たばこ株の代表格であるJT(日本たばこ産業、2914)。
国内外で事業を展開し、高い配当利回りで知られる銘柄で、私も随分と前からホールドを継続しています。
株価は堅調に推移し、2025年現在も5,500円台を維持。
それでも、「JTはもう成長しない」「為替頼み」といった声も少なくありません。
しかし、直近の決算や財務データを見れば、JTが依然として魅力的な高配当・安定成長企業であることがわかります。
本記事では、なぜ今後もJTを保有し続けるのか、その理由を業績面・財務面・株主還元の3つの観点から整理していきます。

① 業績:たばこ事業の再成長が明確に
2025年12月期第3四半期の決算では、JTの業績は明らかに回復傾向を示しました。
たばこ事業が牽引し、売上・利益ともに大幅な増加となっています。
| 指標 | 前年同期比 | 金額 |
|---|---|---|
| 売上収益 | +13.2% | 2兆6,340億円 |
| 営業利益 | +20.8% | 7,629億円 |
| 自社たばこ製品売上 | +14.4% | 2兆4,285億円 |
| 調整後営業利益(為替一定) | +27.2% | – |
たばこ需要の減少が続く中でも、JTは海外市場の値上げと新製品投入で業績を拡大。
加熱式たばこ「Ploom」シリーズが欧州やアジアでシェアを伸ばし、数量ベースでも前年比+2割の成長を見せています。
また、2025年度通期では営業利益8,450億円(前年比+168.9%)を見込み、上方修正。
「成熟産業」と言われながらも、たばこ事業は依然としてJTの強固な収益源であることが確認できます。

株価は長期で上下を繰り替えしながらも上昇基調です。
② 財務体質:安定性と回復基調が鮮明に
JTの財務面も、堅実な改善が見られます。
自己資本比率:45%(前年より上昇)
親会社所有者帰属持分比率:50.5%
有利子負債の増加は小幅
EPS(1株利益)も前年同期比で回復
一時的にカナダ訴訟による和解金支払いがありましたが、その影響は限定的。
資本合計は前年度比8.3%増の4兆1,688億円へと拡大しています。
営業キャッシュフローは前年より減少しましたが、これは一過性の要因によるもので、本業の収益力はむしろ強化されています。
フリーキャッシュフローも前年より改善し、財務の安定性は維持されています。
③ 成長性:海外市場と新分野への着実な拡大
JTの強みは、国内市場に依存しないビジネスモデルにあります。
売上の約8割を海外事業が占め、為替変動を含めた国際展開が業績を押し上げる構造となっています。
加熱式たばこ事業では、欧州・アジアを中心にブランド力が拡大中。
「Ploom X」などの新製品投入が進み、他社に比べ遅れていた加熱式分野でも確実に追い上げを見せています。
また、冷凍食品や調味料などの加工食品事業も、堅実なキャッシュフローを生む補完的事業として存在感を増しています。
たばこ規制が強まる世界情勢の中で、JTは「たばこ×食品」モデルでリスク分散を進めている点が他社にはない特徴です。
④ 配当:高水準の株主還元と増配継続
JTといえば高配当株の代表格です。
近年の配当推移を見ると、その姿勢がいかに一貫しているかがわかります。
| 年度 | 1株配当金(円) |
|---|---|
| 2021年 | 140円 |
| 2022年 | 188円 |
| 2023年 | 194円 |
| 2024年 | 194円 |
| 2025年(予想) | 234円 |
2025年は前期比+40円の増配。
これは、営業利益の上方修正とともに発表され、配当性向も高水準を維持しています。
株価5,548円時点での配当利回りは約4.22%。
国内高配当銘柄の中でも、安定性と持続性の両方を備えています。
加えて、JTは配当方針として「中長期的に安定かつ持続的な増配を目指す」と明言しており、利益成長とともに株主還元を強化していく姿勢が明確です。
⑤ 指標面:やや割高感も、“高品質プレミアム株”
| 指標 | 数値 | コメント |
|---|---|---|
| 株価 | 5,548円(2025年11月時点) | – |
| PER | 17.53倍 | 割高ではあるが成長見込み反映 |
| PBR | 2.38倍 | 利益率改善を織り込む水準 |
| ROE | 4.72% | 今後の改善余地あり |
| 自己資本比率 | 約45% | 安定した財務構造 |
| 配当利回り | 約4.22% | 国内有数の高配当水準 |
直近の株価上昇でPER・PBRはやや高めですが、これは「安定したキャッシュフロー」「増配期待」を市場が織り込んでいる結果といえます。
ROE水準は依然として低めながら、純利益率の改善と海外事業の成長が続けば、今後の上昇余地は十分にあります。
⑥ JTをこれからも保有し続ける理由(まとめ)
最後に、私がJTをこれからも保有し続ける理由を整理します。
- 海外たばこ事業の成長が続いている
→ 値上げ・ブランド力・加熱式たばこで業績拡大 - 収益構造が安定し、財務健全性も高い
→ 自己資本比率45%・ROE改善中 - 増配傾向と高配当利回り
→ 2025年も40円増配予定 - 為替や国際市場での強み
→ 為替一定ベースでも2桁成長 - 非たばこ事業による分散効果
→ 食品・調味料分野で安定収益を確保
JTは、急成長するグロース株ではありません。
しかし、安定したキャッシュフローを長期にわたって株主へ還元できる企業としては、日本市場でも稀有な存在です。
おわりに
JTは「成熟産業の代表」と言われながらも、確実に利益を積み上げ、着実に株主へ還元しています。
この安定と成長の両立は、FIREや長期投資を志す人にとって最も重要な条件のひとつです。
一時のトレンドに左右されず、長期的に安心して保有できる銘柄。
それが、いまもなおJTをポートフォリオの中核に据えたい理由です。
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