住友ゴム工業は、ダンロップやファルケンのブランドで広く知られるタイヤメーカー。しかし、同社の魅力はタイヤだけでは語り切れません。120年にわたって蓄積してきたゴム技術を軸に、スポーツ用品から産業資材まで多彩な製品を展開する技術総合メーカーとしての側面を持っています。
この記事では、住友ゴム工業の事業内容や強み、最新決算のポイント、そして投資先としての魅力を、多面的に整理しながら紹介していきます。

住友ゴム工業とはどのような会社か
住友ゴム工業は1909年に創業。ゴム製品を中心に世界各地へ製品を提供し続けてきました。現在は欧米やアジアの拠点が強固に機能しており、海外売上比率はすでに7割を超えています。技術の蓄積によって高性能タイヤを中心とした競争力を維持しながら、スポーツ用品や産業資材といった分野にも展開を広げてきた点が、住友ゴム工業の大きな特徴です。
タイヤに使われるゴム素材は環境性能、安全性、耐久性のすべてに直結します。特にEVの普及が進む現在、低騒音や摩耗耐性といった新しいニーズが生まれ、人々の移動を支える技術の重要性は以前よりも増しています。こうしたモビリティの変化に対して、同社は最前線で技術を磨き続けています。
売上の柱となる3つの事業
住友ゴム工業の事業は大きく、タイヤ、スポーツ、産業品の三つに分かれています。
タイヤ事業は売上の大部分を占め、国内外で高い知名度を持つダンロップとファルケンのブランドが中心です。乗用車からトラック・バス用、さらに二輪車まで広いラインナップを展開しており、欧州で評価されるEV対応タイヤの開発力は同社の象徴的な強みとなっています。
スポーツ事業では、ゴルフクラブやテニスラケットといった用品を手がけており、競技レベルの高いユーザーにも支持されるブランド力があります。市場自体はやや成熟し落ち着いた動きではあるものの、愛好者の多いスポーツ領域で安定した需要が続いています。
産業品その他の事業は、高機能ゴム製品を生かした医療用手袋や建材、地震対策製品などを扱っています。近年は医療分野の需要が堅調で、2025年第3四半期は増益を確保しました。景気変動の影響を受けやすいタイヤ事業とは異なる安定した需要があり、企業全体のバランスを保つ存在になっています。
足元の業績推移と四半期の動き
2025年第3四半期の連結業績では、売上収益が前期比1.5%減の8,616億円となり、事業利益も485億円と前年を下回りました。しかし営業利益は461億円と301%増、純利益も260億円と大幅に伸びています。原材料価格の下落や円安の追い風が寄与し、収益性そのものは改善しています。
過去12四半期で見ても、売上高は概ね拡大基調を続けており、純利益率・営業利益率ともに前年から改善してきました。一方でROEやROAは依然として一般的な目安を下回る水準にあり、収益性はまだ発展途上といったところです。
通期見通しでは売上収益こそ下方修正されたものの、利益予想は据え置きとなりました。原材料価格の落ち着きや北米関税の影響緩和が利益面を支えており、配当予想についても増配を維持する姿勢が示されています。
財務面の安定性
住友ゴム工業の財務は、製造業としては比較的堅実な構造を保っています。自己資本比率は48.9%と安定的で、有利子負債の増加はあるものの、資産全体に対する過度なリスクとは見なされません。
キャッシュフローの変化では、営業活動によるキャッシュフローが大きく増えている一方、投資活動による支出が大幅に増加しています。これは欧州・北米・オセアニア地域におけるダンロップ商標権の取得など将来に向けた投資が進んだためで、結果として現金残高は1,020億円を確保しています。
健全性を維持しながら、必要な分野にはしっかり投資を行うバランスの取れた財務運営が続いていると言えます。
将来に向けた成長戦略
同社の長期戦略「R.I.S.E. 2035」では、ゴム素材の革新を軸に、環境配慮型製品やEV向けの技術開発を進めていく方針が示されています。
特に大きいのは、欧州・北米・オセアニアでダンロップ商標権を取得したこと。これにより、来年度以降はブランド使用料を含む収益が期待され、利益の底上げ要因になります。また、2027年までに300億円のコスト削減を実現する計画も立ち上がっており、生産性向上や原材料調達の効率化が進む見通しです。
これらの取り組みは短期的な数字に現れるものではありませんが、数年単位で企業価値を押し上げる柱になるものです。

株価は堅実に上昇中。
株主還元と投資指標
住友ゴム工業は安定した配当を続けており、近年は増配傾向も見られます。
配当金の推移
| 年度 | 配当金(円) |
|---|---|
| 2020 | 35 |
| 2021 | 55 |
| 2022 | 35 |
| 2023 | 58 |
| 2024 | 58 |
| 2025(予定) | 70 |
2025年は前期の58円から70円へ引き上げが予定されており、株主還元への姿勢はむしろ強まっている印象です。
投資指標を見ても、株価2,126円に対してPER12.42倍、PBR0.84倍と割安感があり、配当利回りも3%台を維持しています。資産価値に比べて市場からの評価が控えめで、将来の収益改善が期待される企業としては魅力的な位置づけと言えるでしょう。
投資指標(2025年11月時点)
株価:2,126円
配当利回り:3.29%
PER:12.42
PBR:0.84
ROE:1.54
PBRが0.8台と割安であり、資産価値に対して市場評価は低めです。配当利回りは3%を超えています◎。
住友ゴム工業が投資先として持つ魅力
住友ゴム工業の魅力は、単なるタイヤメーカーではなく、多角的なゴム技術のプラットフォームを持つ企業である点にあります。グローバル展開が進んでおり、海外市場から得る収益の比率が高いことで、長期的な成長余地も残されています。
一時的な業績の上下はあっても、技術投資や商標権の取得、コスト削減計画など、将来の利益を積み上げるための施策が着実に進められている姿勢は、長期投資の観点で見れば大きな安心材料になります。割安なバリュエーションと増配傾向を踏まえると、安定配当を受け取りながら中長期の成長を待つスタイルに向いた銘柄と言えるでしょう。