近年、日本経済は長らく続いたデフレーションから脱却し、インフレの兆しが色濃く現れています。
2025年現在、消費者物価指数の上昇率は3%前後で推移しており、食料品やエネルギー価格の高騰が家計を圧迫しています。
このような環境で、投資家として資産を守り、増やすためには、単に株価の上昇を追うだけでは不十分です。
むしろ、安定したキャッシュフローを生み出しながら、長期的に価値を蓄積できる選択肢が求められます。
そこで注目したいのが、高配当株です。
高配当株とは、株価に対して相対的に高い配当利回りを提供する銘柄を指します。
たとえば、日経平均高配当株50指数の平均利回りは約4%と、一般的な市場平均の2倍近くに上ります。
これらの株は、成熟した優良企業が多く、配当金を原動力にインフレ下での資産防衛を図れます。
本記事では、高配当株を買うべき理由を5つ挙げ、特に新NISA制度との親和性を交えながら解説します。

高配当株を買うべき理由①:NISAで長期運用に最適
2024年から始まった新NISA制度は、投資家にとって大きな追い風です。
非課税枠が拡大し、年間360万円・生涯1800万円までの投資が非課税で運用できるようになりました。
配当金にも課税されないため、高配当株との相性は抜群です。
例えば、配当利回り4%の株をNISA枠で保有すれば、税引き後の手取りをそのまま受け取ることができます。
項目 | 課税口座 | NISA口座 |
---|---|---|
配当利回り4%の株 | 税引き後 約3.2% | 4.0%(非課税) |
100万円投資時の年間配当 | 約32,000円 | 40,000円 |
長期で持てば持つほど、非課税のメリットが複利的に効いてきます。
「NISA × 高配当株」は、まさに長期の資産形成における王道戦略です。
高配当株を買うべき理由②:値下がりにくい安定感
高配当株は一般的に、株価が大きく下がりにくい特徴があります。
その理由は、投資家の「下値で買いたい」という需要が常に存在するためです。
株式市場は常に変動を伴いますが、高配当株は値下がり耐性が高いのが特徴。
これは、配当を支払う企業の多くが、財務基盤の堅固な成熟企業であるためです。
実際、2025年のデータを見ると「日経平均高配当株50指数」は、市場全体の下落局面でも過去最高値を更新しており、ボラティリティ(変動率)が低い傾向を示しています。
なぜ値下がりにくいのか。
それは、投資家が配当利回りを重視し、株価が下落しても「利回りが割安になる」と判断して買いに回るからです。
たとえば、株価が10%下落した場合、利回り4%の株は一時的に4.4%以上に上昇し、結果的に「お得な買い場」として機能します。
このメカニズムは、インフレ下の金利上昇局面でも有効です。
金利が上昇すると、将来の成長期待に依存する成長株は圧迫されやすくなりますが、高配当株は「代替利回り」として投資家に選好されやすく、株価の下支え要因となります。
私自身の経験でも、2024年の米金利急騰期に保有していた高配当株ポートフォリオは、市場全体が約15%下落した中で、わずか5%の変動にとどまりました。
このような安定性は、心理的な負担を軽減し、長期保有を続ける大きな支えになります。
資産形成の観点で言えば、値動きに一喜一憂せず、配当を軸に据えた投資を行うことで、持続可能で安定した投資習慣を築くことができるのです。
高配当株を買うべき理由③:インフレ対策になる
インフレ(物価上昇)が続く中で、現金の価値は相対的に下がります。
実際、インフレは預貯金の価値を蝕む最大の敵です。
2025年現在、日本銀行の政策金利はおよそ0.25%程度にとどまる一方で、物価上昇率は3%台を維持しています。
つまり、現金をそのまま持っているだけで、実質的には資産が目減りしているのです。
一方で、高配当株はインフレ局面でこそ強さを発揮します。
企業は物価上昇に合わせて販売価格を引き上げ、利益を確保することで、配当を維持または増配できる可能性が高いからです。
その結果、投資家はインフレに連動した「実質的な購買力の維持」を実現できます。
具体的に、優良な高配当株の多くは、売上高の半分以上を生活必需品(食品、エネルギー、金融サービス)から得ています。
こうした企業は価格転嫁力が高く、コスト上昇を消費者価格に反映しやすいという特徴があります。
たとえば、JT(日本たばこ産業)では、2025年3月期の業績予想において、たばこ価格の引き上げにより配当維持が確実視されており、
インフレ下でも安定的な収益を確保しています。
また、連続増配銘柄もインフレ耐性の強い選択肢です。
