クレディセゾン(8253)は、「セゾンカード」「UCカード」に代表される国内大手のクレジットカード会社です。しかしその実態は、ペイメント事業だけの企業ではありません。ファイナンス、リース、不動産、グローバル展開などを含む、多角的な総合金融グループとして成長してきました。
この記事では、最新決算を踏まえた業績分析、財務の強みと弱み、そして投資家目線で見たクレディセゾンの魅力を深掘りします。

■ クレディセゾンとは|カードを中心に“多角化”で収益基盤を強化する企業
ペイメント事業が屋台骨、しかし「カード会社」に留まらない
クレディセゾンは1952年創業。信販業界の草分けとして出発し、現在は以下の主要セグメントで事業を展開しています。
- ペイメント事業(セゾンカード・UCカードなど)
- ファイナンス事業(融資・信用保証など)
- リース事業(設備・法人向けリース)
- 不動産関連事業
- グローバル事業
- エンタテインメント事業(※近年は撤退を進行)
特にペイメント事業は、国内2490万枚を超えるカードを発行し、純収益の柱となっています。キャッシュレス化の流れに乗り、QUICPayやスマホ決済強化が成長の後押しになっています。
興味深いポイントは、単なるカード発行会社ではなく、提携する小売店とのエコシステムを構築していることです。西武・そごうなどとの協業により、リアル店舗のデジタル化を支援し、ユーザーのカード利用頻度を高めています。こうした多角化は、景気変動に左右されづらい収益構造につながっています。
■ 最新決算(2026年3月期 第2四半期)|増収増益だが“利益は減少”
売上は伸びているが、グローバル事業の損失が重荷に
最新決算のポイントは次の通りです。
- 純収益:2,281億6,700万円(前年同期比 +16.2%)
- 事業利益:450億1,000万円(同 +12.5%)
- 中間利益:273億5,300万円(同 -3.8%)
ペイメント事業とファイナンス事業が好調で増収増益となった一方、グローバル事業の損失拡大が利益面を圧迫しました。
通期予想は下方修正
- 純収益:4,735億円(前回予想比 -1.1%)
- 当期利益:590億円(前回予想比 -12.6%)
海外事業の環境悪化や、アミューズメント事業(旧エンタテインメント)の撤退損失が影響しています。
■ 業績分析:過去12四半期の傾向から見える“強みと弱み”
〈収益性〉純利益率は低下、ROAは低水準
売上高とEPSは伸びていますが、純利益率が弱含みで推移しています。
- ROE:8〜10%付近(望ましい水準だが上昇力は限定的)
- ROA:5%を大きく下回る水準
収益性は安定しているとは言えず、変動が大きい点が課題です。
〈安定性〉自己資本比率が低下、有利子負債は増加
- 自己資本比率:15.1%(30%が目安の中でかなり低い)
- 有利子負債:前期比 +907億円
同社はカード会社の特性上、負債を活用した事業運営を行います。しかし現金等価物が44.7%減となっており、資金調達の依存度が高まりつつある点は注意が必要です。
〈成長性〉売上は伸長も、直近は勢いに陰り
- 売上高は前年比で伸びているが成長率は鈍化
- EPSは増加基調だが四半期の振れ幅が大きい
総じて、業績は増収だが利益率は改善しにくい構造にあります。ただしカード・ファイナンス事業は底堅く、長期的には成長余地があります。
■ 配当金の推移(10年)|FIRE勢が注目する“増配傾向”
クレディセゾンは適正かつ継続的な株主還元を掲げ、減配ゼロを継続しています。
<年間配当金の推移>
| 年度 | 配当金(円) | 前年比 | 利回り(当時) |
|---|---|---|---|
| 2016 | 52 | +4 | 約2.1% |
| 2017 | 56 | +4 | 約2.0% |
| 2018 | 60 | +4 | 約2.2% |
| 2019 | 70 | +10 | 約2.8% |
| 2020 | 70 | 0 | 約4.5%(株安) |
| 2021 | 80 | +10 | 約3.2% |
| 2022 | 90 | +10 | 約3.0% |
| 2023 | 100 | +10 | 約2.9% |
| 2024 | 120 | +20 | 約3.2% |
| 2025(予) | 130 | +10 | 約3.5% |
10年間の増配率は緩やかですが、右肩上がりの安定感があります。特に2020年のコロナショックでも減配しなかった点は、株主還元姿勢の強さを示しています。
■ 現在の株価指標(2025年11月21日時点)
最新の財務指標から、クレディセゾンは明らかな割安領域にあります。
- 株価:3,736円
- PER:9.28倍(金融セクター平均12倍より低い)
- PBR:0.76倍(解散価値以下)
- 配当利回り:3.48%
- ROE:9.41%
- 自己資本比率:15.1%
PBRが1倍を下回っている企業は、資産価値や事業価値を市場が適正に評価していないケースが多いです。同社の割安感は、グローバル事業の不振が市場に嫌気されている可能性が高く、長期投資家にとっては拾い場になり得ます。

■ クレディセゾンの投資魅力|なぜ今、注目する価値があるのか
魅力① 多角化により「カード依存」を脱却
ペイメント事業が中心でありながら、ファイナンス・リース・不動産を組み合わせることで景気変動の影響を抑えています。
魅力② 安定した増配と利回り3%超
FIREや配当再投資派にとって、10年以上の増配実績は非常に評価ポイントが高い。
魅力③ バリュエーションが割安
PER9倍台、PBR0.7倍台は、リスク要因を織り込み過ぎている可能性があります。
魅力④ キャッシュレス化の追い風
国内でのキャッシュレス比率の上昇は長期テーマであり、セゾンカードの利用頻度は今後も増える可能性が高いです。
■ 注意すべきリスク
グローバル事業の損失が続く可能性
自己資本比率が低く、有利子負債が増加傾向
利益率改善が見えにくい構造
これらが短期株価の重石になっている点は、押さえておく必要があります。
■ まとめ:長期の資産形成には「買い場」になり得る銘柄
クレディセゾン(8253)は、短期では利益率低下と海外損失が課題ですが、中長期の視点に立つと“割安・高配当・安定増配”の3拍子が揃う銘柄です。
- 多角化で安定収益を確保
- 増配基調で株主還元は厚い
- PBR0.76倍は市場の過小評価の可能性
現在の株価は、長期投資家にとって魅力的な水準といえます。投資材料の判断の一つになれば幸いです。