価値があるのかを考察します。

トーエネックの事業概要と強み
中部電力グループとしての安定基盤
トーエネックは1946年設立の総合設備企業で、中部電力グループに属しています。東海地方を中心に、電力供給を支える配電線工事や地中線工事を主力とし、社会インフラの中核を担ってきました。電力関連工事は景気変動の影響を受けにくく、安定受注が期待できる点が大きな特徴です。
多角化された設備工事と成長分野
同社は電力工事にとどまらず、屋内線工事、空調管工事、通信工事など幅広い分野を手掛けています。特にデータセンターや工場向けの設備投資、省エネ需要、5Gや光ファイバー関連工事は、今後も底堅い需要が見込まれます。さらに、再生可能エネルギー関連の設備設置にも注力しており、脱炭素の流れを追い風にできるポジションにあります。
2026年3月期第2四半期決算のポイント
売上微減でも大幅増益という中身の良さ
2026年3月期第2四半期の連結業績は、売上高1,247億円と前年同期比で1.7%減少しました。一方で、営業利益は85億円(同32.5%増)、経常利益は86億円(同47.3%増)、中間純利益は72億円(同151.9%増)と大幅な増益を達成しています。工事採算性の改善に加え、政策保有株式の売却が利益を押し上げました。
通期予想の上方修正が示す自信
通期では、売上高2,770億円、営業利益200億円、純利益150億円と増収増益を見込んでいます。利益面の伸びが売上以上に大きく、収益体質の改善が進んでいる点は評価できます。
財務体質とキャッシュフローの評価
自己資本比率と負債の改善
自己資本比率は44.0%と、一般的に健全とされる30%を大きく上回っています。有利子負債は減少傾向にあり、財務の安定性は年々高まっています。インフラ関連企業としては、十分に保守的な財務体質と言えるでしょう。
キャッシュフローは着実に改善
営業キャッシュフローは91億円のプラスと、前年同期比で増加しています。利益が数字だけでなく、現金としてもしっかり残っている点は長期投資家にとって安心材料です。
収益性・成長性・安定性の総合評価
過去12四半期で見える構造的な改善
過去12四半期を見ると、純利益率は明確に上向き、営業利益率も改善しています。ROEは8%台と、一般的な目安に近づいており、資本効率は安定的です。ROAはまだ高水準とは言えないものの、改善基調にあります。
売上とEPSの着実な成長
売上高は前年同期比で拡大傾向にあり、EPSも増加基調です。インフラ更新需要と設備投資需要が下支えとなり、急成長ではないものの、持続的な成長が期待できます。
株価チャート

トーエネックの株価が今年2倍になった理由は、利益構造の改善がはっきり見えたこと、通期予想の上方修正で信頼が高まったこと、財務改善で評価が切り上がったこと、増配による長期資金の流入といった、複数の要因が同時に噛み合った結果と言えます。
配当金推移と株主還元の魅力
配当金は回復から増配フェーズへ
トーエネックの配当金推移を見ると、一時的な減配はあったものの、直近は明確に回復・増配局面に入っています。
| 年度 | 年間配当金 |
|---|---|
| 2020年 | 30円 |
| 2021年 | 28円 |
| 2022年 | 27円 |
| 2023年 | 19円 |
| 2024年 | 40円 |
| 2025年 | 50円 |
| 2026年 | 52円(予想) |
2026年3月期は年間65円(中間28円、期末37円)を予定しており、株主還元姿勢は強まっています。
バリュエーションと利回り
株価1,905円時点で、予想PERは11.79倍、PBRは1.26倍、配当利回りは約3.4%です。インフラ関連の安定企業としては、割高感は強くありません。高配当株というより安定増配株に近い位置付けです。
トーエネックはどんな投資家に向いているか
トーエネックは、短期で株価上昇を狙う銘柄ではありません。一方で、安定した事業基盤、改善する収益性、増配傾向の配当を考えると、FIREを目指す人や配当収入を重視する投資家との相性は良好です。中部電力グループという後ろ盾と、インフラ更新・省エネ需要という長期テーマを併せ持つ点は、ポートフォリオの土台として安心感があります。
まとめ|地味だが堅実なインフラ銘柄
トーエネックは、派手さはないものの、業績・財務・配当のいずれも改善が進む堅実な企業です。インフラ投資と脱炭素という長期トレンドを背景に、今後も安定した収益が期待できます。高成長株ではなく、長期でじっくり資産形成を進めたい投資家にとって、有力な検討候補の一つと言えるでしょう。