資産形成

定年まで働くのは本当に必要か?年金月4.6万円のために20年を差し出す価値を考える

会社員として働いていると、定年まで働くことが当たり前のように感じられます。〈もしかして…日本だからでしょうか…?〉

長く働けば年金が増える。老後の生活を考えれば、できるだけ長く働いておいた方が安心。そう考える人も多いのではないかと思います。

実際、厚生年金は加入期間や給与・賞与に応じて受給額が増える仕組みです。長く働くことには、老後の収入を増やすというメリットがあります。

ただ、私は一度立ち止まって考えてみたいのです。

20年長く働くことで、年金が月4.6万円増える。そのために、20年という時間を差し出す価値は本当にあるのでしょうか。

もちろん、年金が多いに越したことはありません。また、早期退職を実現するには、計画的な資産形成が欠かせません。

それでも、十分な資産があるなら、年金を増やすためだけに定年まで働き続ける必要はないのではないか。

今回は、勤続20年と40年の年金額を比較しながら、働く期間と自由な時間について考えてみます。

勤続20年と40年で年金額を比較する

まずは、厚生年金の加入期間によって、将来受け取れる年金額がどのくらい変わるのかを見てみましょう。

平均年収500万円程度で働いた場合を想定し、老齢基礎年金を満額受給できると仮定した概算です。

厚生年金の加入年数老齢基礎年金を含む年金月額
20年約11.6万円
30年約13.9万円
40年約16.2万円
平均年収500万円程度、老齢基礎年金の満額受給、主に2003年4月以降の厚生年金加入を想定した簡易的な試算です。2026年度の老齢基礎年金の満額を前提としています。実際の受給額は、標準報酬月額・賞与・加入期間・報酬の推移・再評価などによって異なります。税金や社会保険料を差し引く前の金額です。個別の見込額は「ねんきんネット」などで確認してください

。

この表を見ると、厚生年金の加入期間が20年の場合、年金月額は約11.6万円。40年の場合は約16.2万円です。

その差は、月約4.6万円。年間にすると約55万円の違いになります。

年間55万円の差は決して小さくありません。老後の生活を支える収入として、十分に意味のある金額です。

しかし、ここで注目したいのは、その差を生み出すために必要な時間です。20年と40年では、働く期間が20年も違います。

20年間長く働くことで、老後の年金が月約4.6万円増える。

この数字を、皆さんはどう考えるでしょうか。


なお、この比較は、どちらも老齢基礎年金を満額受給できると仮定しています。会社員を辞めた後も、原則として60歳までは国民年金への加入・納付が必要になります。退職後の加入状況や納付状況によっては、基礎年金の受給額も変わるため注意が必要です。

月4.6万円のために、20年間働く価値はあるのか

例えば、40代で会社員を辞める選択肢を考える人と、60歳まで会社員として働き続ける人がいるとします。

後者は20年間長く働くことで、今回の試算では老後の年金を月約4.6万円多く受け取れることになります。

では、その20年間で得られるものと、失うものは何でしょうか。

長く働けば給与を受け取れますし、厚生年金の加入期間も延びます。退職金などの条件によっては、資産形成の面でも有利になるでしょう。

一方で、働いている間は、仕事に時間や体力を使います。

平日の朝に起きて職場へ向かい、仕事をして、帰宅する。休日には疲れを癒やし、また次の週を迎える。

こうした生活が悪いとは思いません。なんせ今現在、私自身が充実感を持って仕事に取り組めているからです。今の私のように仕事にやりがいを感じている人もいれば、職場での人間関係や社会とのつながりを大切にしている人もいるでしょう。

ただ、もし仕事そのものにさして強い魅力を感じておらず、生活費をまかなえるだけの資産があるとしたら、どうでしょうか。

老後の年金を月4.6万円増やすために、さらに20年間働き続ける必要があるのか。

この問いは考える価値があると思っています。〈ここで年金額の差だけを見て、早く辞めた方が得だと結論づけることはできませんが…〉

20年長く働けば、その間の給与収入が得られます。生活費を差し引いて余ったお金を貯蓄や投資に回せば、資産をさらに増やせる可能性があります。

例えば、年収500万円で働き、手取り収入の20〜30%を20年間にわたって貯蓄・投資に回せたとします。運用成果や支出の状況にもよりますが、長い期間をかけて数千万円規模の資産を形成できる可能性もあります。その資産から得られる配当金や、計画的な取り崩しによる収入は、月4.6万円の年金差を上回ることも考えられます。

働き続けることで得られる給与、そこから積み上がる資産、将来の年金、そして働くために使う時間。これらもまとめて考える必要があります。

一方、月4.6万円の年金差は、受給開始後も生涯にわたって続く点が重要です。

仮に65歳から85歳までの20年間受け取れば、単純計算で約1,100万円の差になります。受給期間が長くなれば、その差はさらに広がります。

ただし、これは月額の差が変わらないと仮定した計算です。物価の変動や年金制度の改正などによって、将来の実質的な価値は変わる可能性があります。

こうして考えると、どちらが得かを一律に決めることは難儀です。だからこそ、年金額だけで判断するのではなく、自分が何を大切にしたいのかを考えることが重要なのだと思います。

