株式投資

円高メリット銘柄5選|輸入コスト低下で恩恵を受ける注目株を解説

円高という言葉を聞くと、多くの投資家はまず輸出株に逆風というイメージを思い浮かべるかもしれません。確かに自動車や電機など、外貨建て売上比率が高い企業にとって、急激な円高は業績の重しになりがちです。

しかし一方で、円高は確実に恩恵を受ける企業群も存在します。特に日本企業は、エネルギーや原材料、食品原料などを海外から輸入しているケースが多く、円高はコスト構造を根本から改善する力を持っています。

本記事では、円高=輸入株有利という一般論にとどまらず、業績・財務・投資価値の視点から見た円高メリット銘柄5社を厳選して紹介します。FIREや長期投資を意識する方にとって、円高局面はむしろ仕込み時になり得えます。


円高が企業業績に与える本当の影響

円高は売上よりもコストに効く

円高の影響は、為替差損益という短期的な話に目が向きがちですが、長期投資の観点ではコスト構造の変化がより重要です。

輸入依存度が高い企業では、
・原材料費
・燃料費
・仕入価格

これらが円高によって着実に低下します。これは一時的な追い風ではなく、利益率の底上げという形で財務体質そのものに効いてくるのが特徴です。

インフレ時代だからこそ円高メリットは希少

近年は世界的なインフレを背景に、原材料価格の上昇が企業収益を圧迫してきました。そんな中での円高は、インフレ圧力を相殺する数少ない要因です。

つまり、円高メリット銘柄はコスト高に耐える企業ではなくコスト低下を利益に変えられる企業という点で、投資妙味が際立ちます。


円高メリットを享受する厳選5銘柄

① 日清製粉グループ本社|円高メリットが数字に表れやすい食品株

日清製粉グループ本社は、小麦など穀物の輸入比率が高く、円高が原材料コストの低下として極めて分かりやすく利益に反映される企業です。食品セクターの中でも、為替の影響をポジティブに受けやすい代表格と言えます。

配当利回りは3.22%と食品株としては高水準で、PER17.96倍、PBR1.08倍と、過度な割高感はありません。自己資本比率61.4%という財務の強さは、円高・円安いずれの局面でも安定した経営を可能にします。

円高局面ではディフェンシブでありながら利益が伸びる稀有な存在であり、長期投資家にとって安心感とリターンを両立しやすい銘柄です。


② 中部電力|円高メリットが最もストレートに効くバリュー株

中部電力は、LNGなど燃料輸入への依存度が高く、円高によるコスト低下が電力会社の中でも特に利益に直結しやすい銘柄です。円高=燃料費低下=収益改善、という構図が非常に明快です。

PER9.64倍、PBR0.61倍という指標は、すでに慎重な見方が株価に織り込まれている水準と言えます。配当利回りも2.96%と安定的で、ROE7.52%はインフラ企業としては堅実です。

円高が進む局面では、業績改善 × 割安是正の両面から評価されやすい銘柄であり、FIREを意識した安定収益ポートフォリオに組み込みやすい存在です。


③ 東京ガス|安定性を重視する投資家向けの円高恩恵銘柄

東京ガスはLNG輸入を主力とし、円高が進行すると調達コストの低下が着実に利益を押し上げます。大阪ガスと並ぶガスセクターの代表銘柄であり、生活インフラとしての強さが際立ちます。

PER11.63倍と水準は落ち着いており、PBR1.39倍はインフラ株としてはやや高めですが、自己資本比率44.8%と財務は安定しています。一方で配当利回りは1.57%と控えめで、インカム重視というより安定成長型の位置づけです。

円高による急成長を狙うというより、円高が下支えとして機能する銘柄であり、ポートフォリオの安定装置としての役割が期待できます。


④ 王子ホールディングス|高配当×円高メリットの現実解

王子ホールディングスは、紙・パルプ原料の多くを海外から調達しており、円高は原価低下として業績改善に寄与します。日本製紙と並ぶ製紙セクターの中でも、配当妙味が際立つ存在です。

配当利回りは4.33%と高く、PBR0.73倍と資産価値面でも割安感があります。PER15.34倍、ROE4.26%と収益性は高くありませんが、これは構造的に低収益になりやすい業界特性によるものです。

円高局面では、こうした低評価・高配当株が見直されやすく、インカム投資と円高テーマを両立したい投資家に向いた銘柄と言えるでしょう。


⑤ イオン|指標面の弱さを円高が補完する銘柄

イオンは、食品・衣料品・日用品など海外からの輸入比率が高く、円高による仕入コスト低下が利益率改善に直結します。総合スーパーの代表格として、円高時の恩恵は非常に大きい企業です。

イオンのPERが高い(約160倍超と極めて高水準)理由や自己資本比率が低い(約7%)背景として、グループ内にイオンフィナンシャルサービスなどの金融事業を抱えている影響が大きい点には注意が必要です。金融事業は一般的に負債が多く自己資本比率が低くなりやすいため、純粋な小売事業だけを見ると財務の印象が異なります。調整後指標(金融事業を除いた場合)では割安感が出てくるケースもあり、長期投資ではこの事業構造を理解した上で評価するのが適切です。ただし、配当利回りは低いため、高配当狙いではなく、円高によるコスト低下を通じたシェア維持・競争力強化を期待する銘柄として位置づけられます。

イオンが円高メリット銘柄として挙げられるのは、円高が利益改善余地を広げ、価格競争力を高めることで事業基盤の持続性を支えるからです。成長株というより、生活インフラ株としての長期視点が重要になります。


円高メリット5銘柄の指標一覧

銘柄名配当利回りPERPBRROE自己資本比率株価
日清製粉G3.22%17.961.087.04%61.4%1,860円
中部電力2.96%9.640.617.52%39.1%2,361円
東京ガス1.57%11.631.394.34%44.8%6,370円
王子HD4.33%15.340.734.26%41.8%832円
イオン0.56%162.065.632.74%7.6%2,452円

※2025年12月16日時点です。

セクター等比較一覧

銘柄セクター円高メリットの源泉配当利回り財務の安定性
日清製粉G食品原料輸入高め非常に高い
中部電力電力燃料輸入標準
東京ガスガスLNG輸入低め高い
王子HD製紙原料輸入高い標準
イオン小売商品輸入低い低め

円高メリット銘柄は逆張りではない

円高メリット銘柄への投資は、決して短期的な為替予想に賭ける行為ではありません。重要なのは、為替がどちらに振れても生き残る企業構造を見極めることです。

今回紹介した5社はいずれも、
・輸入コスト低下が利益に直結する
・事業そのものが生活・インフラに近い
・長期投資に耐える実績を持つ

という共通点があります。

円高局面は、不安よりも視野を広げる好機です。輸出株だけでなく、円高の裏側で価値を高める企業に目を向けることが、FIREや資産形成への近道になるかもしれません。

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