例えば、三菱HCキャピタルは25年連続で増配を実現しており、2025年の平均増配率はおよそ5%と推計されています。
これは、物価上昇率を上回る水準であり、実質的な所得の伸びを生み出しています。
この視点は、単なる利回り追求を超えるものです。
インフレが家計を圧迫する中で、配当金は「実質所得の補完」として機能します。
たとえば、月1万円の配当収入が物価上昇分をカバーすれば、心理的な余裕が生まれ、FIREを目指すモチベーションにもつながります。
最新の調査では、「インフレ対策として高配当株を選ぶ投資家」が前年比30%増となっており、このトレンドは今後も加速すると見られます。
現金や預金だけでは防げないインフレリスクに対し、高配当株は“守りながら増やす”実践的な手段と言えるでしょう。
高配当株を買うべき理由④:再投資で雪だるま式に資産が増える
高配当株の真の魅力は、配当金を再投資することで複利効果が働く点にあります。
再投資によって、配当金が新たな株を生み、その株がまた配当を生むという「好循環」が生まれます。
例えば、配当利回り4%の株に毎年再投資した場合、20年後には単利と比べて約2倍以上の資産差になることもあります。
投資期間 | 単利4%の場合 | 再投資(複利4%) |
---|---|---|
10年 | 約148万円 | 約148万円 |
20年 | 約180万円 | 約220万円 |
30年 | 約220万円 | 約324万円 |
「受け取って終わり」ではなく、「再投資して増やす」ことで、FIREに近づくスピードが加速します。
高配当株を買うべき理由⑤:精神的に安定した投資ができる
高配当株のもう一つの大きな魅力は、心の安定です。
株価が多少下がっても、配当金という「確実なリターン」があるため、精神的に余裕を持って保有し続けられます。
特に長期投資では、相場の上下に一喜一憂せず、「配当金を受け取り続ける自分」にフォーカスできるかが重要です。
結果的に、短期売買よりも良い成果を出す投資家も少なくありません。
最後に、高配当株の心理的メリットについて触れましょう。
毎月・四半期ごとの配当入金は、投資の「実感」を与え、モチベーションの維持に大きく貢献します。
2025年のデータによると、高配当投資家の離脱率は市場平均の半分以下であり、長期保有率は80%を超えると報告されています。
これは、配当金が「成果の見える化」として機能し、投資を続ける力になることを示しています。
また、配当は不労所得の源泉として、FIRE後のキャッシュフロー設計にも欠かせません。
活用法も多様で、現役世代なら配当を旅行費や趣味に充てて生活に彩りを加えることができますし、再投資すれば複利効果を高める手段にもなります。
定年後には、配当が年金の上乗せ的な収入として機能し、生活の安定を支えます。
さらに、NISAの非課税枠を活かせば、税後リターンを最大化できます。
たとえば、利回り4%の株を月3万円ずつ20年間積み立てた場合、非課税で約1,200万円の資産を築くことが可能です。
この「安定的に積み上がる感覚」は、市場のノイズから投資家を解放し、冷静な判断を促します。
インフレや景気の波に揺れる時代にあっても、定期的に入る配当金は“静かな力強さ”を持ち、精神的な安心と実践的なリターンの両面で投資家を支えます。
これこそが、高配当株の真の価値といえるでしょう。
まとめ|高配当株はインフレ時代の“守りと攻め”の両立資産
高配当株を買うべき理由を5つに整理すると、以下の通りです。
- NISAで非課税・長期運用に最適
- 値下がりにくく安定感がある
- インフレ対策になる
- 再投資で資産が増え続ける
- 精神的に落ち着いた投資ができる
これらは単なる特徴の列挙ではなく、インフレ下の日本で資産を「守り、増やす」ための実践的な視点です。
特に、NISAの長期非課税メリットや値下がり耐性、連続増配の成長力、そして心理的な安定という5つの要素は、高配当株投資を“堅実かつ持続可能な戦略”へと導きます。
2025年の市場環境は、依然として金利変動や地政学リスクといった不確実性を抱えています。
しかし、高配当株はこうした波を和らげる「クッション」的存在となり、投資家に安定と安心をもたらす資産クラスとしての地位を確立しています。
投資は一夜にして富を築くものではありません。
日々の忍耐と、正しい選択の積み重ねこそが、長期的な成果を生み出します。
配当金を受け取りながら、ゆっくりと資産を育てていく。
その過程にこそ、FIREや経済的自由を目指す投資家の本質的な価値があるのだと思います。