資産形成

FIREするなら厚生年金は何年加入すべき?20年以上を目安に考えたい理由

FIREを目指して資産形成をしていると、気になるのが将来の公的年金です。

会社員として長く働けば、厚生年金の加入期間が延び、将来受け取れる年金額も増えていきます。

一方で、年金を増やすために働き続ければ、その分だけFIREする時期は遅くなります。

せっかく資産形成を頑張ってきたのに、年金を増やすことばかり考えて自由な時間を先延ばしにするのも、少し違う気がします。

では、FIREを目指す人は厚生年金に何年加入しておくのがよいのでしょうか。

私の考えは、厚生年金20年以上をひとつの目安にしつつ、最終的には資産状況と自分が望む生き方を優先するというものです。

この記事では、厚生年金の加入期間による年金額の違いや、20年以上を目安にする理由、FIRE後の年金との付き合い方について考えていきます。

厚生年金は何年加入すればよいのか?

結論からいうと、FIREを目指す会社員にとって、厚生年金20年以上は検討する価値のある目安だと考えています。

ただし、20年加入すれば誰にとっても最適というわけではありません。

まず、知っておきたいのは次の3点です。

ポイント

  • 老齢年金を受け取るには、原則として公的年金の受給資格期間が10年以上必要
  • 老齢厚生年金は、受給資格を満たしていれば厚生年金の加入期間が1か月以上でも対象になる
  • 厚生年金は加入期間が長く、現役時代の報酬が高いほど、原則として受給額が増える

踏まえると、厚生年金に20年以上加入しなければ年金を受け取れないというわけではありません。

では、なぜ20年以上を目安にするのでしょうか。

私は、将来の年金額、制度上のメリット、そしてFIREする年齢のバランスを考えると、ひとつの節目になると考えています。

厚生年金の加入年数で年金額はどのくらい変わる?

まずは、厚生年金の加入期間によって、将来の年金額がどのくらい変わるのかを見てみましょう。

老後に受け取る公的年金は、大きく分けると次の2つです。

老齢基礎年金

国民年金から支給される年金です。20歳から60歳までの40年間、保険料を納めることで満額に近づきます。

老齢厚生年金

会社員や公務員などが加入する厚生年金から支給される年金です。現役時代の報酬と加入期間などに応じて金額が決まります。

会社員として働いている間は、原則として国民年金と厚生年金の両方に加入しているため、将来は両方の年金を受け取ることになります。

一方、FIREして会社を退職した後は、原則として厚生年金の加入期間がそこで止まります。

その後、国民年金に加入して保険料を納め続けても、厚生年金の加入期間が延びるわけではありません。

この違いを理解しておくことが大切です。

平均年収500万円の場合の年金額を比較

ここでは、厚生年金の加入期間による違いをイメージするため、平均年収500万円で働いたケースを考えます。

次の表は、2003年4月以降の報酬比例部分の計算式を簡略化し、老齢基礎年金を満額受け取れると仮定した概算です。

厚生年金の加入年数老齢厚生年金(年額)基礎年金を含む年額月額換算
15年約41.1万円約125.8万円約10.5万円
20年約54.8万円約139.5万円約11.6万円
25年約68.5万円約153.2万円約12.8万円
30年約82.2万円約166.9万円約13.9万円
40年約109.6万円約194.3万円約16.2万円
※老齢基礎年金は年額84万7,300円として計算した試算例です。2026年度の満額を前提としています。厚生年金は平均年収を標準報酬額の簡易的な代用として計算しており、実際の年金額を保証するものではありません。賞与、標準報酬の記録、加入時期、再評価などによって実額は変わります。税金や社会保険料を差し引く前の金額です。

当然ですが、加入期間が長くなるほど年金額が増えていきます。

例えば、20年加入と30年加入を比較すると、月額で約2.3万円の差があります。たったそれだけしか変わらないの?と月額だけ見ると思うところですが、1年間で見ると約27万円、65歳から90歳までの25年間で単純計算すると、累計では約680万円の差になります。〈この差をどう見るかは見方が分かれるところですが、どちらの見方も理解できます。〉

