半導体関連株の中でも、装置メーカーや材料メーカーほど派手さはないものの、確実に業界の基盤を支えている企業が存在します。フェローテックは、まさにその代表例と言える企業です。
本記事では、フェローテックの事業内容、直近の業績動向、財務状況、配当金推移を整理しながら、FIREや資産形成を意識した投資家目線で、投資価値があるのかを考えていきます。

フェローテックの事業内容|半導体業界を下支えする縁の下の力持ち
半導体等装置関連事業が中核
フェローテックは1980年創業の企業で、主力は半導体製造装置向け部品の製造・販売です。真空シール、石英製品、セラミック製品など、半導体製造工程で不可欠な部品を幅広く手掛けています。特に磁性流体技術を応用した真空シールは、同社の競争優位性を支える重要な技術です。
半導体は製造環境の精度が極めて重要であり、装置の安定稼働を支える部品メーカーの存在感は決して小さくありません。フェローテックは装置メーカーのパートナーとして、半導体需要の拡大を間接的に取り込む立ち位置にあります。
電子デバイス・車載関連事業にも展開
電子デバイス事業では、サーモモジュール(熱電変換素子)やパワー半導体用基板を展開しています。これらはデータセンター、EV(電気自動車)、再生可能エネルギー分野など、今後も成長が見込まれる領域と親和性が高い分野です。
車載関連事業ではEV向け部材の比重が徐々に高まっており、半導体一本足ではない事業構造を持っている点は評価できます。一方で、依然として半導体市況への依存度は高く、市況変動の影響を受けやすい点は認識しておく必要があります。
直近12四半期の業績評価|数字が示す厳しさ
収益性は明確に悪化傾向
過去12四半期を俯瞰すると、フェローテックの収益性は悪化傾向が続いています。営業利益率・純利益率ともに前年同期比で低下が続き、直近期も力強い回復には至っていません。ROE・ROAも一般的に望ましい水準を下回っており、稼ぐ力が一時的に弱まっている状況です。
これは半導体市況の調整局面に加え、為替要因や補助金収入減少など、外部要因の影響も大きいと考えられます。
成長性も踊り場にある
売上高は前年同期比で伸び悩み、横ばいからやや弱含みの動きが続いています。EPSも増減を繰り返しており、成長の持続性という点では物足りなさが残ります。フリーキャッシュフローも安定せず、投資フェーズと回収フェーズが交錯している印象です。
2026年3月期中間決算の内容を読み解く
2026年3月期中間決算では、売上高1,409.8億円(前年同期比4.3%増)と増収を確保しました。半導体等装置関連事業や電子デバイス事業が堅調だった点は評価できます。
一方で、経常利益は129.23億円(同16.5%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は63.08億円(同31.4%減)と大幅な減益となりました。主因は為替差損の計上と、中国での補助金収入減少です。事業自体が崩れているというより、外部環境に振らされた決算と言えるでしょう。
財務状況とキャッシュフロー|安定性はやや低下
貸借対照表の変化
総資産はほぼ横ばいで推移していますが、負債は増加し、純資産は減少しました。その結果、自己資本比率は39.4%から37.0%へ低下しています。30%は上回っているものの、余裕が縮小している点は気になります。
キャッシュフローの動き
営業キャッシュフローは大幅に改善しており、本業の現金創出力自体は回復の兆しが見えます。ただし、設備投資の拡大により投資キャッシュフローは大きなマイナスとなり、財務キャッシュフローでは積極的な資金調達が行われています。成長に向けた投資局面である一方、借入依存度が高まっている点は注意が必要です。
配当金推移と株主還元|インカム投資家には魅力的
フェローテックの配当姿勢は、ここ数年で大きく変化しています。
| 年度 | 年間配当 |
|---|---|
| 2020年 | 24円 |
| 2021年 | 30円 |
| 2022年 | 50円 |
| 2023年 | 105円 |
| 2024年 | 100円 |
| 2025年 | 141円 |
| 2026年 | 148円(予想) |
直近では減益局面にもかかわらず増配を継続しており、株主還元への意識は明確です。株価4,935円前後で利回り約3.0%、PER14.44倍、PBR1.04倍という水準は、半導体関連株としては過度な割高感はありません。
株価チャート

フェローテックの株価は今年約2倍になりました。その理由としては、半導体の回復期待、連続増配による評価軸の変化、割安過ぎた評価の修正といった理由が考えらえます。それでも割高感はまだありません。
フェローテックはFIRE向きか|投資価値の結論
フェローテックは、短期的な業績だけを見ると不安材料が多い企業です。収益性の低下、自己資本比率のじり安、有利子負債の増加など、守りの面ではやや弱さが見られます。
一方で、半導体業界の中長期的な成長、装置関連という比較的安定したポジション、そして積極的な増配姿勢は大きな魅力です。FIREを目指す投資家にとっては、主力に据える銘柄ではなく、配当を得ながら半導体回復を待つ準主力としての位置づけが現実的でしょう。
市況回復と為替環境の改善が進めば、業績の戻り余地は十分にあります。フェローテックは、時間を味方につけられる投資家に向いた銘柄だと感じています。
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