資産形成

子なし夫婦がFIREするための必要資産は?3,000万〜9,000万円の現実値を解説

FIRE(Financial Independence, Retire Early)が一般化し、「経済的自立と早期退職」はもはや一部の人だけの概念ではなくなりつつあります。その中でも、子どものいない夫婦は「どれくらいの資産があれば会社員生活から卒業できるのか?」という問いに対し、より現実的な検討を進めています。単身世帯とは支出規模が異なり、子育て世帯とも構造が異なるため、独自の試算が必要です。

本記事では2025年時点のデータを踏まえ、生活費・年金受給額・インフレ率・医療リスクを含めた「逆算型FIRE戦略」を提示します。


子なし夫婦の生活費と支出構造

FIREの目標金額を正確に算出するためには、「どの水準の生活費を長期間維持したいのか」を先に定義する必要があります。

総務省家計調査(2025年11月公表)によれば、子どものいない夫婦の生活費平均は月約28.7万円です。教育費が不要な一方で、旅行・娯楽・外食などゆとり費が増える傾向があります。都市部で生活する場合は平均より+3万円、地方では-2万円程度が目安です。


子なし夫婦の平均生活費(2025年推計)

項目月額平均(円)年額(円)補足
住居費90,0001,080,000賃貸 or 住宅ローン
食費65,000780,000外食頻度で変動
光熱水費27,000324,000電気代上昇基調
通信・交通費22,000264,000リモート普及で削減余地
医療・健康費17,000204,000加齢で増加
娯楽・交際費27,000324,000FIRE後は最重要項目
その他22,000264,000自己投資・雑費

合計:月270,000円(年3,240,000円)が一つの目安となります。もちろん、生活環境によって幅は広くなります。


FIRE試算の注意点:退職後コストの増加

FIRE後の支出は、現役時代より一定・安定とは限りません。特に子なし夫婦は、老後支援や介護の担い手が限定されるため、医療・介護費の想定は必須です。


注視すべき2つのリスク

  1. 医療費・介護費が増えやすい
    • 厚労省推計:夫婦で生涯1,200万円超の可能性
    • 先進医療・長期入院は保険適用外
  2. 年金価値は徐々に低下する
    • マクロ経済スライドの影響で実質価値が減少
    • 想定受給額:夫婦合計 月22〜27.7万円(平均25.3万円)

※働き方・加入期間・収入・保険料の納付状況によって年金の金額は変動。国民年金は必ず納付、厚生年金加入期間をできるだけ確保することを想定しています。


年金を考慮したFIRE逆算例(2025年版)

以下は、インフレ率2.5%年金月25.3万円を前提とし、生活水準を維持した場合の試算です。計算ルールは、米国の4%ルールを安全性重視で調整した日本版3.5%ルール(必要資産 = 年間生活費 × 28倍) を使用します。


FIRE必要資産額試算表

シナリオ年間生活費(調整後)年金収入(年)不足額(年)必要資産額(3.5%ルール)
標準(月27万円)396万円303.6万円92.4万円約2,587万円 + 医療600万円 = 3,187万円
ゆとり(月32万円)475万円303.6万円171.4万円約4,799万円 + 医療600万円 = 5,399万円
贅沢(月42万円)630万円303.6万円326.4万円約9,139万円 + 医療600万円 = 9,739万円

注目すべきポイント

FIREを考える際に押さえておきたい重要なポイントとして、まず「年金を前提にするかどうか」で必要資産額が大きく変わるという点があります。年金受給を組み込んだ場合、現実的なFIRE達成ラインはおおむね3,000万〜6,000万円台となりますが、受給開始前までを完全無収入で生活することを想定すると、必要額は7,000万〜1億円規模へと跳ね上がります。そのため、自身の働き方・収入想定・年金受給時期を含めた長期的設計が不可欠です。


子なし夫婦に適したFIRE戦略

① 固定費削減の余地が大きい

子どものいない夫婦においては、戦略次第で資産形成と支出設計の自由度が高い点が特徴です。まず固定費削減の余地が大きく、地方移住によって家賃を月4〜6万円程度まで抑えられる可能性があるほか、自家用車を持たない、もしくは1台に集約することで年間コストを大幅に削減できます。さらに、サブスクや保険の見直しも高い効果が期待できます。

② 趣味・スキルを収益化しやすい

趣味やスキルを収益化しやすいという利点もあります。たとえば、登山経験を生かしてガイドとして活動したり、英語力を用いてオンライン講師になるなど、自分が既に関心・知識を持つ領域から収入を得る選択肢が多様です。ペットケアやデザインスキルによる在宅副業も十分に成立可能な領域です。月5〜10万円程度の継続収入でも、必要な資産額は数千万円単位で軽減できるため、働き方との組み合わせは非常に有効です。

③ 経験価値を人生の中心に置ける

FIRE後の暮らし方として「経験価値」を中心に置くことができる点も魅力です。健康寿命を意識した生活設計や、海外でのロングステイ・ノマド的な暮らし、そして学び直しやリスキリングなど、人生の質を向上させる活動に集中しやすくなります。


FIREは「貯める」から「設計する」時代へ

以下の3本柱が効果的です。

  1. インデックス投資を軸にする
    eMAXIS Slim、全世界株式、S&P500等
  2. 高配当偏重は避ける
    → 税負担・成長力低下リスク
  3. 家計を常に可視化する
    → 家計簿ではなく「年間予算表」管理へ

まとめ:子なし夫婦のFIRE目標額は3,000万〜9,000万円が現実的

ライフスタイル推奨FIRE目標生活イメージ
ミニマル3,000万〜4,000万円地方・倹約型
バランス型4,500万〜6,000万円旅行・外食適度
ゆとり・贅沢型8,000万〜1億円都市部・妥協なし

最後に(提案)

FIREの目的は「仕事を辞めること」ではなく、夫婦の人生設計の自由度を最大化することです。

そのため、私が推奨するのは、段階的セミFIRE(収入比率を徐々に調整する働き方転換)です。

次のステップとして、ぜひ次の3点を具体化してください。

  1. 月平均生活費の把握
  2. 年金見込み額の確認(ねんきんネット活用)
  3. 65歳基準ではなく 50歳時点基準で逆算する

二人で人生を設計できることこそ、最大の価値ですね。

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