これは同じ条件で25年間受給したと仮定した単純比較です。物価や制度改正、税金などは考慮していません。

それでも、厚生年金の加入期間が将来の家計に影響することはわかると思います。

では、年金額が増えるのなら、できるだけ長く働いたほうがよいのでしょうか…私は、必ずしもそうは思いません。

厚生年金20年以上を目安にしたい3つの理由

1. FIRE後の生活を支える収入になる

FIREを目指す人にとって、公的年金は老後の生活を支える重要な収入源です。

仮に65歳以降の年金が月12万円だったとします。

生活費が月20万円なら、残りの8万円を配当金や資産の取り崩しなどで補う必要があります。

年金が月10万円なら不足額は10万円ですし、月15万円なら不足額は5万円です。

このように、年金額が増えるほど、老後に資産から補う金額を減らしやすくなります。

特に、相場が大きく下落しているときに資産を売却することは、できれば避けたいところです。

一定の公的年金があれば、投資資産を取り崩す負担を軽減できます。

私自身、配当金を生活の土台にするFIREを目指していますが、公的年金は将来の安心につながる大切な要素だと考えています。

年金だけで生活費のすべてを賄えなくても、毎月一定の収入があることには大きな意味があります。

2. 加給年金など、加入期間20年以上が関係する制度がある

厚生年金の加入期間20年以上は、年金額だけでなく、一部の制度の受給要件にも関係します。

そのひとつが加給年金です。

加給年金は、厚生年金の加入期間などの要件を満たした人が老齢厚生年金を受け取る際、一定の条件に該当する配偶者や子がいる場合に加算される年金です。

例えば、65歳になった時点で、一定の条件を満たす65歳未満の配偶者がいる場合などが該当します。〈ただし、厚生年金に20年以上加入していれば自動的に受け取れるわけではありません。生計維持関係や配偶者の年齢、配偶者自身の年金の状況など、複数の要件があります。〉

また、遺族年金などにも加入期間が関係する場合がありますが、それぞれ別の要件で判断されます。

こうした制度もあるため、20年という節目は単なる数字以上の意味を持つ場合があります。

ただし、加給年金を受け取れるかどうかは家族構成や将来の制度によって変わります。受給を前提にFIRE計画を立てるのではなく、自分の条件で確認しておきたいところです。

3. 40代前半〜中盤なら、自由な時間も十分に確保できる

仮に22歳で就職した場合、厚生年金に20年間加入すると42歳になります。

25年間なら47歳です。30年間加入しようとすると52歳になります。

もちろん、52歳でFIREすることにも十分な価値があります。しかし、FIREを目指す理由が自由な時間を手に入れることなら、年金額を増やすためにリタイアを先延ばしにすることが、本当に自分の望む選択なのかは考えたいところです。

40代前半と50代前半では、退職後に自由に使える時間が大きく異なります。

子どもと過ごす時間、夫婦での旅行、自然の中で過ごす時間、新しい趣味への挑戦。

こうした時間は、後からお金を払って取り戻せるものではありません。

もちろん、年金額が多いに越したことはありません。しかし、年金を増やすことだけを優先して、自由な時間を減らしてしまうのも違うと感じます。

年金を最大化することと、自分の人生を最大限に楽しむことは、必ずしも同じではありません。

このバランスを考えたとき、20年以上というラインは、FIREを目指す人にとって検討する価値があると思います。

加えて、20年以上を目安に退職金額が大きく変わる(増額)する場合も多いようです。

厚生年金は長く加入するほどよい。でも、働き続ければよいわけではない

ここまで20年以上を目安にする理由を説明してきましたが、誤解してほしくないのは、20年を超えたら働く意味がなくなるという話ではないことです。

厚生年金は、加入期間が長くなるほど将来の年金額が増える仕組みです。また、給与を受け取っている期間が長ければ、資産形成を続けられるメリットもあります。

一方で、FIRE後に得られる自由な時間も大切です。

例えば、資産形成が十分に進んでおり、配当金などで生活費を賄える見通しが立っている人と、まだ資産が少なく、老後の生活費に不安がある人では、最適な退職時期は異なります。