40代や50代で仕事を辞めることだけが選択肢ではありません。週に数日だけ働く、特定の時期だけ働く、収入が必要な間は仕事を続けるといった方法もあります。定年までフルタイムで働くか、完全に仕事を辞めるか。その二択に絞る必要はありません。

年金を増やすことだけが、老後の安心につながるわけではない

老後の生活を考えるとき、年金額は重要な判断材料です。

毎月の収入が多ければ、その分、生活費をまかないやすくなります。終身で受け取れる公的年金は、長生きしたときの備えとしても大切です。

しかし、老後の安心を年金だけで考える必要はありません。

例えば、現役時代に資産を築いておけば、退職後は配当金や資産の取り崩しなどによって生活費を補うこともできます。

年金が月12万円でも、資産収入が月20万円あれば、合計で月32万円の収入になります。

反対に、年金が月16万円あっても、貯蓄がほとんどなく、生活費が毎月25万円かかるのであれば、別の備えが必要です。

もっとも、資産収入は年金と違って変動する可能性があり、株価の下落や減配、インフレなどにも備えなければなりません。

公的年金も、物価上昇に対して購買力を完全に維持できるとは限りません。マクロ経済スライドなどの仕組みによって、年金額の実質的な伸びが抑えられる場合もあります。

だからこそ、年金だけに頼るのではなく、資産も含めて老後の生活を考えることが大切です。

年金を増やすことだけに注目するのではなく、資産を含めた生活全体で考えるという視点を持つことが、働く期間を考えるうえでも重要だと思います。

ただし、早期退職を考えるなら資産形成が欠かせない

それなら20年働いたら辞めれた方が…と思うかもしれませんが、、誰にでも当てはまる話でもありません。

十分な資産がない状態で仕事を辞めてしまえば、その後の生活費をまかなうことが難しくなる可能性があります。

年金の受給開始までの生活費も必要ですし、退職後の国民年金保険料や健康保険料、住宅の修繕費、子どもの教育費なども考慮しなければなりません。

特に、会社を辞めると健康保険の切り替えが必要になります。国民健康保険に加入する場合、保険料は前年の所得などを基に計算されるため、退職直後は負担が大きくなることもあります。会社の健康保険を任意継続する選択肢もあるため、退職前に比較しておきたいところです。

早期退職を考えるなら、次のような準備が必要です。

ポイント

  • 配当金や資産の取り崩し、副収入などで生活費をまかなえる見通しを立てる
  • 退職後の国民年金保険料や健康保険料を考慮する
  • 住宅費、教育費、介護など、将来発生する大きな支出を見積もる
  • 相場の下落や予想外の出費に備えて、現金などの余裕資金を確保する

特に、資産運用を続けながら生活する場合には、相場が悪い時期でも慌てて資産を売却しなくて済むような備えが重要です。

また、退職後も働くという選択肢があります。フルタイムで働き続けるのではなく、週2〜3日程度の仕事で社会とのつながりを保ちつつ、生活費の一部を補う方法も考えられます。

資産形成が十分に進んでいれば、収入を最大化するために働く必要性は下がっていきます。自分に合った働き方を選びやすくなるのです。

逆に、資産形成が不十分なうちは、給与収入や将来の年金を確保することが優先になるでしょう。

大切なのは、勤続年数だけで退職時期を決めるのではなく、自分の資産状況や生活設計に合わせて考えることですね。

私は年金を増やすためではなく、自由になるために資産を築く

私自身、資産形成を続けている理由は、単純にお金を増やしたいからだけではありません。

将来、働き続けなければ生活できないという状況から抜け出し、自分の時間を自分で決められるようになりたいからです。

仕事を続けるのも、辞めるのも、自分で選べる。

働きたいと思えば働けばいいし、少し休みたいと思えば休んでもいい。家族との時間を増やしたいなら、そちらを優先してもいい。

そうした選択肢を持つために、私は資産を築いています。

配当金などの資産収入が増えていけば、給与収入だけに頼らずに生活できる可能性が高まります。

資産形成には時間がかかります。相場の変動もありますし、計画どおりに進むとは限りません。

それでも、将来の選択肢を増やすために、今できることを積み重ねていく。その考え方は、これからも変わらないと思います。

年金は老後の生活を支える大切な制度です。受給額が多いに越したことはありません。ただ、年金を増やすことが人生の目的ではないはずです。

定年まで働くことが自分に合っているなら、それも一つの選択です。一方で、十分な資産があり、ほかにやりたいことがあるなら、早く仕事を辞めたり、働く日数を減らしたりすることも選択肢になります。

大切なのは、周囲がそうしているから、定年まで働くのが当たり前だから、という理由だけで働き続けるのではなく、自分にとって何が大切なのかを考えることです。

勤続20年と40年では、働く期間が20年も違う。それでも、今回の試算では年金額の差は月約4.6万円です。

この金額を大きいと考えるか、小さいと考えるかは人それぞれでしょう。

私自身は、年金差の大きさ以上に、やはり選択肢を持てるかどうかの方を重視しています。

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