新NISAが始まって以来、SNS上ではNISAというワードを多く見かけるようになりました。
しかし実際には、所得や税率によってはiDeCoの方が圧倒的に有利になるケースがあります。
特に、年収が上がるほどiDeCoの節税メリットが拡大する仕組みになっており、「拠出時の所得控除」がどれだけ効くかが、最終リターンを大きく左右します。
私自身も複数のシミュレーションを行った結果、手取り300万円でもiDeCoが優位、年収400万円を超えるとその差はさらに広がるという明確な傾向が出ました。
本記事では、同じ運用条件(毎月2.3万円×20年・年利5%)で「iDeCo」と「新NISA」を徹底比較。
実際の税率を踏まえ、年収別にどのくらい差がつくのかをわかりやすく解説します。

新NISAとiDeCoの基本比較:どんな人に向いてる?
| 項目 | 新NISA(2025年仕様) | iDeCo(企業型年金なし) |
|---|---|---|
| 対象者 | 18歳以上、日本居住者 | 20歳以上65歳未満(2022年改正) |
| 年間上限額 | 360万円(つみたて120万+成長240万) | 月2.3万円(年27.6万円) |
| 生涯上限 | 1,800万円(売却で枠復活) | なし |
| 税優遇 | 運用益・配当非課税(無期限) | 拠出時全額所得控除+運用益非課税+受取時退職所得控除 |
| 引き出し | いつでもOK | 原則60歳以降(最長75歳まで運用可) |
| 手数料 | 基本無料 | 月171円〜数百円(金融機関による) |
| 向いてる人 | 流動性重視・ライフイベント多い人 | 節税重視・老後資金専用で貯蓄苦手な人 |
出典: 金融庁「NISA・iDeCo公式ガイド2025」
どちらの制度も「非課税」で資産を増やせる点は共通していますが、目的と使い勝手がまったく異なります。
新NISAは「いつでも引き出せる柔軟性」が最大の強みで、ライフイベントや資産形成の初期段階に向いています。
一方のiDeCoは「節税メリットが圧倒的」で、長期的に老後資金を確実に積み上げたい人に最適です。
つまり、短中期の資産形成ならNISA、長期の老後資金ならiDeCo。
この2つをどう組み合わせるかが、今後の資産設計の鍵になります。
シミュレーション①:手取り300万円
税率:所得税5%+住民税10%=15%
iDeCoの控除効果は年4.14万円(2.3万×15%×12)。
〈条件〉
月拠出:2.3万円
運用期間:20年
年利回り:5%(MSCI ACWI長期平均)
運用商品:eMAXIS Slim 全世界株式
結果(20年後)
| 項目 | iDeCo | 新NISA | 差額(iDeCo優位) |
|---|---|---|---|
| 月拠出額 | 23,000円 | 23,000円 | ― |
| 総拠出額(20年) | 552万円 | 552万円 | 0 |
| 将来価値(税引前) | 933万円 | 933万円 | 0 |
| ①拠出時の所得税・住民税還付 | +82.8万円 | 0 | +82.8万円 |
| ②受取時の税金 | 0円(退職所得控除内) | 0円 | 0 |
| 手取り額 | 1,016万円 | 933万円 | +83万円 |
🧾 受取時非課税の根拠
退職所得控除(20年勤務相当)= 800万円となりますが、運用益は 381万円と 利益が控除800万円を下回るので、 全額非課税となります。
💡結論:iDeCoが約83万円の優位!
- 新NISA:運用益が非課税
- iDeCo:拠出時+運用益+受取時の三重の節税効果
月23,000円の積立なら節税面なら iDeCo一択 と言っても良いレベルです。〈20年をかけて合計約82万円が還付されるので。〉
シミュレーション②:手取り400万円なら?
