資産形成

日本航空(JAL)は今から投資対象になるのか?|業績回復・配当復活で見える投資価値を整理する

コロナ禍で大きな打撃を受けた航空業界。その中でも、日本航空(JAL/9201)は比較的早い段階から業績の立て直しに成功し、足元では回復から成長を意識できる局面に入りつつあります。


本記事では、日本航空の事業内容、直近決算のポイント、財務状況、配当金推移を整理し、長期投資・インカム投資の観点から投資価値があるのかを考えていきます。


日本航空の事業内容|単なる航空会社ではない収益構造

フルサービスキャリア事業

日本航空の中核は、国内線・国際線を展開するフルサービスキャリア事業です。
特に国際線では、インバウンド需要の回復に加え、日本発のビジネス需要も戻りつつあり、旅客数・単価の両面で改善が進んでいます。国内線では、柔軟なレベニューマネジメントにより収益性を高める運営が特徴です。

LCC事業

ZIPAIRなどを中心としたLCC事業は、価格志向の高い需要を取り込み、グループ全体の裾野を広げる役割を担っています。フルサービスとLCCを併せ持つ構造は、市況変動への耐性を高める要因の一つです。

マイル/金融・コマース事業

JALマイレージバンク(JMB)を軸としたマイル関連事業は、航空需要に左右されにくい安定収益源です。クレジットカード、ポイント交換、ECなどの展開により、航空会社という枠を超えたビジネスモデルを構築しています。


直近決算のポイント|業績は「回復」から「安定成長」へ

2026年3月期 第2四半期決算概要

2026年3月期第2四半期の連結業績は、明確な増収増益となりました。

項目数値前年同期比
売上収益9,839億円+9.1%
EBIT1,097億円+28.0%
中間利益676億円+35.6%

インバウンド需要の拡大、国内線需要の回復が業績を押し上げています。需要回復のみならず、利益成長率が売上成長率を上回っている点は評価ポイントです。


財務状況の改善|自己資本比率の回復が示す安心感

貸借対照表の変化

総資産は3兆545億円と前期末比で増加し、現金及び現金同等物は9,496億円まで積み上がっています。
資本は1兆2,491億円となり、親会社所有者帰属持分比率は39.5%まで改善しました。航空会社としては十分に健全な水準です。

キャッシュフローの状況

営業キャッシュフローは1,583億円のプラスと力強く、投資活動による支出を十分に賄えています。
過去12四半期を見ても、フリーキャッシュフローは増加する四半期が多く、財務体質は着実に強化されています。


収益性・安定性・成長性をどう評価するか

収益性

営業利益率、純利益率はいずれも前年同期比で改善しています。ROEは11%台と、一般的に望ましいとされる8~10%を上回る水準です。一方、ROAは5%を下回っており、資本集約型ビジネスの限界も見えますが、回復基調である点は前向きに評価できます。

安定性

自己資本比率は30%を超え、EPSも安定して増加しています。有利子負債が急増していない点も安心材料です。

成長性

売上高・EPSともに前年同期比で増加が続いており、インバウンド需要という中長期テーマを追い風に成長が期待できます。


配当金推移と株主還元姿勢|インカム投資としてどうか

配当金推移

年度年間配当
2020年55円
2021年0円
2022年0円
2023年25円
2024年75円
2025年86円
2026年(予想)92円

コロナ禍で無配となった期間はありますが、業績回復とともに急速に配当を戻してきています。

株主還元方針

年間配当予想92円、配当性向は概ね35%以上を目安とし、総還元性向50%程度を目指す方針です。加えて、最大200億円・800万株を上限とする自己株式取得も決議しており、株主還元姿勢は明確です。


株価水準とバリュエーションをどう見るか

現在の株価は2,929円。
指標は以下の通りです。

  • PER:11.12倍
  • PBR:1.24倍
  • 配当利回り:約3.14%
  • ROE:11.36%

成長株というより、回復後の安定期に入ったインカム寄りの銘柄として、バランスの取れた水準に見えます。

株価チャート

Googleより引用 25.12.25

ここ5年は上昇基調。


日本航空はどんな投資家に向いているか

日本航空は、短期の値幅を狙う銘柄というより、業績回復と配当成長をじっくり享受したい投資家に向いています。

インバウンドという構造的な追い風、安定した財務体質、明確な株主還元方針に加え、国内線・国際線で利用できる株主優待割引券という実用性の高い優待制度も魅力の一つです。

配当と優待の両方を享受できる点を踏まえると、生活や旅行と投資を結びつけたい投資家にとって、ポートフォリオの一部として検討する価値は十分にあるでしょう。


まとめ

日本航空は、コロナ後の回復局面を乗り越え、安定成長と株主還元を両立し始めています。
高成長株ではないものの、安心して保有し、配当を受け取りながら成長を待つ銘柄として、今後も注目しておきたい存在です。

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