FIREや早期リタイアを目指す人にとって、4%ルールは避けて通れない考え方です。
一方で、円安とインフレが定着しつつある2026年の日本において、4%ルールをそのまま信じて大丈夫なのか?と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、4%ルールの原点を押さえつつ、円安・インフレ・日本特有の制度を踏まえたうえで、2026年の日本でどう考えるべきかを整理します。

4%ルールの基礎知識をあらためて整理する
4%ルールとは何か
4%ルールは、1994年に米国のファイナンシャルプランナー、ウィリアム・ベンゲン氏が提唱した考え方です。
その後、1998年に発表されたトリニティ・スタディによって広く知られるようになりました。
研究の内容を簡潔にまとめると、以下のようになります。
- 株式と債券を分散したポートフォリオ(例:株50%・債券50%)
- 初年度に資産の4%を引き出す
- 翌年以降はインフレ率分を上乗せして引き出す
この条件で運用した場合、30年間資産が尽きない確率が約95%という結果が示されました。
この分かりやすさと安心感が、多くのFIRE志向の投資家に支持されてきた理由です。
日本にそのまま当てはめられない理由
一方で、4%ルールは米国の長期データを前提にしています。
日本では、以下の点が大きく異なります。
- 株式の長期期待リターンが米国ほど高くなかった歴史
- デフレが長期化し、債券中心の運用が一般的だった
- 近年は海外資産比率が高まり、為替の影響を強く受ける
特に2026年現在は、日本独自の低インフレ環境ではなく、円安とインフレが同時進行する局面に入っています。
ここを無視して4%ルールを語るのは、やや危険だと言えるでしょう。
2026年の日本経済:円安とインフレという現実
円安が資産に与える影響
2026年の為替相場は、150円前後を中心に推移するとの見方が多く、状況次第では160円を超える可能性も指摘されています。
円安は、日本の投資家にとって次のような二面性を持ちます。
- 米国株・海外ETFの円換算評価額は増えやすい
- 一方で、円高に戻った場合の目減りリスクが大きい
つまり、資産額は増えているように見えるが、為替前提が崩れると一気に不安定になるという状態であり、4%ルールの安定した引き出しを考えるうえで、無視できない要素です。
インフレが引き出し率に与える影響
日本銀行の見通しでは、2026年度のコアCPIはおおむね1.6〜2.0%程度とされています。
数字だけを見ると穏やかに見えますが、実感としては食料品・エネルギー価格の上昇が家計を直撃しているように感じます。
4%ルールでは、毎年インフレ率分を引き出し額に上乗せするので、インフレが続くほど、資産から出ていく金額は雪だるま式に増える構造です。この点が、インフレ時代における最大の弱点だと言えるでしょう。
4%ルールは2026年の日本で通用するのか?
最大の課題は「為替×インフレ」の組み合わせ
日本人投資家の中には、米国株やグローバルETFを中心に資産形成している人もいます。私もまさにそうで、為替によりますがポートフォリオの60~70%弱が米国および全世界株です。そのため、4%ルールを適用する際には、ドル建て資産を円で引き出すという構図になります。
- 円安時:引き出しは楽に見える
- 円高時:同じ生活水準を保つために多く売却が必要
さらにインフレが重なると、為替が戻った年に、インフレ調整後の高い引き出し額を維持できないという事態が起こり得ます。
最新の研究(過去55年程度のデータを使った歴史シミュレーション検証)では、為替変動を考慮すると、成功率が米国前提より10〜15%程度低下する可能性も示唆されています。
簡易シミュレーションで見る現実
以下は、資産1億円を前提にした簡易的な比較です(仮定:実質リターン年7%。オルカンの30年平均リターン7.5%より控え目に設定)。
| シナリオ | 初年度引き出し額 | インフレ率 | 為替前提 | 30年後成功率 |
|---|---|---|---|---|
| 標準ケース | 400万円 | 2.0% | 150円安定 | 95% |
| 円安進行 | 400万円 | 2.5% | 160円超 | 85% |
| インフレ高止まり | 400万円 | 3.0% | 145円 | 80% |
| 調整型ルール | 470万円 | 2.0% | 150円 | 92% |
この表を見て、まず押さえておきたいのは4%ルールが完全に破綻するわけではないという点です。
標準ケースでは、30年後の成功率は95%と、従来のトリニティ・スタディとほぼ同水準を維持しています。
つまり、円安・インフレ時代であっても、条件が整えば4%ルールは依然として有効だと言えます。