同じ20年加入でも、年収や生活費、家族構成、保有資産によって判断は変わります。

私なら、次のように考えます。

ポイント

  • 資産形成が十分でなければ、年金加入期間だけにこだわらず、資産を増やすことを優先する
  • 厚生年金20年以上を確保でき、資産面でもFIREが現実的なら、退職を具体的に検討する
  • 20年を超えて働くことで得られる年金や給与と、失う自由な時間を比較する
  • FIRE後も働くことが苦にならず、社会とのつながりも求めるなら、短時間勤務などで働き続ける選択肢も考える

重要なのは、年金加入期間だけで退職時期を決めないことです。年金は老後の安心を支えるものですが、FIREの目的そのものではありません。

FIRE後は国民年金を60歳まで納める

厚生年金の加入期間とあわせて考えたいのが、FIRE後の国民年金です。

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金への加入義務があります。

会社を退職し、厚生年金に加入しなくなった場合は、原則として国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要です。

配偶者の扶養に入るなど、条件によっては第3号被保険者となる場合もあります。

FIRE後も、原則として60歳までは国民年金の保険料を納めることを基本に考えたいところです。

老齢基礎年金は、保険料の納付状況などに応じて受給額が決まります。未納期間や免除期間があれば、満額より少なくなる場合があります。

厚生年金の加入期間が20年あっても、基礎年金が自動的に満額になるわけではありません。

そのため、FIREを計画するときには、厚生年金の加入期間だけでなく、20歳以降の国民年金の納付記録も確認しておきましょう。

なお、国民年金の保険料は年度によって変わります。実際に退職するときの保険料や加入手続きについては、日本年金機構の最新情報を確認してください。

自分の年金額はどうやって確認する?

ここまで概算を紹介してきましたが、実際にFIREを検討するなら、自分自身の年金見込額を確認することが大切です。

確認方法としては、次の2つがあります。

1. ねんきんネット

日本年金機構が提供するサービスです。これまでの年金記録を確認でき、将来の年金見込額も試算できます。

2. 公的年金シミュレーター

厚生労働省が提供する試算ツールです。働き方や収入などの条件を入力して、将来の年金額を簡易的に試算できます。

公的年金シミュレーターはこちらです。

FIREを考えている人は、現在の年金見込額だけでなく、今後何歳まで働くかによって金額がどう変わるのかも比較しておくとよいでしょう。

例えば、42歳で退職するケースと47歳で退職するケースを試算すれば、5年間働くことで増える年金額の目安を把握できます。

その増加額と、5年間で得られる自由な時間を比較することで、自分に合った選択を考えやすくなります。

まとめ:厚生年金20年以上を目安に、資産と自由な時間のバランスを考えよう

FIREを目指すなら、厚生年金には何年加入しておくべきなのか。

私の考えは、20年以上をひとつの目安にしながら、資産状況と自分が望む生き方を優先するというものです。

厚生年金は長く加入するほど、原則として将来の年金額が増えます。加入期間が20年以上になることで、加給年金などの制度上の要件に関係する場合もあります。

一方で、年金を増やすために働き続ければ、FIRE後の自由な時間は短くなります。

資産形成が十分に進んでいるなら、年金額を最大化することだけにこだわらず、早く自由な生活を始めるという選択肢もあるはずです。

私自身、FIRE後は配当金を生活の土台にし、公的年金を将来の安全マージンとして考えています。

年金だけですべてを賄おうとするのではなく、配当金、公的年金、必要に応じた資産の取り崩しを組み合わせることで、長い老後に備えたいと考えています。

必要な資産額や望ましい退職年齢は人それぞれです。20年以上という数字だけにとらわれず、自分の年金見込額と資産状況を確認しながら、いつまで働くかを考えてみてはいかがでしょうか。

年金を増やすことも大切ですが、自由な時間を手に入れることも、FIREを目指す大きな目的なのですから。

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