日本特殊塗料(4619)は、派手さこそありませんが、確かな業績と財務基盤を積み上げてきた老舗メーカーです。
近年は収益性の改善が続き、自己資本比率は70%近い水準、ROEは約9%と、製造業として安定感のある数字を維持しています。
加えて利回り4.8%前後の高配当、そして20円増配の予定と株主還元も強化されています。私も300株長期ホールド中です。
本記事では、事業内容、財務、収益構造、成長性、そして投資価値まで掘り下げていきます。

日本特殊塗料とは|技術の蓄積が生んだ多角化企業
技術を起点に広がった事業領域
日本特殊塗料の創業は1929年。航空機用塗料の研究から始まった同社は、塗料という専門性を核に事業を拡大し、現在では以下の2つを柱にしています。
- 塗料関連事業
- 自動車製品関連事業(吸音材・遮音材など)
塗料から自動車部材まで展開する企業は多くありません。専門的な技術の蓄積が新たな高付加価値製品へと派生し、それが多角化を生み出した形です。この技術起点の多角化は、景気変動に強い収益構造をもたらしており、長期投資家にとって安心感の源泉となっています。
事業内容の魅力:塗料と防音材という「安定×成長」の組み合わせ
塗料関連事業:ニッチ分野で高い存在感を持つ
主力の塗料事業は、建築物・橋梁・航空機向けの機能性塗料が中心です。美観だけでなく、耐火、耐候、耐食といった高度な技術が求められる領域に強みがあります。
特に注目すべきは以下の点です。
- 航空機用塗料はボーイングやエアバスでも採用実績あり
- 建築向けではインフラ保護や遮熱など、SDGs領域で需要が拡大
- 付加価値が高いため、価格競争に巻き込まれにくい
汎用塗料とは一線を画した特殊塗料に特化している点が、安定的な収益源となっています。
自動車製品関連事業:EV時代でニーズが拡大
もう一つの柱である吸音材・遮音材などの防音関連製品は、トヨタ・ホンダなど国内大手メーカーに幅広く採用されています。
特にEVの普及で静粛性のニーズが高まっており、この事業はさらに存在感を増すとみられています。
- エンジン音が減るほど微細なノイズが気になるため吸音材の需要は増加
- 塗料技術を活かした「防錆×防音」の複合素材は競合優位性が高い
- 海外生産拠点への供給も進み、成長余地が大きい
製造業の構造変革とマッチした事業であり、今後の成長ドライバーとして期待できる領域です。
最新決算から見える強み:収益性・安定性・成長性の三拍子がそろう
ここからは、直近12四半期のトレンドや2026年3月期中間決算の内容を踏まえ、同社のファンダメンタルズを整理します。
収益性:純利益率・ROEが改善
- 純利益率:前年同期比で改善傾向
- 営業利益率:持ち直しつつある水準
- ROE:8〜10%と製造業として標準以上
- ROA:安定したレンジで推移
利益率の改善は、単なるコストカットではなく、付加価値の高い製品構成に寄る部分が大きい点が特徴です。
安定性:自己資本比率70%近く、有利子負債は減少
- 自己資本比率:69.2%(前期比+1.8pt)
- 有利子負債:減少基調
- EPS:前年同期比で増加
製造業として極めて健全な財務体質で、長期保有の安心感は抜群です。
成長性:売上・EPSが増加傾向、FCFも改善
- 売上高:前年同期比で拡大傾向
- EPS:力強く増加中
- FCF:前年同期比で改善
持続的に稼ぐ力が高まっている点は、バリュー株投資の観点からも評価できます。
中間決算(2026年3月期):一部減収でも純利益は増加
2026年3月期の中間数字は以下の通りです。
| 項目 | 金額 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 303億円 | -7.0% |
| 営業利益 | 16.4億円 | -14.4% |
| 経常利益 | 28.25億円 | -5.2% |
| 中間純利益 | 25.95億円 | +22.8% |
塗料事業の減収が影響したものの、固定資産売却益の計上で純利益は大幅増となりました。
キャッシュフローも健全
営業CFは前年のマイナスから一転してプラスに改善し、事業の実力値の回復が示されています。
- 営業CF:+20.5億円
- 投資CF:-20.1億円(主に設備投資)
- 財務CF:-24.2億円(配当・借入返済など)
短期で現金が減少したものの、長期的には問題のない水準。
来期見通し:減収でも増益、増配を予定
2026年3月期の会社予想(修正後)は以下の通りです。
- 売上高:605億円(前回予想比 -4.0%)
- 営業利益:30.5億円(+13.0%)
- 経常利益:56.5億円(+10.8%)
- 当期純利益:48億円(+20.0%)
売上は弱いものの、利益面の改善が続く見込み。製品ミックスの質が上がっていることが読み取れます。
配当の魅力:利回り4.8%、5年で配当「ほぼ3倍」
配当金推移(過去6年)
| 年度 | 配当金 |
|---|---|
| 2020年 | 40円 |
| 2021年 | 38円 |
| 2022年 | 40円 |
| 2023年 | 42円 |
| 2024年 | 46円 |
| 2025年 | 90円 |
| 2026年 | 110円(予想) |
2025年の大幅増配は利益の改善と財務余力の高さによるもので、今後も高水準の還元を継続できる体力があります。
現在の株価2,257円を基準にすれば、利回りは約4.8%。PER 10.2倍、PBR 0.85倍という割安感もあり、高配当バリュー株としてバランスの取れた位置にあります。
株価チャート
安定した上昇トレンドを示すチャートです。

日本特殊塗料は投資対象としてどうか|まとめ
日本特殊塗料は、以下の点で投資妙味のある企業です。
●多角化が効いた景気耐性の高い事業構造
●高付加価値領域に特化した特殊塗料技術
●EV時代に伸びる防音材事業の成長性
●自己資本比率70%、ROE9%前後という安定感
●増配基調と利回り4.8%の高配当
●割安なバリュエーション(PER10倍・PBR0.8倍台)
売上はやや弱含んでいますが、収益性は改善が続き、長期目線では堅実に利益と配当を積み上げるタイプの企業です。
派手な成長株ではありませんが、FIRE志向の投資家や配当重視の投資家にとって、ポートフォリオの中核を支える優良株と言えるでしょう。
関連記事

