今週3本連続で記事にしましたが、日本の高配当ETFである1489・2529・1698の分配金が、前年同月と比べて大きく増加しました。
10月分の分配金を前年同期と比べると、1489は約26%増、2529は20%増、1698は約56%増です。年間の分配金も、前年を上回る水準となっています。
こうした数字を見ると、日本の高配当ETFは、これからも増配が続くのではないかと期待したくなります。
一方で、分配金が増えたことと、今から購入して高い利回りを得られることは、同じではありません。実際、株価の上昇によって、これらのETFの分配金利回りは以前より低下しています。
この記事では、1489・2529・1698の分配金の変化を整理し、増配が起こる仕組みや今後の注意点、新しく購入する際に確認したいポイントを考えます。
なお、この記事は増配を理由に購入を勧めるものではありません。過去の分配金実績と現在の利回りを整理し、投資判断の材料を提供することを目的としています。
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1.1489・2529・1698の分配金はどれくらい増えた?
まずは、2025年と2026年の分配金を比較します。
| ETF | 2025年10月 | 2026年10月 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 1489 | 3,900円 | 4,900円 | +25.6% |
| 2529 | 2,000円 | 2,400円 | +20.0% |
| 1698 | 27円 | 42円 | +55.6% |
10月分だけを見ると、1698の増加率が最も高く、1489も約26%の増加となっています。2529も前年同期を上回りましたが、3本すべてを同じ意味で大幅増配と評価するより、それぞれの増加幅を分けて見る方が適切でしょう。
続いて、年間の分配金を確認します。
| ETF | 2025年年間 | 2026年年間 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1489 | 8,900円 | 10,400円 | +16.9% |
| 2529 | 5,100円 | 5,700円 | +11.8% |
| 1698 | 約107円 | 136円 | +27.1% |
年間で比較しても、3本とも前年を上回っています。特に1698は約27%増となりました。一方、2529の年間増加率は約12%であり、10月の増配率だけを見た印象とは少し異なります。〈それでも十分なのですが…〉
また、1489と2529は4月・10月の分配金が比較的大きく、1月・7月は少なくなる傾向があります。そのため、特定の月だけを切り取ると、年間の増配ペースを実際以上に大きく感じる可能性がるので、分配金を評価するときは、前年同月比だけでなく年間の受取額も確認したいところです。
2.同じ日本高配当ETFでも、中身は異なる
今回取り上げる3本は、いずれも日本株を中心としたETFですが、投資対象や指数の考え方には違いがあります。
| ETF | 正式名称・運用会社 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1489 | NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(野村アセットマネジメント) | 日経平均株価の構成銘柄から高配当銘柄を選ぶ |
| 2529 | NEXT FUNDS 野村株主還元70連動型上場投信(野村アセットマネジメント) | 配当だけでなく、自社株買いなどを含む株主還元に着目する |
| 1698 | 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)(アモーヴァ・アセットマネジメント) | 日本株に加え、J-REITも投資対象に含む |
1489は、高配当株への投資を考えるときに分かりやすい選択肢です。ただし、指数の構成によっては金融、商社、自動車、素材などの景気や市況の影響を受けやすい業種の比率が高くなることがあります。
