高配当株投資やFIREを目指す過程で、本当に長く持ち続けられる銘柄とは何かという問いに直面する方は多いのではないでしょうか。
BTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)は、規制産業に属しながらも、依然として世界最大級のキャッシュマシンであり続けています。
本記事では、2025年決算と2026年配当方針を踏まえつつ、なぜBTIを保有し続けるという判断が条件付きで合理的なのかを整理します。

BTIとはどんな企業か
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(British American Tobacco、以下BAT)は、180か国以上で事業を展開する世界最大級のたばこメーカーです。
紙巻たばこを主力としながら、近年は加熱式たばこや無煙製品といった次世代製品への転換を進めています。
特徴は次の3点に集約できます。
- 規模の大きさによる価格決定力
- 高いキャッシュフロー創出力
- 株主還元を重視する経営姿勢
衰退産業と見られがちな分野でありながら、数字で見ると極めて安定的なビジネスモデルを維持している企業です。
2025年決算の全体像
まず、2026年2月12日に発表された、最新の決算から2025年の業績を整理します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 売上高 | 25,610百万ポンド(前年比+2.1%) |
| 調整後EPS | 352.8ペンス(+3.4%) |
| 営業キャッシュフロー | 6,342百万ポンド |
| フリーCF(配当前) | 4,048百万ポンド |
売上高は約256億ポンド(約5兆円)規模と、依然として巨大です。
数量減少という構造問題を抱えつつも、値上げと製品ミックスの改善により、収益は安定しています。
セグメント別の構成
| 区分 | 売上高 |
|---|---|
| 紙巻たばこ | 20,201百万ポンド |
| 次世代製品 | 3,621百万ポンド |
| 伝統的オーラル製品 | 1,043百万ポンド |
次世代製品は前年比+7.0%成長し、売上の約18%を占めるまでになっています。依存構造が徐々に変化している点は、長期投資を考える上で重要な変化と言えます。
配当の持続性という視点
2026年の配当方針は以下の通りです。
- 年間配当:2.4504ポンド
- 前年比:+2.0%増配
- 配当性向:約69%
高配当株において重要なのは、利回りの高さそのものではなく、配当が続くかどうかです。
配当性向が7割弱という水準は、無理な借金配当ではなく、本業の利益から捻出されていることを意味します。
FIREや資産形成を目的とする投資家にとって、この予測可能なキャッシュフローは、心理的な安定にも寄与しますね。
財務体質とキャッシュフロー
財務指標を見ると、ネット有利子負債/EBITDAは2.48倍で、会社目標レンジの2.0~2.5倍内と、管理可能な範囲に収まっています。
年間4,000百万ポンド(8500億円程度)超のフリーキャッシュフローがあり、配当と負債削減を同時に進められる構造です。
高配当株にありがちな配当維持のために借金が増える企業とは性格が異なり、あくまで本業の稼ぐ力を土台としています。
次世代製品は希望だが、万能薬ではない
2025年の次世代製品データは次の通りです。
- 売上高:3,621百万ポンド(+7.0%)
- 利益貢献:442百万ポンド(+77.1%)
- 無煙製品ユーザー数:3,410万人
利益貢献が大幅に向上し、数量が減る紙巻たばこを、価格と次世代製品で補うモデルが機能し始めています。
ただし現実的に見れば、
- 紙巻たばこの利益規模にはまだ遠い
- フィリップモリス(IQOS)など競合が強い
- 市場シェア争いは激しい
という課題も存在します。
次世代製品は成長エンジンというより、縮小を緩和する緩衝材として評価する方が現実的でしょう。
BTIのリスクは構造的逆風である
規制リスクは今後も強化される前提
各国では、
- フレーバー(味付き)禁止
- たばこ税の引き上げ
- 広告・パッケージ規制
- 将来的な販売制限・禁煙化
が段階的に強化されています。
先進国ではすでに喫煙率は構造的に低下しており、新興国も時間差で同じ道をたどる可能性が高いと考えられます。
これは一時的な逆風ではなく、戻らない需要減少です。
訴訟リスクは常在コスト
BTIは過去に、米国での訴訟やカナダでの和解、制裁違反関連の問題などで、多額の支払いを行ってきました。
この業界では訴訟リスクは常に存在しており、将来も突発的な費用が発生する可能性は否定できません。
ESG除外による株価評価の制約
たばこ株は多くのESGファンドや機関投資家の投資対象外です。
その結果、買い手が限られるためバリュエーションが上がりにくい、株価も長期的に評価されにくいという構造になります。
永遠の割安株である可能性は、同時に永遠に株価が上がらない銘柄である可能性も意味します。
長く持てる銘柄とは何を意味するのか
BTIは成長株ではありません。
むしろ次のような性格を持ちます。
- 事業規模は緩やかに縮小する
- 価格決定力で利益を維持する
- 配当によって資本を回収する
つまり、長期で成長を期待して持つ銘柄ではなく、長期で回収し続ける銘柄と位置づける方が正確です。
過去のたばこ株の歴史を見ても、配当は維持されても株価はじわじわ下落し、トータルリターンは限定的になりやすい傾向があります。
株価チャート(最大)

配当だけでなく株主還元全体を見る
現在のBTI(株価60ドル前後)では、
- 配当利回り:約5.3~5.5%
- 自社株買い:年13億ポンド規模
- 負債削減も同時進行
という形で、株主への還元を多層的に行っています。
BTIは、配当として現金を直接配るだけでなく、自社株買いで発行株数を減らし1株当たり価値を高め、なおかつ負債を減らして将来の財務リスクを下げるという3つを同時に進めています。
配当+自社株買い+財務改善を含めて考えると、株価が大きく上昇しなくても、実際の現金回収は着実に進んでいく構造を持っています。
ポートフォリオ上の位置づけ
BTIをFIREポートフォリオの中核に据えるのはリスクが高いと言えます。
理由は、産業そのものが構造的に縮小していくこと、規制と訴訟という非連続リスクを抱えていること、ESGによる株価評価の制約といったリスクを抱えているためです。
現実的な位置づけは、インデックスや分散型高配当ETFをコアとし、BTIはインカム補完のサテライト枠とする形だと思います。
まとめ:BTIは理解して持つ銘柄
BTIの数字を整理すると、
- 売上高:約256億ポンド
- 調整後EPS:352.8ペンス
- 2026年配当:2.4504ポンド(+2.0%)
- 次世代製品比率:約18%
BTIは、社会的評価が高い企業ではありません。しかし、投資とは理想論ではなく、現実との折り合いです。
需要の構造的縮小、規制と訴訟リスク、ESG逆風を織り込んだ上で、回収を目的として割り切って保有するのであれば、
BTIは今なお合理的な高配当株の一つと言えるでしょう。
FIREの本丸に据えるのは危険ですが、ポートフォリオの5~10%以内に抑えられる投資家にとっては、依然として十分検討に値する選択肢だと考えます。最後に余談ですが、私はタバコは一本も吸ったことがありません。(タバコ株は好きです。)
BTIからの2025年10月の配当金は税引き後10万円を超えました。そして2026年も増配です。

