資産形成

証券担保ローンとは何か?FIRE民が知っておきたい仕組みと現実的な使い方

ここ最近、FIREを目指す投資家や、すでに達成した層の間で「証券担保ローン」がにわかに注目を集めています。

保有している株式を売却せずに現金を引き出せるため、譲渡所得税(いわゆる利確税)を発生させずに生活資金を確保できる点が最大の理由です。

株を売却すれば、利益に対して約20%の税金がかかります。しかし、売らずに借りることで、資産を市場に残したままキャッシュフローを得る。これは従来の4%ルールとは異なる、FIRE後の資産活用における新しい選択肢として注視されています。

一方で、この仕組みは万能ではありません。本記事では、証券担保ローンの基本から最新事情、FIRE民にとって実践的に役立つ使い方、そして向き・不向きまでを整理していきます。


証券担保ローンとは?基本的な仕組み

証券担保ローンとは、保有する株式・投資信託・債券などの有価証券を担保にして資金を借りるローンです。
株を売却するのではなく、あくまで担保として差し入れる点が最大の特徴です。

基本的な特徴

担保評価額の50〜80%程度まで借入可能(掛け目は銘柄や証券会社により異なります※後述)。株を保有し続けるため、配当金や株主優待は原則そのまま受け取れます。

資金使途は原則自由で、生活費や再投資、不動産の頭金などにも利用可能です。金利は変動金利が主流で、市場環境の影響を受けます。

金利水準(2025年時点)

2025年現在の証券担保ローン金利は、年1.9%〜4.4%程度が実勢レンジです。
日銀の金融政策正常化の影響もあり、数年前よりは上昇していますが、無担保ローンと比べれば依然として低水準にあります。


主な提供会社と制度上の注意点

証券会社特徴・補足
野村證券ネット完結型で利用者が多い
楽天証券2025年から本格展開、国内株中心
大和証券NISA残高は担保評価に含まれるが、直接担保設定は制限あり
SBI証券日本証券金融との提携商品が中心

特に大和証券については、NISA口座の資産が担保対象になると誤解されがちですが、NISA資産単体を自由に担保にできるわけではありません。主口座と合わせた包括担保として評価されるケースが多く、事前確認が必須です。


なぜ利確税を「ゼロ化」できるのか

FIRE後に資産を売却して生活費を確保すると、含み益に対して約20.315%の譲渡所得税が発生します。
証券担保ローンでは、売却という行為そのものを行わないため、この税金が発生しません。

株を売らないことで税金を繰り延べし、配当や値上がり益による複利効果を維持できる点は、米国富裕層の「Buy, Borrow, Die」にも通じる考え方です。


FIRE民が実践する代表的な活用パターン

生活費補完として必要最低限を借りる方法、あるいは相場状況に応じて借入と返済を調整する方法など、使い方は一つではありません。
重要なのは、株価が悪いタイミングで売却しないための時間を確保することです。

使用例①:相場下落期の売らないための生活費ブリッジ

想定シーン
・株式市場が大きく下落
・定期売却すると、安値で資産を削ることになる局面

使い方
生活費のうち、半年〜1年分を証券担保ローンで一時的に確保。
相場が回復するまで「売却を先送り」する。

なぜ有効か
FIRE後の最大の敵は、下落相場での強制的な取り崩しです。
証券担保ローンは、資産を売らずに時間を買うための道具として機能します。

ポイント
・借入は必要最小限
・回復局面で部分返済する前提
・恒常的な生活費補填にはしない

4%ルールの弱点を補完する、現実的な防御策


使用例②:高配当ポートフォリオ×利息相殺型運用

想定シーン
・配当利回り4〜5%程度の安定ポートフォリオを保有
・金利2〜3%台で借入可能

使い方
証券担保ローンで必要資金を調達し、利息は配当収入の一部で自然にカバーする。

なぜ有効か
実質的に「配当 > 金利」の状態を作れると、借入中でもキャッシュフローが回り続けます。

FIRE民向けの考え方
・元本を減らさず
・税金を発生させず
・生活資金を捻出する

これは、資産を取り崩すFIREから、活用するFIREへの転換とも言えます。

※もちろん、株価の変動や配当減、金利上昇の余地を織り込む前提は必須となります。


使用例③:まとまった支出を一時借入で吸収する

想定シーン
・住宅リフォーム
・車の買い替え
・子どもの教育費、親の介護費用
・FIRE後に発生する突発的な大型支出

使い方
一度に株を売却せず、証券担保ローンで一時的に資金を確保。
数年かけて、配当や余剰資金で計画的に返済。

なぜ有効か
FIRE後でも、「人生イベント」は突然やってきます。
そのたびに含み益の大きい株を売ると、税金+将来の複利を同時に失います。

証券担保ローンは、ライフイベントを資産売却に直結させないための緩衝材にもなり得ます。


守るべき3つのルール

証券担保ローンは、使い方次第で資産寿命を延ばす一方、誤れば大きなリスクにもなります。重要なルールを整理します。

借入比率は「最大枠」ではなく「平常時」を基準にする

借入可能額いっぱいまで使ってしまうと、相場下落時に追証や強制売却のリスクが一気に高まります。
FIRE生活と相性が良いのは、担保評価額の30〜40%程度を上限とし、平常時はさらに余裕を持つ運用です。

利息は配当で賄えるかを意識する

生活費すべてを借入に頼るのではなく、利息分は配当や分配金で自然に相殺できる状態を目指します。
これにより、借入中でも資産が自走している感覚を保ちやすくなります。

全資産担保は避ける

すべての株式を担保に入れてしまうと、相場急落時の選択肢が極端に狭まります。
一部は現金や非担保資産として残し、最悪時の逃げ道を確保することがFIRE後の安定につながります。


証券担保ローンが向いていない人の特徴

この手法は魅力的ですが、すべての人に適しているわけではありません。

相場下落時に強い不安を感じやすい人。
借金という形に心理的抵抗が大きい人。
資産の値動きを頻繁に確認してしまう人。
生活費に余裕がなく、借入依存になりやすい人。

これらに当てはまる場合、証券担保ローンはFIREの自由度を高めるどころか、精神的な負担を増やす可能性があります。

FIREの目的は、資産効率を極限まで高めることではなく、安心して暮らせる時間を増やすことです。
ストレスが増えるなら、その時点で戦略として再考すべきでしょう。


結論:選択肢として理解しておくことが最大の価値

証券担保ローンは、利確税を繰り延べしながら資産を活かすという点で、FIRE民にとって非常に有効なツールです。
ただし、それは主役ではなく、あくまで補助的な選択肢に位置づけるのが現実的です。

使わなくても成立するFIREを前提に、必要なときにだけ使える準備をしておく。

その姿勢こそが、FIRE後の資産戦略を成熟させてくれるでしょう。

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