2529は、配当金だけではなく、企業が自社株買いなどを通じて株主に還元する姿勢にも着目するETFです。ただし、自社株買いがそのままETFの分配金になるわけではないという点には注意が必要です。自社株買いは株価や1株あたりの指標などに影響することがありますが、ETFの分配金の主な原資となるのは、保有銘柄から受け取る配当金などです。そのため、株主還元を重視する2529が、必ずしも3本の中で最も高い分配金利回りになるわけではありません。
1698はJ-REITも投資対象に含むため、一般的な日本株の高配当ETFとは異なる値動きや分配金の変化が生じる可能性があります。不動産市場や金利の動向も、確認しておきたいポイントです。
同じ高配当という言葉が付いていても、何を重視する商品なのかを理解しておくことが大切です。
3.なぜ分配金は増えるのか?考えられる3つの要因
ETFの分配金が増える理由は、主に以下の要因が考えられます。
① 組み入れ企業が増配する
最も分かりやすいのが、企業そのものの増配です。企業の業績が伸びたり、株主還元を強化したりすると、1株あたりの配当金が増えることがあります。
近年は、資本効率や株価を意識した経営への関心が高まっており、配当や自社株買いを通じて株主への還元を強化する企業も見られます。こうした動きが広がれば、高配当ETFが受け取る配当金にもプラスに働く可能性があります。
ただし、すべての企業が同じように増配するわけでなく業績が悪化すれば、減配や無配に転じる企業もあり、企業全体の還元姿勢が強まっていることと、個々のETFの分配金が毎年増えることは分けて考える必要があります。
② 指数の構成銘柄が入れ替わる
ETFは、連動を目指す指数のルールに沿って銘柄を組み入れたり、入れ替えたりします。そのため、分配金の変化は、保有企業の増配だけでなく、指数の構成変更によっても起こります。
例えば、組み入れ銘柄が入れ替わり、配当水準の高い企業の比率が上昇すれば、ETFが受け取る配当金が増える可能性があります。反対に、構成変更などによって分配金が減る可能性もあります。
③ 一時的な配当が影響する
企業によっては、通常の配当に加えて特別配当や記念配当を実施することがあります。こうした一時的な配当がETFの受取額を押し上げれば、その年の分配金が大きく増えることもあります。
ただし、一時的な配当は翌年も続くとは限りません。ある年に分配金が大きく増えたとしても、翌年に同じ水準を維持できるとは限らないのです。
ETF全体の分配金から、企業ごとの特別配当の影響を正確に切り分けることは簡単ではありません。増配率だけで判断せず、複数年の推移を見ることが重要です。
4.増配している一方で、現在の分配金利回りは低下している
ここまで分配金の増加を見てきましたが、新しく購入する人にとっては、もう一つ重要な数字があります。
それが、現在の株価に対する分配金利回りです。
2026年10月上旬の価格を基にした概算では、3本の利回りは次の水準です。
| ETF | 株価・価格の目安 | 年間分配金 | 税引前利回り |
|---|---|---|---|
| 1489 | 3,465円 | 104円 | 約3.0% |
| 2529 | 2,360円 | 57円 | 約2.4% |
| 1698 | 4,295円 | 136円 | 約3.2% |
分配金が増えていても、株価がそれ以上に上昇すれば、分配金利回りは低下します。
実際、これらのETFは、以前は4%前後の利回りで見られる場面もありましたが、株価の上昇などによって、現在はおおむね2.4〜3.2%程度の水準になっています。
高配当ETFという商品名からすると、今購入しても高い利回りが得られると思うかもしれませんが、商品名にある「高配当」と、現在の価格で購入した場合の利回りは別のものです。
また、この利回りが、TOPIX全体や個別の高配当株、ほかの高配当ETFと比べて高いとも限りません。比較する際は、同じ時点の価格と分配金を用い、同じ条件で確認する必要があります。
過去5年間の利回り推移を詳しく確認するなら、年間分配金だけでなく、各年の価格も合わせて見る必要があります。分配金が増えてきたからといって、購入時の利回りまで高くなっているとは限らないためです。
5.税引後に受け取れる分配金はいくら?
