資産形成

脱デフレ日本で「買われる株」が変わった理由|インフレ・ROE・PBR改善の視点

日本株投資を続けていると、ここ数年で市場の空気が確実に変わったことに気づくはずです。
成長ストーリーだけでは評価されにくくなり、稼ぐ力・還元する姿勢・資本効率が、より厳しく見られるようになりました。

背景にあるのが、日本経済の脱デフレと、緩やかなインフレ環境への移行です。
この記事では、なぜ今買われる株が変わったのか、その構造的な理由と、インフレ時代に強い内需株の選び方を整理していきます。


脱デフレは、物価上昇ではなく「評価軸の転換」

デフレ経済が前提だった日本株の世界

長らく日本は、低成長・低金利・低インフレの世界にありました。
この環境では、多少無理をしてでも売上を伸ばす企業、海外成長を取り込む企業が評価されやすく、資本効率や株主還元は後回しでも許容されてきました。

しかし、2025年以降の日本経済は様相が異なります。

政府・日銀の公式見解は慎重ながらも、需給ギャップはプラス圏に入り、民間推計では実質的なデフレ脱却局面に入ったという見方が広がっています。

脱デフレとは、単に物価が上がることではありません。
企業が価格転嫁を行い、利益を確保し、その利益をどう使うかが問われる時代に入った、という意味を持ちます。


インフレ環境で問われる「ROE」という数字

ROEは経営の覚悟を映す指標

インフレ局面では、現金を寝かせておくだけで実質価値は目減りします。
そのため、企業にはこれまで以上に資本を効率よく使う経営が求められます。

ここで重要になるのがROE(自己資本利益率)です。

ROEが上昇している企業は、

  • 利益率の改善
  • 不採算事業の整理
  • 適切な設備投資やM&A
  • 自社株買いを含む資本政策

といった経営の意思決定が伴っているケースが多く、単なる業績好調とは一線を画します。

実際、2025年以降の日本株市場では、ROEの持続的改善が見られる企業ほど、下落局面でも相対的に強い傾向が見られます。


株主還元は余裕ではなく「評価対策」になった

配当・自社株買いが当たり前になる時代

日本企業は長らく、内部留保を厚く積み上げる経営を続けてきました。しかし、インフレ下では使われない資本は評価されません。

2023年以降、東京証券取引所が強く求めてきた資本コストと株価を意識した経営は、2025年時点で明確な成果を出し始めています。

特に目立つのが、

  • 配当性向の引き上げ
  • DOE(自己資本配当率)の導入
  • 継続的な自社株買い

といった、株主還元の制度化です。

これは一時的なブームではなく、市場から評価され続けるための必須条件になりつつあります。


PBR改善は内需株再評価の引き金

なぜPBR1倍割れが問題視されるのか

PBR(株価純資産倍率)は、企業が市場からどう見られているかを示す指標です。
PBR1倍割れは、会社を解散した方が価値が高いと評価されている状態とも言えます。

東証の要請をきっかけに、多くの企業が

  • なぜPBRが低いのか
  • どう改善するのか
  • 数値目標をどう置くのか

を説明するようになりました。

この流れで再評価されやすいのが、内需株です。


実質賃金上昇と内需株の相性

消費回復の恩恵を最も受けるのは誰か

2025年時点では、実質賃金はまだ不安定ですが、
所定内給与は着実に上昇しており、2026年以降の改善が視野に入っています。

実質賃金が上向けば、

  • 国内消費は緩やかに回復
  • 値上げを受け入れる余地が生まれる
  • サービス・インフラ・金融の収益が安定

といった循環が生まれます。

この恩恵を直接受けるのが、内需に根ざした企業です。
為替に左右されやすい輸出株と比べ、収益の見通しが立てやすい点も、
長期投資・FIRE層にとっては大きな魅力になります。


インフレ時代に注目したい内需株の条件

ここで、脱デフレ環境で評価されやすい内需株の特徴を整理しておきます。

視点注目ポイント
収益性ROEが中長期で改善傾向にある
資本政策配当・自社株買いを明確に示している
バリュエーションPBR改善を経営目標に組み込んでいる
ビジネス国内需要に価格転嫁できる力がある

一時的なテーマ株ではなく、構造変化の恩恵を受け続ける企業かどうかを見極めることが重要です。

内需株の具体例と選定ポイント

内需株を選ぶ際は、ROE向上やPBR改善の進捗をチェックしつつ、実質賃金上昇による消費波及を考慮します。

例えば、日本製鉄は粗鋼生産の国内首位で、2031年利益1兆円目標が魅力です。伊藤忠商事は収益の多角化が進み、2026年純利益最高更新の見込みです。こうした銘柄は、インフレ下で価格転嫁力が強く、株主還元も積極的です。

以下に、2026年有望な内需株の例を表でまとめました。選定基準は、ROE10%以上、PBR1倍以上、株主還元強化の企業を中心にしています。

銘柄名業種ROE(2025年推定)PBR(現在)特徴
伊藤忠商事商社15.2%1.8倍非資源分野中心、配当性向40%以上
日本製鉄鉄鋼12.5%1.2倍内需中心の生産拡大、自社株買い積極
千代田化工建設建設188.95%2.5倍高ROEで効率化進む、内需インフラ需要
川崎汽船海運10.8%1.5倍DOE重視の高配当、内需物流強化
テクマトリックスIT18.7%2.1倍DX関連の高成長、ROE改善+配当性向40%以下

これらの銘柄は、脱デフレの恩恵を最大限に受けやすい点が共通していますが、投資は個別リスクを考慮し、分散を心がけてくださいね。


まとめ:脱デフレは投資家にとって「追い風」でもある

脱デフレ日本では、どの業界が成長するか以上に、どの企業が資本と真剣に向き合っているかが問われる時代になりました。

インフレ対応、ROE向上、株主還元、PBR改善。これらを同時に進められる企業は多くありません。

だからこそ、内需株の中にも、これから評価を高めていく銘柄が残されています。

短期的な値動きに振り回されず、構造変化の本質を捉えた投資を続けることが、FIREや長期の資産形成において、何よりの武器になるはずです。

市場が変わるとき、勝ち方もまた変わります。その変化に、少し早めに気づけるかどうか。
今は、そんな分岐点にあるように感じています。

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