資産1億円を目指すという目標は、投資界隈では一つの象徴のように語られます。確かに分かりやすく、達成感もあります。私自身も実際にこの水準に到達したときには、これまでの積み重ねが形になったような感慨深さを覚えました。億り人という言葉に、どこか憧れを抱いていたのも事実です。しかし本当に大切なのは、その資産がどれだけの手取り収入を生み出すかではないでしょうか。
本記事では、資産額よりも手取り配当額に注目すべき理由を、税金・生活設計・投資戦略の観点から考えていきます。

資産額が多くても、生活は楽にならない
資産1億円=自由、とは限らない
資産1億円と聞くと、もう働かなくていいじゃんと感じる人も少なくありません。しかし実際には、どのように運用しているかによって、生活の自由度は大きく変わります。
例えば、同じ1億円を保有していても、運用方法によって毎年得られる手取り収入には次のような違いが生じます。
| 運用方法 | 想定利回り | 年間配当・収益 | 税引後手取り(概算) |
|---|---|---|---|
| 成長株中心(無配) | 5% | 0円 | 0円 |
| 高配当株(利回り4%) | 4% | 400万円 | 約320万円 |
| 債券・低リスク資産 | 2% | 200万円 | 約160万円 |
成長株中心で配当を出さない運用をしている場合は、資産評価額は増えても、生活費として使えるお金はほとんど生まれません。一方、高配当株や利息収入を重視した運用であれば、年間数百万円の現金収入を得ることも可能です。
つまり、資産1億円を持っているかどうかよりも重要なのは、その資産が毎年いくらの現金収入を生み出しているかという点です。資産額だけを目標にしていると、帳簿上は豊かになっているのに、働き方や生活水準は何も変わらない、という状態に陥りやすくなります。特にFIREを目指す場合は、このズレは無視することは当然できません。
なぜ「手取り配当」が重要なのか
生活費と直結する指標だから
FIREやセミリタイアを考える場合、重要なのはいくら持っているかではなく、毎年いくら使えるかです。
たとえば、年間生活費が240万円の人にとっては、
- 手取り配当200万円 → 不足
- 手取り配当300万円 → ほぼ達成
- 手取り配当400万円 → 余裕あり
というように、生活の安心度は資産額よりも配当額で決まります。
資産1億円という数字は見た目のゴールですが、手取り配当〇万円という年間生活費と照らし合わせた具体的な数字こそが、真の(暮らしの)ゴールだと私は思っています。ちなみに私が目指すのは、自分の家族の年間生活費に余裕を持たせ、税引き後600万円という数字です。今現在430万円ですので、達成度は、約72%程度まで来ていますが…まだまだ時間はかかりそうです。
税金を考えると、なおさら差が出る
日本の配当課税と新NISAの影響
日本の配当金には原則として約20.315%の税金がかかります(特定口座・一般口座)。額面400万円の配当でも、手取りは約320万円です。
一方で、新NISA制度(2024年開始)では、成長投資枠・つみたて投資枠ともに非課税、非課税期間は無期限という仕組みになりました。
この結果、
| 年間配当(額面) | 課税口座の手取り | NISA口座の手取り |
|---|---|---|
| 200万円 | 約160万円 | 200万円 |
| 300万円 | 約240万円 | 300万円 |
| 400万円 | 約320万円 | 400万円 |
となり、同じ資産・同じ配当でも使える金額には大きな差が出ます。資産1億円を持つよりも非課税で手取り配当〇万円を得るほうが、生活に与えるインパクトははるかに大きいです。
投資のゴールを数字から機能へ
資産額目標の落とし穴
まずは1億円という目標は、分かりやすい反面、次のような問題があります。
- 生活費と結びついていない
- 取り崩し前提になりやすい
- 相場次第で不安定になる
特に、資産を売却して生活費を賄う場合、相場下落時には精神的負担が大きくなります。
手取り配当目標のメリット
一方で、年間手取り配当〇万円という目標には、次の特徴があります。
- 生活水準と直結する
- 相場変動に対する耐性が高い
- 目標が現実的で管理しやすい
例えば、月20万円ほしいと考えれば、目標は年間手取り240万円と具体化できます。
そこから逆算すると、税引前で約300万円必要だな。つまり利回り4%なら元本約7,500万円必要だ。でもNISA活用なら必要元本はさらに下がるから…というように、戦略を立てやすくなります。
資産1億円よりも現実的な目標設定
段階的に考えるという視点
多くの人にとって、いきなり1億円は遠い目標です。しかし、配当ベースで考えると、段階的な成長が見えてモチベーションも上がります。
年間手取り配当50万円:家計の補助
年間手取り配当150万円:生活費の一部をカバー
年間手取り配当300万円:セミリタイア水準
年間手取り配当400万円以上:実質FIRE圏
このように、資産額よりも自由度で進捗を測れるのが、配当ベースの目標設定の素晴らしさです。
まとめ:本当に大事なのは使えるお金
資産1億円という目標は、投資のモチベーションとして魅力的です。
しかし、それ自体が人生を豊かにするわけではありません。
重要なのは、その資産がどれだけの手取り収入を安定的に生み出すかという点です。
資産1億円を持っている人よりも、自身の生活費に合った手取り配当金額を受け取っている人のほうが、実際には自由度が高いケースも少なくありません。
これから資産形成を考えるなら、目標を資産額だけに置くのではなく、手取り配当額という機能的なゴールを設定することが、より現実的で、納得感のある投資戦略につながるはずです。
資産はいくらあるかより、それがどんな暮らしを可能にするか。この視点を持つことが、長期投資を続ける上での大きな支えになるのだと思います。