生活費の一部を配当・分配金で賄いたい人にとって、税金は無視できません。課税口座では、国内上場ETFの分配金に対して、一般に20.315%の税金がかかります。そのため、税引前の利回りが3%でも、手元に残る金額は約2.4%相当になります。
一方、対象商品を新NISAの成長投資枠で保有し、非課税の条件を満たしている場合、分配金に国内課税はかかりません。
| ETF | 税引前利回り | 課税口座の税引後利回り(概算) | 新NISA成長投資枠の利回り(国内非課税の場合) |
|---|---|---|---|
| 1489 | 約3.0% | 約2.4% | 約3.0% |
| 2529 | 約2.4% | 約1.9% | 約2.4% |
| 1698 | 約3.2% | 約2.5% | 約3.2% |
同じ利回り3%のETFでも、課税口座とNISAでは手取りが変わります。なお、NISAの成長投資枠には年間投資枠や生涯の非課税保有限度額があります。ほかの投資先との配分も考えながら活用したいところです。
また、信託報酬も確認しておきたい費用です。今回取り上げた3本は、税込でおおむね年0.3%程度の信託報酬がかかります。決して安いとは言えない水準です。
信託報酬はファンドの資産から日々差し引かれるため、投資家が分配金を受け取るたびに別途支払う仕組みではありません。ただし、運用成果や基準価額などには影響する費用です。分配金利回りだけでなく、保有コストも含めて商品を判断することが大切です。
6.これから購入・買い増しを考えるなら確認したいこと
分配金が増えているからといって、すぐに購入する必要はありません。新しく購入する人と、すでに保有している人では、増配の意味が異なるからです。
保有者にとっては、保有口数が同じでも受取分配金が増えることがメリットになります。一方、新しく購入する人にとっては、今の価格でどれだけの分配金を受け取れるかが重要です。
購入や買い増しを検討するときは、次の点を確認したいと考えています。
高配当指数は、金融、商社、自動車、素材など、景気や市況の影響を受けやすい業種の比率が高くなる場合があります。実際の比率は変化するため、購入を検討する際には各ETFの最新の月次報告書で上位業種や組入銘柄を確認したいところです。
例えば、円高が進んだり、資源価格が下落したり、企業業績が悪化したりすれば、保有企業の株価や配当金に影響が出る可能性があります。1698については、J-REITの分配金や価格に影響する金利・不動産市場の動向も確認が必要です。
また、分配金を再投資する場合にも注意点があります。分配金で同じETFを買い増せば、保有口数が増え、その後の分配金の増加につながる可能性があります。しかし、株価が高いときに再投資すれば、新たに買った分の取得単価も高くなります。
保有口数が増えることと、新しく購入した分の利回りが高いことは同じではありません。
増配のニュースを見て買い急ぐのではなく、今の利回りと資産全体の配分を踏まえて判断することが大切です。
7.増配を期待する気持ちと、投資判断は分けて考える
私自身は、配当金を将来の生活費を支える収入源の一つにしたいと考えています。
そのため、保有するETFや株式から受け取る分配金が増えていくことには、大きな魅力を感じます。追加投資や分配金の再投資によって受取額を積み上げ、将来の生活にゆとりを持たせたいからです。
ただし、これは私自身の資産形成や生活設計に基づく期待であって、今後も増配が続くと判断する根拠ではありません。企業の業績や株主還元の方針、指数の構成変更などによって、分配金は増えることもあれば、横ばいになることも減ることもあります。
だからこそ、増配のニュースだけに注目するのではなく、現在の利回りや税引後の受取額、投資対象の特徴を確認しながら、無理のない範囲で投資を続けたいと考えています。
まとめ:増配はうれしい。ただし、購入時の利回りは別に考える
2026年10月の分配金は、前年同期比で1489が約26%増、2529が20%増、1698が約56%増となりました。年間では、それぞれ約17%、約12%、約27%の増加です。
背景には企業の株主還元強化などが考えられますが、分配金の増加が今後も続くとは限りません。指数の構成変更や一時的な配当、企業業績などによって、分配金は変化します。
また、株価の上昇によって、現在の分配金利回りはおおむね2.4〜3.2%程度まで低下しています。課税口座では税引後の利回りがさらに低くなる一方、NISAの成長投資枠で非課税の条件を満たせば、手取りの差が生じます。
すでに保有している人にとって、増配は受取額が増えるうれしいニュースです。一方、新しく購入する人にとって大切なのは、過去の増配率だけでなく、今の価格でどれだけの分配金を受け取れるかという点です。
「高配当」という名前や、直近の増配率だけで判断するのではなく、税引後の受取額、費用、投資対象、資産全体のバランスまで確認しながら、自分に合った投資判断につなげていきたいですね。