税率:所得税10%+住民税10%=合計20%
iDeCo控除効果:23,000円 × 12 × 20% = 年間 5.52万円→ 20年間の累計節税額= 約110.4万円
結果(20年後)
| 項目 | 手取り300万 | 手取り400万 |
|---|---|---|
| 総拠出額 | 552万円 | 552万円 |
| 将来価値(税引前) | 933万円 | 933万円 |
| iDeCo拠出時還付 | 82.8万円 | 110.4万円 |
| iDeCo受取時税金 | 0円 | 0円 |
| iDeCo手取り | 1,016万円 | 1,043万円 |
| 新NISA手取り | 933万円 | 933万円 |
| 差額(iDeCo優位) | +83万円 | +110万円 |
🟩解説
年収が上がるほど所得控除の効果が大きくなり、iDeCoの節税メリットは増加します。
しかし、iDeCoは60歳まで引き出し不可で、途中売却や再投資の柔軟性がありません。
対して、新NISAはいつでも売却・再投資が自由。
「節税の即効性」ならiDeCo、「資産効率と柔軟性」なら新NISAと言えるでしょう。
シミュレーション③:年収が高いほどiDeCoの節税効果は拡大!
iDeCoの最大の魅力は掛金が全額所得控除になることです。
つまり、所得税・住民税を払うほど、その分だけ節税メリットが大きくなります。
| 手取り年収の目安 | 合計税率(所得税+住民税) | 節税額(20年間) | 結果 |
|---|---|---|---|
| 約300万円 | 約15%(所得税5%+住民税10%) | 約83万円の得 | iDeCo優位(小) |
| 約400万円 | 約20%(所得税10%+住民税10%) | 約110万円の得 | iDeCo優位(中) |
| 約550〜680万円 | 約30%(所得税20%+住民税10%) | 約165万円の得 | iDeCoさらに優位 |
| 約700万円以上 | 約33%(所得税23%+住民税10%) | 約180万円以上の得 | iDeCoが圧倒的優位 |
✅ 結論
年収が上がるほどiDeCoの優位性はどんどん拡大します。
新NISAも運用益が非課税という大きなメリットがありますが、iDeCoは「拠出時」「運用時」「受取時」の三重の非課税メリットがあるため、
所得が高い人ほど効果が大きくなります。
最終結論:iDeCoと新NISA、どっちが得?
ここまでの比較をまとめると以下となります。
| 比較項目 | iDeCo | 新NISA |
|---|---|---|
| 拠出時 | 全額所得控除(節税効果◎) | 控除なし |
| 運用時 | 運用益非課税 | 運用益非課税 |
| 受取時 | 退職所得控除・年金控除あり | 非課税で自由に引き出し可能 |
| 流動性 | 60歳まで引き出し不可 | いつでも売却・換金可能 |
| メリットが大きい人 | 所得税・住民税を多く払っている人 | 投資の自由度を重視する人 |
✅ 結論
- 節税効果を最大化したいなら「iDeCo」一択。
└ 特に年収400万円以上の人は効果が大きいです。 - 流動性(いつでも使えるお金)を重視するなら「新NISA」
└ 教育資金や住宅資金など柔軟に使いたい場合はこちらが選択肢になり得ます。
🧩 NISAが有利になるケースもある
ここまでの試算では、所得税・住民税の控除が効くためiDeCoが常に有利という結果になりました。
しかし、すべての人にiDeCoが最適とは限りません。
NISAの方が有利になるケースも、いくつか存在します。
(今回は省力していますが、iDeCoは商品が限られているので、選択肢の広さは当然ながら圧倒的にNISA有利です。〉
① 非課税所得(主婦・学生・低所得者)の場合
iDeCoの最大のメリットは「所得控除」。
しかし、そもそも課税所得がない(または少ない)人は控除の恩恵を受けられません。
一方、新NISAは誰でも非課税で運用できるため、扶養内パートや専業主婦・学生などではNISAのほうが断然有利です。
② 60歳前にお金を使いたい場合
iDeCoは60歳まで引き出し不可。
教育資金や住宅購入など、途中で資金を使いたい人には不向きです。
新NISAならいつでも非課税で売却・再投資ができるため、
資金の流動性を重視する人にはNISAが向いています。
③ 転職・自営業化などで掛金変更が面倒な場合
iDeCoは加入資格や拠出限度額が職業によって異なり、転職・独立時に「手続き」や「拠出停止期間」が発生することもあります。
NISAは職業を問わずシンプルに続けられる点が大きな強みです。
最後に
FIREや老後資産づくりを考えるなら、「新NISA+iDeCoの併用」が最も効率的です。
新NISAはいつでも使える自由資産、iDeCoは60歳まで育てる将来資産に。
目的を分けて賢く活用していきましょう。
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