近年、日本でも資産形成を前提とした子育てという考え方が広がりつつあります。そんな中、2025年12月1日に、政府・与党が18歳未満の未成年にもNISAのつみたて投資枠を開放する方向で議論を進めている、いわゆるこどもNISA創設のニュースが報じられました。
ジュニアNISAが2024年で終了し、子ども向けの非課税制度に空白が生まれていたタイミングだけに、多くの親世帯や投資家から期待の声が上がっています。
私自身、日頃から資産形成やFIREについて発信していますが、今回のニュースには強い関心を覚えました。というのも、子どもが小さいうちから非課税で長期投資ができる仕組みは、親の家計に与えるメリットだけでなく、子ども自身の金融リテラシー形成にもつながる大きな意味を持つからです。
そこでこの記事では、政府が検討する「こどもNISA」の最新情報を整理しつつ、その背景や制度設計、ジュニアNISAからの進化ポイント、メリット・デメリットまでを解説します。さらに、FIREや長期投資に関心のある親世帯が、この制度をどのように活用できるのかも、私自身の視点から深掘りします。

「こどもNISA」創設が検討される背景
少子化対策と次世代への資産移転促進
現在、日本の出生率は1.2を下回り、国は子育てを経済面から支えるために多様な施策を打ち出しています。しかし、給付型の支援だけでは追いつかない現実もあります。
ここで注目されているのが、資産形成を通じた長期的な支援 です。
2025年4月、自民党の「資産運用立国議連」が NISAの対象を未成年まで広げる提言を首相に提出した のが制度検討の出発点となりました。これに基づき、
- 0〜17歳もつみたて投資枠の利用を可能にする
- 親が子ども名義で口座開設し積立できるようにする
- ジュニアNISAの問題を踏まえ、より柔軟な設計を目指す
といった方針が議論されています。
12月1日の最新報道では、12歳以降の柔軟な引き出しも解禁方向 とされ、教育費への対応力が強化される見通しです。
背景には、以下の流れがあります。
- 日本の家計金融資産は過去最大の2,239兆円
- しかし現金比率が高く、投資への参加が限定的
- 若年層の金融リテラシー格差が拡大
- 次世代への資産移転を促進したい国の思惑
FIRE志向の親御さんなら分かると思いますが、投資への早期接触が将来の選択肢を広げることは疑いようがありません。
制度の概要
ジュニアNISAから何が変わるのか?
現在の報道や提言ベースで「こどもNISA」の想定内容を整理し、ジュニアNISAとの比較表を作成しました。
(※2025年12月時点で制度は検討段階です。正式決定は来年の税制改正大綱以降)
【比較表:ジュニアNISAとこどもNISA(案)】
| 項目 | ジュニアNISA(2016-2023) | こどもNISA(検討中) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0〜17歳 | 0〜17歳(親が代理開設) |
| 投資枠 | 年80万円 | つみたて投資枠のみ(年120万円案) |
| 非課税期間 | 最長5年(18歳まで引き出し不可) | 無期限(12歳以降は柔軟に引き出し可) |
| 投資対象 | 株式・投信など広範囲 | 長期積立向け投信に限定 |
| 制度の課題 | 引き出し制限が強く利用率が低迷 | 金融教育と連動し普及を狙う |
特に重要なのは、
- 非課税期間が無期限になる見込み
- 12歳以降は目的に応じて引き出し可能
- 投資枠は現行NISAと同水準(年120万円)案
といった、ジュニアNISAの弱点を補う改革が盛り込まれている点です。
例えば、0歳から月1万円を積み立てるだけで、
- 元本:216万円
- 年利5%で運用した場合の総額:約350〜380万円
となり、大学進学資金や留学費用として強い選択肢になります。
メリット
子どもの「経済的自立」を後押しする仕組み
こどもNISAが注目される理由は、単なる非課税メリットだけではありません。
① 家計全体で非課税枠を最大化できる
親のNISA+子どものNISAを併用すれば、最大240万円のつみたて枠 を家族で使える可能性があります。
長期・積立・分散の効果は、投資家なら説明不要でしょう。
② 12歳以降の引き出しが可能で実用性が高い
ジュニアNISAのような凍結リスクがないため、
- 留学
- 塾代や教育費
- 医療費
などで柔軟に使えます。
③ 金融リテラシー教育が自然とできる
口座を子どもと一緒に確認したり、中学生から投資の話をするのは素晴らしい教育となります。
FIREを目指す親としては、金融教育は最大の投資と言っても過言ではありません。
④ 多世代での資産移転がスムーズになる
贈与税の年間110万円非課税枠とも相性が良く、祖父母 → 孫への資金移転を自然な形で実現できます。
デメリット・懸念点
理想が先行しすぎないよう冷静に判断する
制度の優位性が高い一方で、注意しておきたい点もあります。
① 格差拡大の懸念
投資余力のある家庭ほど活用しやすく、経済的弱者には届きにくい制度になる可能性があります。
② 親の管理負担
子ども名義であっても運用は親が実質担当となるため、
- リスク説明
- 市場下落時の対応
- 口座管理の二重負担
が生じます。
③ 制度開始時期の不透明さ
2026年度が有力なものの、政治的調整によって後ろ倒しになる可能性もゼロではありません。
これらを踏まえ、親が主導し、子どもが理解するという構造を作ることが重要だと私は考えています。
FIRE志向の親がどう活用すべきか
家族全体のポートフォリオに組み込む
投資に積極的な家庭であれば、こどもNISAを家族の資産マップの一部として活用できます。
● 投資対象
つみたて投資枠の対象になるのは長期投資向け投信が中心のため、王道はやはり以下のようなインデックスファンドです。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
低コスト・高分散の基本を徹底しましょう。
● 年齢に応じた積立設計
例えば以下のように設計すると、教育費のピークや家計のゆとりに合わせやすくなります。
- 0〜5歳:月5,000円
- 6〜12歳:月1万円
- 13〜17歳:月1.5万円〜2万円
シミュレーションとして、月1万円×18年×年利5% なら 約400万円 ほどに到達します。オルカンなら余裕を持って実現可能な設計です。
● FIRE計画との相性
こどもNISAは教育費としてだけではなく、子どもが成人後にバトンタッチする長期資産としても機能します。
家族全体で総資産の成長を見ていくと、FIRE計画の精度が一段上がります。
まとめ
家族の未来をつくる選択肢として検討する価値が高い
政府が検討する「こどもNISA」は、子育て支援と資産形成を融合させた新しいアプローチです。
- 非課税期間は無期限
- 12歳以降は柔軟に引き出し可能
- 家族の資産形成効率が高まる
といった魅力がある一方で、公平性や親の負担増などの課題もあります。
しかし、制度を正しく理解し、家庭の資産計画に組み込むことで、子どもの未来と家計の安定を同時に育てられる可能性があります。
このタイミングで、あなたも家族の資産形成を見直してみてはいかがでしょうか。
関連記事


