電源開発株式会社(J-POWER、9513)は、日本のエネルギーインフラを支える企業として、長年にわたり安定した収益と堅実な株主還元を続けています。
株価は地味で話題になりにくい一方、割安なバリュエーション、着実な増配、業績の改善傾向から、長期投資家やFIREを目指す層に高い親和性があります。
この記事では、J-POWERの事業内容・決算内容・配当推移・財務指標・投資魅力を深掘りし、長期投資に適した理由を詳しく解説します。

事業内容
J-POWERは1952年設立の電源開発の専門企業。日本のエネルギーインフラを裏側で支える存在で、主な事業は 「発電」「送変電」「海外事業」 の3本柱です。
発電事業(火力+再エネの二本立て)
火力発電を基盤に、風力・太陽光・水力への投資を拡大中。特に風力は国内最大級の発電所を複数運営し、脱炭素トレンドにしっかり対応しています。
- 再エネ比率:中期で30%以上、2030年に40%超を目標
ESG投資の観点からも評価されやすい事業構造です。
送変電事業(安定収益の柱)
電力会社への託送業務を担うインフラ事業。派手さはありませんが、安定したキャッシュフローを生み、財務の安定に貢献しています。
海外事業(為替の恩恵が大きい)
米国・タイ・オーストラリアなどで発電事業を展開。直近では米国火力発電事業の持分譲渡益が利益に寄与し、全体業績を押し上げています。
海外展開を持つ電力会社は限られており、差別化要因です。
■ 最新決算(2026年3月期 中間)のハイライト
売上は減少しましたが、利益が大きく伸びたポジティブな内容でした。
● 中間決算まとめ
売上高:5,714億円(−10.8%)
経常利益:964億円(+35.6%)
純利益:630億円(+30.5%)
売上が落ち込んだ主因は、タイでの販売電力量減少、松島火力の休廃止、容量市場価格の下落によるものです。
しかし利益面では、米国火力発電事業の持分譲渡益、為替差損→差益への転換が大きく寄与しました。
「売上減でも利益は増」という構造は、コストコントロールや資産売却戦略がうまく機能している証拠です。
■ 財務の改善
総資産:3兆6,028億円(−1.8%)
負債:2兆1,394億円(−3.0%)
純資産:1兆4,634億円(横ばい)
自己資本比率:36.4% → 37.4%
有利子負債:1兆8,369億円(−2.2%)
財務指標は全体的に安定化しています。そんな中でで自己資本比率の着実な改善は大きな評価点です。
■ キャッシュフロー
営業CF:505億円 投資CF:−562億円 財務CF:−454億円 現金残高:3,132億円
現金水準も十分で、財務の安定性が見て取れます。
■ 過去12四半期の傾向
売上高:前年比で緩やかに増加
純利益率:改善
EPS:増加基調
自己資本比率:上昇
FCF:改善局面あり
外部環境に左右されやすい業界の中で、内部改善が進んでいる印象を持ちますね。
■ 配当:安定かつ増配基調
2026年3月期も 年間100円(中間50円・期末50円)を予定。
配当推移
| 年度 | 配当金 | 増減 | コメント |
|---|---|---|---|
| 2020 | 75円 | – | コロナ下でも維持 |
| 2021 | 75円 | 0 | 安定 |
| 2022 | 75円 | 0 | 海外事業寄与 |
| 2023 | 90円 | +15 | 増配開始 |
| 2024 | 100円 | +10 | 再エネ投資の成果 |
| 2025 | 100円 | 0 | 安定 |
| 2026 | 100円 | 0 | 予想 |
2023年以降に増配ペースが上がり、長期投資で“配当の階段”を作りやすい銘柄と言えます。
利回りも 3.4% と実用的。NISA口座との相性も良い銘柄です。
財務指標から見るJ-POWERの強み
J-POWERの現在の株価指標(株価:2,940円)は非常に魅力的です。
割安指標
PER:6.02倍 PBR:0.38倍 配当利回り:3.4%
PBR0.38倍は明確な割安圏で、保有資産の価値が株価に反映されていない状態。
電力設備という巨大な固定資産を持つ企業でこの水準は異例です。
安定性を示す指標
自己資本比率:36.4%(直近で37.4%へ改善) ROE:7.25% 有利子負債:縮小傾向
営業利益率・純利益率は改善し、EPSの増加も確認でき、フリーキャッシュフローの改善も、将来の増配余力につながります。
■ J-POWERを買いたくなる4つの理由
① 明確な割安株
PBR0.38倍は資産価値に対して放置されすぎの水準。
② 安定した収益基盤
インフラ収益(送変電)が底支えし、海外も収益源になっています。
③ 再エネ拡大で成長余地
2030年に再エネ比率40%超という高い目標。風力・水力は、将来的に安定利益を生みやすい事業。脱炭素の流れにもマッチ。
④ 配当が安定・増配基調
長期の配当成長が期待しやすく減配リスクが少ない。
■ 結論:地味だけど強い「長期インフラ株」
J-POWERは、
安定したインフラ収益
割安な株価水準
着実な増配
業績の改善傾向
再エネによる成長余地
という複合的な強みを持つ、長期投資向けの堅実銘柄です。
大きく化けるタイプではありませんが、ポートフォリオの土台として強く機能する株だと言えるでしょう。