しかし、注目すべきは次の2つのケースです。
円安進行シナリオが示す「見えにくいリスク」
円安進行シナリオでは、為替が160円を超え、インフレ率も2.5%に上昇しています。
この場合、成功率は85%まで低下しています。
一見すると、円安=海外資産が増えるので有利と感じるかもしれません。実際、円安局面では円換算の資産額は増えやすく、引き出しも楽に見えます。
しかし問題は、その前提が崩れた瞬間です。
円安が一服し、為替が円高方向に修正された場合でも、生活費はインフレ調整後の高い水準で固定されます。
結果として、為替の追い風がなくなった状態で、高い引き出し額を続けることになり、資産寿命を縮めてしまうことになります。
このシナリオは、2022年以降に海外資産比率を高めた日本人投資家にとって、決して他人事ではありません。
インフレ高止まりが4%ルールを削っていく仕組み
さらに厳しいのが、インフレ高止まりのケースです。為替は比較的安定しているにもかかわらず、成功率は80%まで低下しています。
ここで重要なのは、4%ルールの構造です。4%ルールは毎年の引き出し額をインフレ率で自動的に増やす仕組みを持っています。
インフレが一時的であれば問題になりませんが、インフレが数年続くと、引き出し額は複利的に増加します。
一方で、投資リターンは必ずしもインフレに追いつくとは限りません。
引き出し額は確実に増えるが、資産成長は不確実という非対称性こそが、インフレ時代における4%ルールの弱点であると言えます。
調整型ルールが示す「現実的な落としどころ」
最後の調整型ルール(後述)に注目すると、初年度の引き出し額は470万円と増えているにもかかわらず、成功率は92%と高い水準を保っています。
ここで重要なのは、たくさん引き出しているのに安全性が高い点ではありません。
実際には、以下のような前提(調整)が含まれています。
- 市場環境が悪い年は引き出しを抑える
- インフレ調整を機械的に行わない
- 為替や資産残高を見ながら柔軟に調整する
つまり、固定ルールを守ることよりも、資産状況に応じて判断することが、結果として資産寿命を延ばしているのです。
4%という数字を信じるかどうかではなく、自分の資産と支出を毎年見直せるかどうかが、FIREの成否を分けるという示唆でもあります。
この表から導ける結論
このシミュレーション表が伝えているのは、4%ルールは万能ではないが、調整可能な考え方としては今も有効という事実です。
円安やインフレは、4%ルールを壊す要因ではありますが、同時に柔軟な引き出し戦略を取り入れる必然性を教えてくれています。
2026年の日本において重要なのは、4%を守ることではなく、資産が尽きない設計を続けることです。
では、資産が尽きない調整型の柔軟な設計について詳しく見ていきましょう。
円安・インフレ時代の「新しい4%ルール」
固定ルールから柔軟な設計へ
2026年の日本で重要なのは、4%を守ることではありません。重要なのは、資産寿命を延ばす設計です。
具体的には、以下のような考え方で調整するのが現実的な落としどころとなります。
- 公的年金をベース収入として組み込む
- 市場が悪い年は引き出し額を抑える(ガードレール戦略)
- 為替ヘッジや円建て資産を一定割合持つ
これにより、実質的な引き出し率を3.5%前後に抑えることも現実的になります。
日本人にとっての安心材料
日本には、公的年金という終身収入や、新NISAによる非課税運用、iDeCoなどの税制優遇制度といった米国にはない強力な強みもあります。
これらを4%ルールと組み合わせて考えることで、単純な米国モデルよりも安定した設計が可能です。
実践するための現実的なアクション
まずは、自身のポートフォリオを円安前提で強くなりすぎていないか確認することが重要です。
為替ヘッジ比率を30〜50%程度に抑え、国内資産やREITを組み込むだけでも、引き出しの安定性は大きく変わります。
また、インフレを前提にした個人シミュレーションを行い、毎年必ず同額を引き出すという発想から一度離れてみることも有効です。
為替ヘッジについてはこちらの記事をご覧ください。
結論:4%ルールは「通用するが、そのままでは危うい」
4%ルールは、2026年の日本でも考え方としては十分に有効です。
ただし、円安・インフレという現実を無視して米国の成功例をなぞるだけでは、リスクが大きくなります。
固定ルールではなく、柔軟に調整する設計へ。それが、これからの時代における4%ルールの新常識です。
夢の早期リタイア、FIREには、よくある落とし穴も潜んでいます。
平凡な地方サラリーマンでもFIREは実現可能です。時間を味方にして、淡々と行動を継続しましょう。


